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Let's travel!! 第88話
――リカルドたちと別れたオレたちは、先ほどの場所までまた戻ることにした。
「由羅、ありがとな。それと……オレのお節介に巻き込んじまって悪かったな」
スタッフに任せれば終わりだと思っていたので、まさかインフォメーションまで付き添うことになるとは思わなかった。
しかも、オレじゃ言葉がわからないから、終始由羅に任せっきりになったし……
自分で言い出したくせに、結局全部由羅頼みになってしまったので、ちょっと申し訳ない。
オレだけだったらたぶん普通にインフォメーションまで付き添って、何なら子どもを探すところまで手伝うけど……
今は由羅と莉玖も一緒にいるのに、オレの勝手なお節介に二人を付き合わせてしまうのは、ベビーシッターとしてどうなんだ?って感じだよな……
「別に構わん。すぐに見つかって良かったじゃないか」
「うん、それは良かったんだけどさ……」
「慣れない土地で言葉が通じない不便さは私にもよくわかるし、私にも莉玖がいるから子どもを心配する気持ちもよくわかるからな。それにしても綾乃こそ、彼らが子どもを捜しているとよく気付いたな」
「あ~それはまぁ……保育園で親子遠足に行くとああいうのよくあるからさ、声の調子とか、動きとか見てたらわかる」
「なるほど」
「さてと、着いたぞ~!莉玖~、お待ちかねの……キリンさんで~す!」
「きゃ~!に~んった~ !」
キリンを見て莉玖が歓声をあげながら手をパチパチと叩いた。
莉玖が一番好きな動物なので、テンション爆上げだ。
「本物はおっきいな~!」
「な~!」
「首なっげぇな~!」
「な~!」
「ほら、お口モグモグしてる!舌も長いんだよな~!」
「な~!」
ふと気づくと、隣にいた由羅がちょっと顔を背けて肩を震わせていた。
「え?何?なんでそんな笑ってんだ?何か面白いことあったのか!?」
「ふっ……くくっ……いや、なんでもな……っははは」
「なんだよ!?」
由羅が爆笑するほど面白いことがあったのかとキョロキョロしていると、由羅が莉玖の手を使ってオレの顔を止めた。
お前……莉玖の手を孫の手みたいに使うのやめろよ……
オレがジト目で由羅を見ていると、由羅が莉玖に笑いかけた。
「なんでもない、可愛いなと思っただけだ。なぁ莉玖?」
「はぁ?そりゃそうだろ。莉玖は世界一可愛い!な~!」
「な~!」
「……お前もな」
「え?何か言ったか?」
「いいや?よし、莉玖、キリンと写真撮るか?」
「あい!」
「由羅、一緒に撮ろうぜ。ホントはオレが撮ってやったらいいんだけど……」
「私が抱くと泣くからなぁ……」
莉玖はこれだけ機嫌が良くても、由羅が抱くとやっぱり、パパイヤ~!になってしまう。
だから、お寺でも動物園 でも由羅はずっと写真係だ。
「自撮りすれば大丈夫だろ。ほら、莉玖の横に来いよ……」
三人で自撮りすればまぁ……キリンはどうしても小さくなってしまう。
何とかキリンの顔が入る場所を探していると、キリンの方から寄って来てくれて、思いがけずドアップで撮ることができた。
ドアップのキリンの迫力に怯える莉玖の貴重な表情も写真に収められたので、めちゃくちゃいい写真になったと思う。
泣きべそになった莉玖をあやしているオレの隣で、由羅は三人で写っている写真を嬉しそうに確認していた。
オレが由羅家に来た時、由羅は莉玖の写真などほとんど持っていなかった。
写真や動画で成長の記録を残すということの意味がわからない……と言っていたのだ。
杏里さんにその話をすると、おそらく、由羅自身があまり子どもの頃写真を撮られるということがなかったせいだろうと言っていた。
……そのせいか、由羅のアルバムは薄っぺらい。
それが今や……すっかり親バカになっちまって、写真も動画も、毎日どんどん増えている気がする。
まぁ、オレが何かあるたびに、写真撮ろうぜ!と言うせいかもしれないが……
でも由羅がこうやって自分から撮るようになったのは、それだけ莉玖に愛着や愛情が湧いて来たってことだろうし、良いことだな!
「よ~し、そろそろお昼ご飯食べようか!お腹空いたよな~莉玖!」
「まんまっ!!」
オレたちは、お弁当を食べられる広場に移動した。
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