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クリスマス 第51話
翌日から、本当に由羅の帰りは遅くなった。
由羅の帰りが遅くなるのは珍しいことではない。
オレは先に莉玖を寝かせて、由羅が帰ってきたらすぐに食べられるように軽めの晩飯を用意すると、由羅の部屋で莉玖の様子を見つつ制作の準備をしたり、日誌を書いたりしていた。
……はずなのだが、ここ数日はあまりの遅さに結局待ちきれずに寝落ちしてしまっているらしい。
なぜか朝起きると由羅のベッドで寝ている状態が続いている。
いや、起こせよっ!?
「帰宅した時に一応声はかけたぞ?だいたい、私がベッドに運んでも全然起きないくらい爆睡してたのは綾乃だろう?文句を言うな」
たしかに、ベッドに移されたことに全然気がつかなかったオレもどうかと思うけど!!
「ぅ~~……由羅は結局何時に帰って来たんだよ!?」
オレだって、12時くらいまでは起きてたんだぞ!?
「昨夜は……2時ごろだな。しばらくは遅くなると言っただろう?私を待たなくてもいいから、ちゃんとベッドで寝ろ。風邪ひくぞ?」
「だから、オレはお前が帰ってきたら部屋に帰るつもりだったんだよっ!」
「それ昨日も言ってたな」
そう、そして、昨日もオレは帰ってきたら起こせって言ったのに!!
「お前がちゃんと起こさねぇのが悪い!」
「私が出張の時は私のベッドで寝ていたんだろう?今回も似たようなものだ。気にしなくていいからちゃんとベッドで寝ろ」
「ぅ……」
「返事は?」
「……ハイ……」
「よし、それじゃ行って来る。莉玖行ってきます」
由羅はオレが抱っこしている莉玖の頭を撫でると、慌ただしく家を出た。
「……イッテラッシャイ」
***
『ほらぁ、だからベッドで寝なさいって言ったでしょ?』
扉が閉まった途端、莉奈が呆れたようにため息を吐いた。
『だいたい、毎晩兄のベッドで莉玖のことを報告してるじゃない。なんで今になって兄のベッドを使うことに抵抗してるのよ』
そうですねっ!!
莉奈の言うことも由羅の言うこともごもっともだけど……何だか由羅のベッドで勝手に寝るのはちょっと……っていうか、オレはあいつが帰ってきたら部屋に帰るつもりだったから座って仕事してたわけで……あれ?どうせ運んでくれるんなら、オレの部屋に運んでくれれば良かったんじゃねぇの?オレの部屋すぐそこだし……
『まぁ、いいんじゃない?綾乃くんをベッドに連れ込んでる時の兄さん、何だか嬉しそうだったし』
連れ込んっ!?
「はあ!?あいつが!?……あ、ごめん、莉玖!今のは莉玖に言ったんじゃないからな?その、オレのひとり言っていうか……驚かせてごめんな~」
オレが思わず大声で莉奈に返事をしてしまったせいで、莉玖が驚いた顔で固まった。
莉奈ぁ~……だから、地下室以外であんまり話しかけてくんなって……
そんでもって、おまえ時々言葉のチョイスが謎っ!!
連れ込むって何だよ!?
どうせ、オレの部屋まで運ぶのが面倒だから自分のベッドに転がしたってだけだろ?
『ごめ~ん、黙ってま~す』
八つ当たり気味に莉奈を睨むと、莉奈はちょっといたずらっぽく笑って、口にチャックをする仕草をしながら姿を消した。
***
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