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クリスマス 第56話
「よし、これでオッケーだな!莉玖、カッコいいぞ~?」
「おー!」
晩飯の後、サッとお風呂に入れて莉玖の身支度を整えた。
莉玖はこれでいいとして……あ、そうだ……
「由羅~?荷物だけど、お出かけセットだけでいいか?それともお泊りセットも持って行く?」
「……何が違うんだ?」
「そりゃ、着替えの量とか、オムツの量とか、あと、ミルクとか?」
「お出かけセットだけでいいんじゃないか?」
だから、いちいちオレに聞くな!!
でも、お出かけセットだけってことは、お泊りしないのか?
それか明日早めに帰って来るのかな?
まぁいいや。
「わかった」
お出かけセットを玄関に置いて、車の中で莉玖が寒くないように、毛布も用意する。
「あ、上着どれにしようかな」
『そうねぇ、じゃあ、これとかどう?』
莉奈が指差したダウンを手に取る。
「中に着込んでるから、上はこれでいいか?」
『いいんじゃないかしら。まぁ、どこに行くかにもよるけど……』
そうなんだよな……ちょこちょこ話を振ってはみるけど、由羅はどこに行くとは言ってくれない。
彼女のところに行くって、言い難いもんなのか?
え、もしかして照れてるとか!?
いや、それはねぇな。由羅なら普通に言うはずだけど……
「準備できたか?」
「おわっ!?急に後ろに立つなよ!うん、出来たぞ!どうよ?」
「お、莉玖、カッコいいな」
由羅が莉玖を高く抱き上げた。
「あい!」
背の高い由羅が“高い高い”をすると、莉玖も嬉しそうだ。
どうせ、オレがしても“低い低い”だしな!?
「それで、綾乃は?」
「は?」
「まさかその恰好で行くつもりか?」
「……え?」
オレは下を向いて自分の恰好を確認した。
急いで莉玖をお風呂に入れたので、エプロンも服もびちゃびちゃだ。
足首や腕周りを捲し上げた状態で、ところどころお湯に濡れて色の変わったスウェットの上下を着ているオレを、由羅が上から下まで眺めて顔をしかめた。
いや、っていうか……
「なんでオレ?」
「莉玖は私がみてるから、綾乃も早く着替えて来い」
「いや、なんで?」
「その恰好じゃ……」
「そうじゃなくて、オレも行くのか?」
「……当たり前だろう!?ちゃんと朝から今夜は出かけるって言っておいたじゃないか」
由羅が、呆れたような顔をする。
「え、いや、そうだけど……」
「ほら、早く着替えて来い!あ、ジャージ以外にしてくれよ?」
「あ、はい……」
由羅に追い立てられて、とりあえず自分の部屋に戻った。
***
え、着替え!?オレも行くってこと!?
待って、どういうことだよ!?
デートに家政夫とか連れて行くもんなの!?
あ、もしかして、デート中、莉玖をみててほしいとか?
いや、それなら莉玖を置いていけばいいと思うのはオレだけ?
由羅が何を考えているのかわからず、混乱しながら服を選ぶ。
と言っても、そんなお出かけ用の洒落た服など持っていない。
仕事が仕事だけに、ほとんどは動きやすくて汚れが目立ちにくいスウェットかジャージだ。
『う~ん、お出かけに使えそうなのは……そうね、これとこれにすれば?』
「あ……うん」
ボーっとしているオレに変わって、莉奈が服を選んでくれた。
紺のジーンズとカーキ色のパーカー。
オレの持っている服の中ではマシな方だ。
その上に黒のダウンジャケットを羽織って、何とか準備完了。
「お待たせシマシタ……」
「早かったな」
由羅は、またオレを上から下まで見ると、軽く眉を寄せた。
「な、なんだよ!?ダメか?オレにしてはマシな服なんだけど……」
「いや……うん、そうかわかった。それじゃ行くか」
何がわかったんだよ!?
文句があるなら言えよ!?
文句言われても……どうしようもないけど……
だって、オレ、お前が着てるみたいなお洒落なジャケットとかパンツとか持ってねぇもん……
一応、就職の時に買ったスーツはあるけど……
「綾乃、先にエンジンかけてくる。お出かけセット持って行くから、戸締りして莉玖を連れて来てくれ」
「あ、はい」
オレは莉玖を抱っこしてオムツを確認し、戸締り確認、火元確認をしてから、由羅を追いかけた。
ぅ゛~~……次の給料が入ったら、もうちょっとマシな服買いに行こうかな……
***
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