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呼び出し 第105話

「え~と……ここって個人宅?高級旅館とかじゃなくて?」 「個人宅だ。悪趣味だろう?」  オレは由羅に連れられて、由羅のじいさんが住んでいるという家にやってきた。 「悪趣味っつーか……でかっ……」 「無駄に広いだけだ。こんなの手入れは大変だし、建物は古いし、何よりこんなに広くても住んでいる人間は少ない。使用しているのはほんの一部なのに、手入れは全体をしておかなければいけないので無駄に金だけがかかる。なにもかもが無駄だ。綾乃の言うように旅館にでもすればこの広さも有効活用できると思うが……」  由羅が先ほどから棘のある声で無駄を連発する。  ここに来るまでに、ざっと由羅からじいさんの話しを聞いたが、以前聞いたことや杏里から聞いたことに加えて、とりあえず由羅はじいさんのことが嫌いなんだということがわかった。  父親とどちらがマシかと言えば、どっちもどっちらしい。  まぁ、後継者を辞退するくらいだし、子どもの頃の話しを聞けば、そりゃじいさんたちのことが嫌いになるのも仕方ないと思うけどな……  それにしても、由羅がここまで感情的になるのは珍しい気がする。  年末のパーティーでも伯父にイラついてたみたいだけど……基本的に由羅は杏里さん以外の身内が嫌いなのかもしれない。 「綾乃、顔を見せたらさっさと帰るぞ」 「へ?あぁ、わかった」  由羅が玄関の扉を開く前に、自分に言い聞かせるようにオレに宣言した。  なんていうか……強気な発言のわりに、ちょっと弱気になっているように見えるのが面白い。 「まぁ、さっさと顔見せて帰ろうぜ!な?」  オレが由羅の背中をバシッと叩くと、由羅がちょっと驚いた顔をして、フッと笑った。 「ああ、そうだな」 「パッパ!」 「ほら、莉玖も早く帰ろうって言ってるぞ!」 「莉玖も早く帰りたいよな、わかった。さっさと帰れるように頑張る」  由羅が少し微笑みながら莉玖の頭を撫でて、表情を引き締めた。 ***  お手伝いさんらしき人が出迎えてくれて、長い廊下を案内してくれた。  う~ん……何だかオレ超場違いじゃね?  今朝、何を着て行けばいいのかわからず困っていると、由羅に 「私がクリスマスにプレゼントした服を着ていけばいい」  と言われたので、今日のオレは全身由羅コーディネートになっている。  だから、オレにしてはちゃんとした服装をしているはずなのに、お手伝いさんやすれ違う人達が、お辞儀をしつつもオレをチラチラ見て来る。  うん、わかるよ?オレも自分でわかってるよ!!  すっげぇ七五三感があるんだろ!?  由羅のセンスは悪くない。  悪いのは、お子ちゃま体型なオレだ。  サイズはちゃんとピッタリなんだけど、何だろうな……?  普段こういう服を気慣れていないのがバレバレ?  別に、スーツというわけではないのだけれど……服に着られている感が否めない。 「失礼いたします」  そうこうしているうちに、奥の部屋に案内されていた。 「おはようございます、お祖父様。朝っぱらから人を呼び出すのは止めて下さい。迷惑です」  部屋に入るなり由羅が文句を言った。 「まずは挨拶をせんか!」 「挨拶はしましたよ。そういうお祖父様こそ、ちゃんと挨拶して下さい」 「ぅ゛……ゴホン!おはよう。よく来たな。……これでいいか!?」 「そうですね」 「まったくお前は可愛げがないのぅ……一体誰に似たのやら……」 「父とお祖父様に決まっているでしょう?他に誰がいるんですか」 「あ~もう!わかっておる!!――」  あれ~?なんだか、オレが想像していたよりも、由羅とじいさん仲良しじゃね?  言い合いはしてるけど、何だかお互いに結構楽しそうに見えるのはオレだけ?  由羅が入ってすぐの所で止まったので、オレには室内がよく見えない。  よって、じいさんの顔はまだ見てないが、聞こえて来る会話からは内容は何となくギスギスしながらも、テンポよくやり取りしているので、仲が良さそうに聞こえる。  なんだよ、ホントは仲が良いのか?  それとも、こういうもんなのかな?  親戚というものがいないオレには、イマイチわかんねぇけど……  オレは由羅の後ろで莉玖をあやしながら、首を捻った。 ***

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