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クリスマス 第70話

 昨日は混乱していたので自分が何と答えたのか覚えていない。  とりあえず、疲れたとか何とか誤魔化して部屋に戻ったような気がする。  そもそも、今朝母が連絡してきたのも、昨夜パニクったオレが思わず謎メールを送ってしまったせいだった―― 「あの、由羅……昨日言ってたことって……」 「ん?」 「その……オレのことが……す、好きって……」 「あぁ、言ったな」 「あれは一体どういう意味なんだ?」 「どういう意味も何も、恋愛対象として好きだということだが?」  レン……アイ……? 「……アノ……ユラ、オレ、オトコ……」 「それは知っているが、なぜカタコトなんだ」 「カタコトにもなるわっ!!だって……え、もしかしてお前って実は女だったの?」 「記憶にある限りではずっと男のはずだが?」 「そっか、良かった……いや、良くねぇよ!?」 「落ち着け。そんなに騒ぐほどのことでもないだろう?告白しただけだぞ?」  いや、騒ぐほどのことだろ!?  告白されたんだぞ!?  え、告白……!?告白って……だって…… 「だって……オレ、子ども以外に告白されたことないんだもん!!」 「あぁ……」 「やめろっ!そんな憐みの目でオレを見るな~っ!!」  由羅が何とも言えない気の毒そうな目でオレを見てきたので、思わず手で目を隠した。  どうせオレはモテねぇよっ!!  っつーか、何?こいつがオレのこと好きとか初めて聞いたんですけど!?  あ、でも、由羅にはファーストキスも奪われたんだった!!  え、じゃあもしかして……あの時からオレのこと…… 「心配しなくても、無理やりどうこうする気はない」 「はい……?」 「恋人になって欲しいわけでもない。そもそも言うつもりもなかったしな。だが……」  え、オレと恋人になりたいわけじゃねぇの? 「……お前といるとイライラすると言っただろう?」 「あ、そうだよ!!お前オレといるとイライラするって……」  あれ?好きって言ってるくせにイライラするって矛盾してるじゃねぇか!! 「お前やっぱりオレのこと嫌いなんだろ!?」 「好きだと言ってるだろう!?それに矛盾もしていない。……好きだから心配しているのに綾乃が全然私の話を聞かないし、私に彼女がいるだとか勘違いして変な気を回そうとしたから……」  あぁ、そういや莉奈もそんなこと言ってたな……  う~ん、ホントに心配してくれてた……のか?だって…… 「んな、心配してるとか……わかるわけねぇだろっ!?あんなに怒って怒鳴られたあとに、イライラするとか言われたら……普通は嫌われてるとしか……」 「怒鳴ったのは悪かったが、風呂に沈みかけるし、真っ裸でソファーを拭こうとするし、なかなか部屋に戻ってこないし、風邪を引いているのに家を出るし……お前の行動はあまりにも予想の斜め上すぎて……ちょっとはこっちの身にもなってくれっ!!」 「ぅ……ぐぅ……」  おっしゃる通りで…… 「まぁ、だから……イライラしてたのはそういうことだ。お前のことが嫌いだからじゃない。それに、綾乃がこれ以上変な勘違いをしないように、私が好きなのは綾乃だと伝えておこうと思っただけだ」 「あぁ……そう……」  ん~?つまり、今彼女はいないってことが言いたかったってこと?  うん、そういうことだな。 「わかった!」  ……わかってないな。と由羅がため息を吐いた。 「ん?何か言ったか?」 「いや、何でもない。それじゃ、莉玖を迎えに行くか」 「あ、待って!着替えて来る!」 「そのままでいい」 「でも杏里さんのとこに行ったら子どもたちの相手するから汚れるし……」 「汚れたら洗えばいい」 「え~……」  せっかくもらったのに……いきなり汚すのはさすがにちょっと……  っつーか、洗うのオレなんですけどね!? 「わかった、お前の好きにしろ」  オレがしゅんとしているのを見て、由羅が折れた。 「はーい!……あ、そうだ!」  急いで部屋に戻りかけたオレは、由羅にまだ言っていなかったことがあることに気付いて慌ててリビングに戻った。 「由羅~!」 「今度はなんだ?」 「これ、ありがとな!値段は気になるけど、オレ、クリスマスプレゼントなんて貰ったの、ガキの頃以来だから、すっげぇ嬉しい!」 「……そうか、なら良かった」  オレがお礼を言うと、由羅が、ホッとしたように嬉しそうな表情で笑った。  え……?なんっだよその顔!?お前、莉玖にもそんな表情してるとこ見たことねぇぞ!?   「あ……うん……えっと、じゃあオレ着替えて来る!!」  常に仏頂面の由羅だけど、一緒にいると微妙な表情の変化があるのに気づく。  実は結構笑うのも知っている。  でも、どっちかっていうと、オレの前で見せるのはバカにした笑いというか、苦笑というか……そういう笑いが主だから……    あ~もう!不意打ちで笑うなっ!!由羅が笑うとよくわかんねぇけど心臓に悪い!!  なんか顔が熱いな……あれ、オレまた熱ぶり返したのかな……?    オレは慌てて体温計を手に取った。   ***

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