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Let's travel!! 第103話
「莉玖は?」
「ぐっすり寝てた。モニターもつけて来た」
「そうか」
「うん」
オレは部屋に戻ると、由羅の前で正座をした。
「綾乃、こっち」
由羅がため息をつきつつ、自分の隣をポンポンと叩いた。
「あれ?お説教じゃねぇの?」
オレは首を傾げて由羅の隣に腰かけた。
「説教?……そうだな、別にそういうつもりはなかったが……説教と言えば……昼間のことだが……」
「昼間?」
あれ?もしかしてオレ墓穴掘った!?
そういうつもりじゃなかったなら、わざわざ説教しなくてもいいですけど!?
っつーか、昼間のことってなに!?やっぱり麻生のこと?
それとも……あっ!試食しまくってたこと!?
それか……お土産選びに時間かかりすぎとか……?
あとは~……あ、海でも怒られたな……
う~ん、心当たりが多すぎる!!
とりあえず……
「ごめんなさいっ!!」
オレはベッドの上で正座をして、由羅に頭を下げた。
「何がだ?」
「え?何がって……え~と……心当たりがありすぎてわかんねぇけど、でもあの……せっかくの旅行だったのに、オレが台無しにしちゃったから……ごめん」
「そうなのか?」
「……へ?」
由羅の戸惑っている様子に、オレも戸惑う。
なんだか話が噛み合わない。
あ、それはいつものことか。
「えっと、だって、昨日も麻生のことでめっちゃ迷惑かけちゃったし、今日も……」
「あぁ、まぁあいつに関しては、先にちゃんとあいつのことを教えておかなかった私も悪いし、お前が無事だったから別にもういい。でも、次からはなるべく気を付けてくれよ。私の心臓に悪い」
「はい……スミマセン……」
あれ?でもこれじゃないってこと?じゃあ昼間の話ってどれ?
「だから、今日の昼間お前が言ったことだ」
「えっと?……オレ何言ったっけ?」
昼間……え~と……
「……麻生に、私と恋人同士だと言っただろう?」
「へ?……あ~……言っ……た?……うん、言ったような気がする」
そのことかあああああああ!!!
オレは軽く頭を抱えた。
「あ~、あのさ、あれはその……咄嗟に口から出ただけで……」
「それはわかっている。だが、すぐにバレる嘘をつくな」
「……ぇ?」
そこっ!?
「そもそもお前は顔に出やすいから嘘をついてもすぐにわかる」
「ぅ……」
「それなのに、よりにもよって嫌っている相手を恋人だと言うのは無理があるぞ」
「はい……?」
嫌ってる?
「いや、別に嫌ってるわけじゃ……」
「だいたい、お前が私を嫌っていることも、私が一方的にお前に好意を持っていることも、昨日の時点で麻生にはバレていたからな。だから、お前の恋人は他にいると訂正しておいた。じゃないと、またお前にちょっかいを出して来るかもしれな……」
ん?……いやいやちょっと待て!!
「オレは嫌いだなんて言ってねぇし!そうじゃなくてっ……からかってくるのがイヤなだけだっ!!お前がからかってくるから、言い合いみたいになって……それは別にいいけど、でも、莉玖の前で言い合いしちゃうのがイヤなだけで……別にお前のことが嫌いだなんて言ってねぇだろっ!?」
「……嫌いじゃないのか?」
由羅がちょっと驚いた顔でオレを見てきた。
「だからそう言って……」
「そうか……嫌われてはないのか……」
由羅が呟きながらフッと微笑んだ。
ふぁ!?なにその顔!!
「あ……の……うん……嫌いなわけじゃねぇよ」
オレは、やけに嬉しそうに笑う由羅にどういう顔をすればいいのかわからず、もじょもじょと呟きながらうつむいた。
だから、ドキッて何!?
「まぁでも、ああいう変に勘が良い奴は厄介だから、下手な嘘をつくのはやめておけ」
「ア……ウン、ソウデスネ」
「……さてと、部屋に戻るか。莉玖がひとりだしな」
「うん……ん?っつーか、話って結局、嘘をつくなってことだったのか?」
「あぁ、いや……綾乃は楽しめたのか聞きたかっただけだ」
「へ?」
「今回の旅行は、私が無理やり連れて行ったようなものだったし……結局綾乃は莉玖の面倒をずっとみていたから、ゆっくり出来なかっただろう?」
あれ、そのこと気にしてたのか……
でもオレ……莉玖と一緒にはしゃぎまくってたと思うんだけど!?
「オレはめちゃくちゃ楽しかったぞ?」
「そうか、それは良かった。一緒に行ってくれてありがとう」
「え、いや、こちらこそありがとうございました」
由羅はちょっと口元を綻ばせると、さっさと部屋から出て行った。
いや……楽しめたのか聞くだけなら別に由羅の部屋で良くね!?
なんでここで話したんだ!?
やっぱりあいつよくわかんねぇな……
オレは首を捻りながら由羅の後を追いかけた。
***
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