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Let's travel!! 第96話

――ということだ。わかったか?……綾乃?」 「……っふぇ?あ、ふぁいっ!わかりまひた!」 「……もう寝るか」  由羅の防犯教室を聞きながら、うつらうつらしていたオレを見て、由羅がため息を吐いた。 「え……うん……すみません」  あんな風に縛られるのなんて初めてだったし(いや、大抵の人がそうだろうけど!?)、慣れない恰好をしていたせいか何だか疲れた……   ***  莉玖と先に部屋に戻った由羅は、いつまで経っても帰ってこないオレに何度も電話をかけてきたらしい。  だけど、麻生の部屋にいたオレは電話には全然気づかなかった。  どうやら、麻生に電源を切られていたらしい。  まぁ、電話が鳴っても出られる状態じゃなかったけど……  莉玖の実父の件もあるし、何より大浴場で麻生がオレに絡んでいたことが気になっていた由羅は、何かあったのかもしれないと思い、ホテルの支配人に相談をして監視カメラの映像を見せてもらい、大浴場から麻生と一緒に出て来ていたオレを見つけたのだとか。  ちなみに、由羅曰くこのホテルは由羅の会社の系列なので、支配人とは顔見知りらしい。    寝惚け眼で歯磨きをしたオレは、ソファーに戻り横になった。  麻生に弄られていた携帯の設定を戻しているうちに、またウトウト…… 「綾乃!寝るならちゃんとベッドに行けっ!こら、綾乃!?」 「ん~……ゆら……ごめ……」 「だから、もう寝ろと……綾乃?……こら、こんなところで寝たら風邪を引くだろう!?……」  由羅の声は聞こえていたものの、眠すぎて身体が動かない。  ごめん、由羅。お説教は起きたら聞くから、今は寝かせてくれ~…… 「……まったく……」  由羅のため息が聞こえたと思った瞬間、自分の身体が浮くのを感じた。  あれ……あ~もしかして運んでくれてんの?  なんか温かいしフワフワして気持ちイイなこれ……  その日オレは、莉玖と一緒に雲に乗って動物園に行く夢を見た。  うん、我ながらメルヘンだ。  まぁ、その後なぜかSM女王の恰好をしたキリンに捕まって、チンパンジーに縄で縛られて、最終的にライオンの檻に放り込まれたところで目が覚めた。 *** 「……やめろー!オレは美味しくねぇよぉおおお!?」 「……おい、綾乃!?」 「ハッ!?あぇ?……なんだ夢か……」    目を覚ますと動物園ではなく、ベッドの上だった。 「良かったぁ~……」  ほっと息を吐いてもう一度寝ようと目を閉じる。 「良くない。もうすぐ朝食の時間だぞ?そろそろその手を離してくれないか?」 「……んぇ?」  由羅に言われてもう一度目を開ける。 「え?由羅?」 「そうだが?」 「あれ?何で一緒に寝てんだ?」 「ベッドが一つしか空いてないからだな」  あ~……え?一つ?  寝惚けていたオレはここがホテルだということを忘れていた。   「それから、先に言っておくが、私から触れたのはベッドに運んだ時だけで、はお前からだからな!?」 「は?何の話を……って……」  んん?何でオレ由羅に抱きついてんだ!? 「おわっ!?ごごごめんっ!!」  慌てて由羅から離れる。 「別に抱きついてくるのは構わないが、莉玖も目を覚ましたし、もうすぐ7時半だしな。そろそろ着替えて用意をしないと……」 「え?もうそんな時間!?」  オレは普段は6時ごろに起きている。  休みの日でも、7時には勝手に目が覚めているのだが…… 「昨夜は遅かったからな。眠たいなら車の中で寝ろ」 「あ~……いや、もう大丈夫!うん、全然平気!あ、おはよ~莉玖!」  オレは昨日の自分の失態を思い出した。  気まずくなって由羅から視線を外すと、莉玖のいるベッドに移り、オムツを替えて服を着替えさせた。 ***

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