100 / 358

Let's travel!! 第100話

「ちょっとちょっと~、綾乃くん?一体どこまで行くのさ~?」 「いいから、もっとあっち!!」  ひとまずオレは、比較的人気(ひとけ)の少ない場所まで麻生と由羅を押して行った。  ここまでくれば、大丈夫か? 「えっと、麻生!つまり、お前はここにはたまたま来たんだよな!?で、オレを見かけて近付いて来たってことだよな!?」 「え?うん、そうだよ?」 「お前はオレを見かけても近付いてくんな!声もかけるな!」 「え~?どうして?」 「どうしてもだっ!!」 「お前は昨日私が言った言葉をもう忘れたのか!?二度と綾乃に近付くなと言ったはずだが!?」  オレと麻生のやり取りにイラついて由羅が割り込む。 「言ってたねぇ、でも別にきみにそんなことを言われる筋合いないでしょ?雇い主に綾乃くんの友人関係にまで口出しする権利あるの?」 「……なんだと?」  麻生~~!!せっかくオレがさっさと話しを終わらせようとしてんのに、由羅を煽るなよおおおお!! 「私は……」 「ああああああもおおおおおおお!!!うるっせぇな!!由羅は雇い主だけどオレの恋人でもあんだよっ!!だから口出しする権利はあるの!!これでいいかっ!?」  麻生がやけに由羅に関係ないから口を出すなと突っかかるので、早く話を終わらせたかったオレは思わず意味不明なことを口走っていた。  ……なんでオレそんなこと言ったんだ? 「……へ?」 「……え?」  由羅と麻生が二人揃ってポカンと口を開けたマヌケ面でオレを見た。 「な、なんだよ!?文句あんのかっ!?」    こうなりゃもうヤケクソだ!! 「いや、っていうか、え、いつの間に!?だって、昨日の今日だよ!?」 「何がだよ!?」 「綾乃くんたち、昨日は全然そんなこと言ってなかったじゃないか!?普通恋人が縛られてたらもっとさぁ~、違った反応しない?」  麻生が疑わし気に見て来る。  そりゃそうだろ。だって、別に恋人じゃねぇし? 「そ、それは、その……他の人もいたし……」  我ながら苦しい言い訳。 「いやいや、綾乃くん?僕の目は誤魔化されないよ?きみたち、どう見ても恋人同士じゃないでしょ~」 「なんでお前にそんなことわかるんだよ!?」 「だって、綾乃くん、未経験でしょ?」 「は?」 「そりゃたまにイレギュラーはいるけど、綾乃くんってネコでしょ?でも、縛ってる時にちょっと触らせてもらったけど、綾乃くんは全然身体付きしてなかったもの」  んん?こいつ一体何言ってんだ? 「お前、目が悪いのか?オレのどこがネコだよ!!おらぁ、生まれた時から人間だっつーの!!」 「いや、そういう意味じゃ……」 「おい、いい加減にしろ!麻生、ちょっとこっちに来い!!」  由羅がまた麻生の顔面を掴むと、そのまま少し離れた建物の陰に麻生を連れ込んだ。  え、何!?何の話してんの!?由羅さ~ん!?お~い!!どこに連れて行ってんだよ!?  由羅たちの様子が気になったが、もしちょっと物騒なことになっていたら莉玖にそういう場面を見せるわけには行かないので、オレはその場から二人が消えていったあたりをヤキモキしながら眺めていた。 「ちょ、莉奈!莉奈!頼む!由羅たちの様子見て来てくれ!!」 『はいは~い!おやすい御用よ~!!』  莉奈が生き生きしながら由羅たちの後を追いかけて行った。 「ぅわ~……莉玖~、どうしよう!?……パパ何やってんだろな~!?」 「パッパ?」 「あ、うん。まぁちょっとお話してるだけだよな!!莉玖のパパはいつだって冷静沈着で、そんな暴力的じゃねぇもんな!」  だよな……? 「あ、そうだ!莉玖、おやつ食うか?」 「まんまっ!!」 「オレは試食のお菓子いっぱい食ったけど、莉玖は食べてねぇもんな~、ごめんな」  とりあえず、由羅たちが何をしているのかは後で莉奈に聞くことにして、オレはよくわからないモニュメントの台座に腰かけると、莉玖におやつを食べさせた。 ***  数分後、渋い顔をした由羅と、ちょっと俯き加減の麻生が出て来た。  麻生の肩が小さく震えている。  え、もしかして由羅に脅されて怯えてる!?あの麻生が!?  と思ったが、どうやら麻生は笑いを堪えていただけらしい。  どういうこと!?  ま、まぁ、良かった、殴り合ったわけではなさそう……だな? 「あ、ごめんね、綾乃くん、お待たせ~!」  笑いを堪えながら俯いていた麻生が顔をあげ、笑顔で手を振って来た。  いや、お前のことは待ってねぇけど!? 「綾乃くん、今日はビックリさせてごめんね、それじゃまたね~」 「、はないと言っているだろう!?こら、綾乃に触るな!!しつこいぞ!!」  オレの頭を触ろうとしていた麻生の手を由羅が叩き落とした。 「あはははっ!はいはい、大事な恋人だもんね~?」  そんな由羅に意味深な視線を送って、麻生が爽やかに笑いながら去って行った。  え?なんだったんだ!?  っていうか、麻生、お前は全然反省してねぇな!? 「あの……二人で一体何の話してたんだ?」 「ん?いや……まぁちょっとな……」  由羅が少し視線を逸らす。 「なぁ、物騒なことにはなってねぇよな?ホントに大丈夫か?」 「あぁ、それは大丈夫だ。普通に話をしただけだ」 「ほんとかよ……?」  普通に話すだけなら、わざわざ陰に連れて行かなくても…… 「それより綾乃、さっきの話しだが……」 「あっ!そうだ!お土産まだ買ってなかった!!」 「え?あぁ、そうだな」 「あのさ、一つはゼリー買おうと思ってさ、それなら莉玖も食えるし……」 「あぁ、いいんじゃないか?」 「だろ?んで、後は気になるのが……あ、とりあえず店戻っていい?」 「……わかった、戻るか」  由羅が軽く眉を上げて、大きく息を吐くとフッと笑った。 「よし、急いで戻らないと!!無駄な時間過ごしちまったからな!!」  あれ?そういえば由羅さっき何か言いかけてたっけ?  と思ったが、オレの頭の中はもうお土産でいっぱいになっていたので、ひとまず店に向かって足を速めた。 ***

ともだちにシェアしよう!