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Let's travel!! 第92話

 風呂から上がると、髪を乾かしている間に莉玖は眠ってしまった。  昼間は初めての動物園でいっぱいはしゃいだし、初めての大浴場にも興奮していたので、良い感じに温まって眠くなったのだろう。  かなり疲れているはずなので、たぶん、このまま朝までぐっすり寝てくれるはずだ。 「綾乃、莉玖寝たんだろう?代ろうか」  部屋に戻る途中、由羅がぐっすり眠る莉玖を見て手を差し出して来た。 「え?いや別に部屋まですぐだし……あ!じゃあ、莉玖連れて先に部屋戻ってて。オレちょっとジュース買ってくる!」 「ジュース?」 「脱衣所にがあったから気になってたんだ!」 「アレ?」 「フルーツ牛乳!」 「……そうか、わかった。行ってこい」  由羅がちょっと呆気に取られて目をパチパチした後、苦笑しながら莉玖をそっと抱き取った。  なんだよ!フルーツ牛乳は美味しいんだぞ!? 「買ったら脱衣所で飲んで来るから!」 「じゃあ、先に部屋に戻ってるぞ?」 「はーい!」  フルーツ牛乳は先に来た時に見つけていたのだが、お金を持って来ていなかったので買えなかったのだ。  今回は、ちゃんと小銭を持って来ていた。  莉玖が起きていればオレが飲んでいると欲しがるので、もちろんジュースは我慢するつもりだったのだが、ちょうど眠ってくれたので飲むなら今しかない!! 「え~と、フルーツ牛乳は……あった!……あ゛~~っ!」  先に買っている人がいたので後ろで待ちながらフルーツ牛乳のボタンを探していたら、その人もフルーツ牛乳を買っていた。  しかも、その人がボタンを押した瞬間、売り切れの文字が浮かび上がったので、思わず咎めるような声が出てしまった。  いやいや、この人のせいじゃねぇし!!  それにフルーツ牛乳は他にも……え、全部売り切れ!?みんなどんだけ好きなんだよ!!オレも好きだけど!! 「あ……もしかして、これ欲しかった?」 「いや……大丈夫です……」  そう言いながらもショックのあまりガックリと項垂れていると、先に買った人がオレをマジマジと見てきた。 「あれ?きみさっきの……良かったらコレどうぞ」 「え?」  顔を上げると、オレの前にいたのは先ほどバスチェアを持って行ってくれようとしていた親切な人だった。 「あ~、さっきの!」 「僕は特別これが飲みたいってわけじゃないから、どうぞ?」  男は、爽やかに笑うと自分が買った最後の一本のフルーツ牛乳を惜しげもなくオレに渡してくれた。  なんだ、この人!?由羅はなんか気を付けろとか言ってたけど、めっちゃ良い人じゃね!?  別にそんないちゃもんとか付けて来そうな感じしないし……むしろ譲ってくれてるし!!  神か!! 「じゃあ、ありがたく……あ、えっとお金……あ゛……」  ジュースの代金を払おうとして、オレは手の中の500円玉を見つめた。 「あ~、えっと……じゃあ、あんたの分をオレが買うってことで!何飲みます?」  オレが500円玉を入れて、好きなボタンを押せと言うと、男はボタンではなく、返却レバーを捻った。 「いや、僕の分はいいよ。僕はさっき水飲んだし。フルーツ牛乳(それ)はたまたま目に入って懐かしいなと思って買ってみただけだからね」 「え、でもオレ500円玉しかねぇから……部屋に戻ればあるけど……」  小銭を何枚も持ってくるのは邪魔なので、500円玉一枚をポケットに突っ込んできたのだ。   「それくらい奢るよ」 「見ず知らずの人に奢って貰うわけにはいかねぇよ!あ、いや、いかないですよ!!ちょっと部屋に戻って取って来るから、ここで待っててください!」 「あ~、でも僕もう部屋に戻らなくちゃいけないから、それなら僕がおつり渡すよ。一緒に来てくれない?」 「え?――」  しばらく二人で押し問答をしていたが、このままじゃ埒が明かないので、結局男の部屋に行ってお釣りを受け取ることになった。 ***

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