101 / 358
Let's travel!! 第101話
「綾乃、ちょっと待て。昼飯はどうする?」
「え?あ~……」
ようやくお土産が買えてホッとしながら車に戻ろうとしていたオレを由羅が引き止めた。
オレがお土産選びに手間取った上に、麻生の件でごたごたしていたので、気がつくともうお昼は過ぎていた。
道の駅で一体何時間過ごしたんだよ!?
「道の駅 で食べるか?もうピークは過ぎてるだろうし……」
由羅はそう言いながら、道の駅に隣接しているいくつかの飲食店を指差した。
「ぅえ!?」
「なんだ?他に何か食いたいものでもあるか?」
「いや、オレは全然何でもいいけど……由羅はいいのか?」
「何がだ?」
「いや、あの……こういうところで食ってもいいの?」
「……お前は私を一体何だと思ってるんだ……?私だって普通にラーメン屋にも入るし、居酒屋にも入るし、コンビニ弁当も食べるぞ?」
え、それはマジで意外!!
だって、お前一人暮らししてた時の一ヶ月の食費半端なかったじゃねぇかよ!!
「あ~、そりゃまぁ、常にラーメン屋に言ってたわけじゃないからな。仕事の付き合いでそれなりの店にも行っていたし……」
はいはい、それなりの店の方が多いってことですね~。まぁ別にいいけど。
「それで、何が食いたい?」
「ん~?そうだな~……莉玖が食いやすいのはうどんかな」
「じゃあ、そこ行くか」
***
「莉玖~うどんだぞ~!」
「お~!」
莉玖が一人で全部は食べきれないので、オレが親子丼定食を頼んで、ついて来たミニうどんを莉玖に食べさせることにした。
これなら、オレの分の麺がのびることを心配しなくていいしな!
莉玖が上手に麺をツルツルと吸い込んでいく。
家で食べる時みたいに豪快な食べ方はさせてやれないので、莉玖の手にはおもちゃのスプーンを持たせて、オレが口に放り込んでいく。
自分で食べたいと駄々をこねる時もあるが、麺の時は吸い込むのに必死なのでわりと素直に食べてくれるので助かる。
「綾乃、こっち向け」
「ん?……んぐっ……あ、これ美味い!」
「そうか、良かったな」
「うん……ん?」
莉玖に食べさせる事に集中していたオレは、気がつくとまた由羅に食わせてもらっていた。
由羅は、自分は一方的に口に放り込むことしかできないから~……とか言ってたけど、逆に一方的に口に放り込むのはやけに上手い。
絶妙なタイミングで口に放り込んでくるので思わず食べてしまう。
「いや、オレは後で食うから、お前は自分の食えよ!」
「ちゃんと自分の分も食べているぞ?」
「え?」
たしかに、ちゃんと由羅の分も減っている。
というか、もうほぼない。
そういえば、由羅って食うの早いんだよな~……
いや、そこじゃなくて!
「あのさ、家ではいいけど、外ではあんまりこういうことはすんなよ」
この流れに慣れてしまって、オレも無意識に口開けて食わせてもらってるけど、傍から見ればやっぱりおかしいだろ!?
「なぜだ?」
「いや、ほら……他の人もいるだろ?」
「……別に迷惑行為をしているわけじゃないだろう?みんな食事をしに来ているのだから、いちいち他人の様子なんて見ないと思うが?」
う~ん、そりゃそうだけど……でも、見てるんだよな~!!
今だって、結構な視線というか、注目を浴びているように感じているのはオレだけですかああああああ!?
「あ~の!」
「あ、はいはい、もう食ったのか~?ちゃんとモグモグしなきゃダメだぞ~?」
「あい!」
「莉玖~、うどんおいし~?」
「お~ちっ!」
莉玖が満面の笑みで万歳をし、オレの両頬をぺたんと手のひらで挟み込んだ。
うん、莉玖……おいし~!の仕草は、オレじゃなくて自分の頬を挟むんだぞ?
可愛いからいいけど……!
「そかそか、おいしいな!」
「綾乃、こっち」
「ん~?……あ、あんがと……」
莉玖に触られてうどんの汁まみれになったオレの頬を、由羅がおしぼりで拭いてくれた。
……って、だから、拭くなら莉玖の口拭けよ!
「もちろん莉玖も拭くが……綾乃は放っておくとすぐに服で拭こうとするからな」
「ぅ……」
オレは莉玖の顔や手はちゃんとおしぼりで拭くが、自分についた汚れとかは少しくらいなら昔からのクセで服の袖で拭いてしまう。
一応保育士になってからは、子どもが真似をするといけないので服で拭かないように気を付けているが、それでも時々やってしまうのだ……
でも、本当に時々だぞ!?なのに、なんで由羅はそんなこと知ってるんだ?
「よし、莉玖最後の一口~!」
「まんまっ!」
「綾乃、こっちも最後だ」
「え?あ、はい」
結局、キレイに最後の一口までいつもの流れで食い終わった。
っていうか、三人ともだいたい同じタイミングで食い終わるように調整されているのがスゴイと思う……
これはもう、由羅は自己紹介で胸を張って特技だと言っていいと思う!!
言う機会なんてないだろうけどな!?
***
ともだちにシェアしよう!