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Let's travel!! 第99話
「莉玖~、お土産どれにしようか~?……っつっても、これはお酒が入ってるみたいだから莉玖は食えねぇんだけどな。もうちょっと大きくなったら食おうな~!」
「まんまっ!!」
「ん~?莉玖も食いたいのか?そうだよな~、美味しそうなのいっぱいだもんな~!う~ん……あ、この果物がいっぱい入ってるゼリーは莉玖も食えそうだな!――」
『あら?ちょっと綾乃くん!後ろ!』
オレが莉玖とキャッキャ言いながら土産を選んでいると、莉奈の声がした。
「へ?」
後ろ?何かあるのか?
オレが振り返ろうとした瞬間、聞き覚えのある無駄に爽やかな声がして、誰かが背後から抱きついてきた。
「綾乃くん!昨日ぶりぃ~!」
「ゲッ!?おまっ……あ、麻生!?」
何でお前がこんなところにいるんだよ!?
「いや~、こんなところで会うなんて、これってもしや運命……」
「おいっ!!……なぜお前がここにいる!?」
さっきまで姿が見えなかったのに、どこからか由羅が割り込んできて麻生の言葉をぶった切ると、オレから麻生を引きはがしてくれた。
店の中なので声は抑えているが、由羅が苛立っているのがわかる。
「ふぁ……ふぁお ……!!」
「由羅!……って、おい顔っ!?」
麻生が離れたのでホッとして振り向くと、由羅が麻生の顔面を掴んでいた。
「ちょ、由羅、それだと喋れないだろ!?っていうか、ここでは止めろって!」
「こいつを庇うのか!?」
「いや、そうじゃねぇけど……」
別に麻生を庇うわけじゃねぇけど、ここで揉めるとお店に迷惑かけちゃうだろ!?それに人もいっぱいだし……と思い、麻生の顔を掴んでいる由羅の腕を引っ張った。
「こいつがここに来ること、綾乃は知っていたのか?」
「はあ!?んなわけねぇだろ!!オレもビックリしたっつーの!だいたい、休憩のためにここに入ったのは由羅だろ!?オレはここで休憩するとか知らなかったし……」
そもそも運転してたのは由羅だし、この道を通るってことも、ここが道の駅だってことも、オレは知らなかったんだぞ!?
「そうか、ならいいが……」
オレの言葉を聞いて、由羅がちょっと安心したように息を吐くと麻生の顔面から手を離した。
その代わり、莉玖を抱っこしているオレを抱き寄せ、顔面を掴んでいた手は相変わらず麻生に向けて突き出したまま牽制する。
あの、オレを抱き寄せる必要あります?
離してくれればオレ自分で由羅の後ろにさがるけど!?
「綾乃にはもう近付くなと言ったはずだが?」
「あいたた……ひどいなぁ僕の顔だって一応商売道具なんだからね!?」
「そんなことは聞いていないっ!うちの綾乃と莉玖に猥褻 行為をしてきたのが悪いっ!」
「猥褻行為って……友達を見つけたから挨拶替わりのハグしただけじゃないか!だいたい、ここは誰でも利用できる場所なんだから、僕だって利用する権利はあると思うけど?」
「そうだな、確かにここを利用する権利はある。が、綾乃に近付くのは話が別だ!」
ちょ、由羅!?
麻生に苛立って怒鳴りたいのを必死に堪えているのはわかるが、その分オレの肩を掴んでいる手に力が入るのでさっきから痛いっっ!!
それに、店内は買い物客が大勢いるので、何となく周囲に人だかりが出来てきた気がする……
だいたい、二人とも背が高いし顔も良いからそれだけで目立つし!!
これはマズイ……
「おい、ちょっと、二人とも!外出るぞ!外っ!」
「え?なんで?」
「綾乃?」
「いいからっ!!早くっ!!」
オレは慌てて二人を外に押し出した。
***
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