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クリスマス 第52話

「なぁ由羅、オレ昨日はちゃんと布団で寝てたよな?」 「……そうだな」 「じゃあ、なんで……オレはまたお前のベッドで寝てるんだ?」  昨日由羅に怒られたので、オレは昨夜はちゃんと予備の客用布団を持って来て、莉玖のベビーベッドの横に敷いて寝ていた。  それなのに、目が覚めるとまた由羅のベッドにいる。 「私が運んだからだな」 「なんで?」 「綾乃が床の上で寝ていたからだ。いくら床暖房をしてあると言っても、床の上に転がっていたら風邪を引く」 「あ~……それはどうも。……じゃなくてっ!だったらオレの布団に戻しとけよ!!」  オレの寝相が悪いせいか!?オレのせいなのか!?  いやいや、わざわざ持ち上げてベッドに転がす必要ねぇだろっ!? 「綾乃、朝から元気なのは良いことだが、今朝は早めに出るから続きはまた今度にしてくれ」  由羅は時計を見ながらそう言うと、起き上がって支度を始めた。 「え、早めって何時?」 「6時」 「は!?……ってもうあと30分しかねぇじゃんか!!早く言えよバカっ!!」 「綾乃、朝飯は職場に向かう途中で適当に食べるからそんなに慌てなくてもいいぞ」  慌ててベッドから出たオレの背中に、由羅がのんびりと声をかけて来る。 「え?あ~じゃあ、コーヒー入れる。お前もさっさと準備しろよ。莉玖~おはよ~!」  オレはもう目を覚ましていた莉玖を抱いて一階におりると、とりあえず莉玖をベビーサークルに入れて遊ばせながら、慌ててコーヒーを入れて、由羅がすぐに食べられるようにおにぎりを握った――…… ***  ――そんなこんなで、あっという間に週末。  土曜日は、予想通り仕事になった。 「綾乃、今日は早めに帰って来るから、夜出掛ける準備をしておいてくれ」 「え?どこに出かけるんだ?杏里さんとこ?オレ別に日曜も用事ないから莉玖みるけど?」 「そうじゃない。だ」 「お出かけ?どこに?」 「それは……あ、時間がない。とにかく、夕方には帰って来るから、帰ってきたら出られるようにしておいてくれ」 「あっ、由羅!晩飯は?」    だから、飯を作る都合があるんだってばよ!  慌てて由羅の後ろを追いかける。 「あ~……食べてからがいいか?」  いや、オレに聞かれても知らねぇよ!? 「私が帰ってくる時間によるか……」  由羅はブツブツ独り言をいいながら靴を履くと、「どちらにしろ、莉玖には食べさせておいてくれ」と言って家を出た。 「わかった。いってらっしゃい」  全然わかんねぇけど!!  杏里さんの家に行く以外に、夜出かける?  そんなの今までなかったのに……どこに行くんだろ?  夜ってことは、そのまま泊まってくるのかな?  一応、お泊りセットも作っておくか。  お出かけ自体は、お出かけセットを常に用意してあるので、すぐに出られる。  だが、お泊りとなれば、話は変わって来る。  粉ミルクを飲んでいた時期と違って、莉玖はもう離乳食をしっかりと食べているので粉ミルクはおやつ代わりに飲む程度だが……  お泊りなら粉ミルクも用意しておいた方がいいかな……  っつーか、どこに泊まりに行くかによるよな~……  誰かの家?あ……もしかして、彼女の家……とか?  モテるって自分で言ってたし、付き合ってる人くらい……いるよな?   『お出かけですって!どこに行くのかしら?』  急に莉奈の弾んだ声がした。姿は見えないが、オレと由羅のやり取りを見ていたらしい。 「さぁ?でも夜だからなぁ……暖かくしてあげないと……」 『あ、この間買ったあの服着せてあげましょうよ!せっかくのお出かけだし!』 「あぁ、そうだな。どこに行くのかわかんねぇけど……」  由羅は、休日はなるべく自分で莉玖をみている。  莉玖の事情が事情なので、普段はなるべく外出は控えている。  その分、由羅が休みの日は二人で公園に行って遊んでいる……らしい。  遊んでいると言っても、たぶん、ベビーカーを押して散歩するくらいだとは思うが……  由羅が休みの日=綾乃の休みの日、なので、二人がどんなことをして過ごしているのかはあまり知らない。    そうか、今までも休みの日には彼女に会ってたのかもしれねぇな……  一方、綾乃は仕事が休みの日は図書館に行って莉玖に読み聞かせをする絵本を選んだり、莉玖を連れていてはなかなか買えない、重いものやかさばるものをまとめて買ったりと、結構忙しい。  うん、彼女も飲みに行く友達もいないけど、オレはオレで結構忙しいんだ!!  今夜泊まりってことは、由羅、明日は休めるのかな?  だったら、明日は年末の大掃除に向けて重曹とかも買っておこうかな~……  オレの頭の中では、すでに明日の休みをどう使うかということでいっぱいになっていた。 ***

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