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休日の過ごし方 第113話
「朝飯出来たぞ~!お待たせ、莉……おおぅ……」
「わかったわかった、綾乃がいいんだな。それはわかったから、オムツを脱ぐな!莉玖!ズボンが嫌なら穿かなくてもいいけど、頼むからせめてオムツは穿いてくれないか?」
「何やってんだ?」
「あああああのおおおお!!」
まぁね……パパイヤ期の莉玖と二人。
なかなか下りて来ねぇから予想はしてたけど……
由羅の部屋の扉を開くと、莉玖の泣き声が聞こえて来た。
由羅がオムツをはかせるたびに、「やっ!」と莉玖が脱いでいた。
こういう時は、やたらと上手に脱ぐんだよな~……
「こ~ら、尻丸出しで何やってんだ~?」
「綾乃……」
由羅が情けない顔でオレを見てきた。
「由羅、飯出来てるから先に食っててくれ」
「……わかっ……ちょっと待て。綾乃、服着替えてないのか?」
「え?」
「服にも血がついていただろう?なんでシーツと一緒に洗わなかったんだ?」
「あ~、一応軽く拭いたけど……」
由羅に言われて、自分の服を見下ろす。
服にも血が結構垂れていたのだが、まぁ、紺色の服だから多少シミになってもそんなに気にならないだろうし、寝間着だから別に……
「あ、飯作る時はちゃんとエプロンしてたぞ?」
「そんなことを言ってるんじゃない!朝飯は急がなくてもいいと言っただろう?先に着替えて来い」
「まぁ、そんなに目立たねぇし、朝飯食べたら着替えるよ。どうせ莉玖に飯食わせてたら汚れるだろうし」
「わかった……」
由羅がまだ納得がいかない顔をしながらため息を吐くと、下におりていった。
「ほ~ら、莉玖。オムツ穿かないと朝ごはん食べられないぞ~?脱げるってことは穿けるよなぁ?ほら、穿いてみな?」
「あ~の~」
「こら、急に甘えるな。パパが穿かせてくれたのに脱いだのは莉玖だろ?はい、莉玖、ちゃんと持って、足入れて~?こことここ。そうそう……上手じゃねぇか!いつもその調子で頼むぜ?」
「お~!」
莉玖は、オレが手を添えると上手にオムツを穿くことが出来た。
ま、たまたまだろうけどな。
全部自分で出来るようになるには、まだまだ時間がかかる。
***
「大人しく穿いたか?」
食後のコーヒーを飲んでいた由羅が、読んでいた新聞を横に置いて聞いてきた。
「ああ、オレが手を添えながらだけど自分でちゃんと持って足入れたぞ?」
「そうか……やっぱり綾乃じゃないとダメか……すまんな」
「別にいいよ。それに、服を着るのを嫌がる子は結構いるんだ」
保育園でも、朝はちゃんと服を着てくるけど、途中でお着替えさせようとして服を脱がすとそのまま裸で走り回る子は多い。
特に多いのはトイレタイムで、さっきの莉玖みたいにオムツやパンツを穿かせようとしてもすぐに脱いでしまうのだ。
こういう子たちをオレは密かに“裸族”と呼んでいる。
裸で逃げると大人が慌てて追いかけてくる。
それを遊んでくれているのだと勘違いをしてやっているところもあるので、適当に相手してやれば結構満足してスッと穿いてくれる。
裸族を追いかけて摑まえて服を着せるのは、ある意味赤ちゃんクラスじゃおなじみの光景なのだ。
「そういうものなのか」
「敏感肌の子とかだと、服の締め付け感とか触感がイヤっていう子とかもいるし、夏の間は汗疹もできやすいから、生地が擦れるのがイヤとか……まぁいろいろ理由はあるけどな」
そもそも、子どもだけじゃなくて夏だと特に家ではパンイチっていう人は多いから、そんなに珍しいことでもねぇし……
「パンイチ……?」
由羅が首を傾げる。
「パンツ一枚とかパンツ一丁ってことだよ!!え、由羅って一人暮らししてた時もパンツ一枚で過ごしたりしたことねぇの?」
「ラフな格好はするが、パンツ一枚は……風呂上りくらいだな。夏場でもせめて上にバスローブは羽織るぞ?」
はいはい、ですよね~。
そもそも、真夏にオレみたいに扇風機しかない部屋で過ごすなんてことないだろうし?
オレが一人暮らしを始めた頃なんて扇風機さえなかったからなぁ……
「そんな恰好をしていて、急に人が訪ねてきたらどうするんだ?」
「え?まぁ、相手が女の人だったらとりあえず急いで服着るけど、男だったらそのまま出たり……」
「パンツ一枚で出るのか!?」
「え……だって男同士だし……」
由羅の勢いに押されてちょっと言葉に詰まる。
「襲われたらどうするんだ!?」
「うちみたいな、いかにも金持ってませんっていうボロアパートに住んでるやつを襲って来るやつなんていねぇと思うぞ?むしろ金置いていってほしいくらいだし」
「そうじゃなくて……」
「え?」
「いや……あ、莉玖、すまないな。お腹空いたよな、朝ご飯食べようか」
あ!話逸らしたな!?
由羅が何を言いたかったのかわからないが、話を逸らしたってことくらいはわかる。
ん?おい莉奈!何笑ってんだよ!?
気がつくと、莉玖の後ろで莉奈がニヤニヤしていた。
莉奈にはわかってるってことか?
後で聞いてみるか……
「はい、莉玖お待たせ!いただきますして?」
「あちゅ!」
「どうぞ~!」
おにぎりを食べている莉玖の横で、オレもパンに噛り付いた。
***
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