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休日の過ごし方 第114話

「綾乃、今日は莉玖を連れて姉のところに行く」  莉玖とオレが落ち着いて食べ始めたところで、由羅がコーヒー片手にサラッと言った。 「ふぇ、何時に?」 「莉玖が食べ終わったら」 「え!?……わかった。えっと、お出かけセット用意しなきゃだな。あ、洗濯物干さなきゃ……あ~……急ぐのか?」  昨日何も言ってなかったじゃねぇかよ!  先に言ってくれよ~……  昨日は帰ってきてからバタバタしていたので、お出かけセットを用意し直すのを忘れてしまっていた。  今日出かけるってわかってたら、寝る前に用意しておいたのに!!   「洗濯物は私が干しておく。お出かけセット用意してくれるか?ああ、急ぎはしないからゆっくり食べていいぞ。こら、綾乃!押し込むな!よく噛め!」  由羅が洗濯物を干すと言い出したので、オレは慌てて残りのパンを口に押し込んだ。  口の中がパンでいっぱいになっているオレに、由羅が呆れ顔でお茶を渡してくれた。 「んぐっ……ふぁいあふぉ(ありがと)」 「わかったから、食ってから喋れ!」 「んっ……ごちそうさまでした!!あ、莉玖はゆっくり食えよ。由羅、莉玖が食べるのみてやっててくれるか?後はおにぎりだけだから大丈夫だろ。莉玖が食べてる間にオレがさっと干して来る!シーツとかもあるから……」 「綾乃!!急がなくていいと言っただろう!?ちょっと落ち着け!」  食器を持って立ち上がろうとしたオレの手首を、由羅が掴んだ。 「ちょ、危なっ!」  由羅に掴まれたせいで食器を落としかけたが、落ちる前に由羅がサッと取り上げてテーブルに置いた。  セーフ!!って…… 「なんだよ、あぶねぇだろ!?」 「すまない。まあ、とりあえず座れ。莉玖がまだ食べてるだろ?」 「だから、今のうちに……」 「綾乃、急がないから!」 「でも……」  急がないっつっても、やっておきたいことがいっぱいあるし!!  オレがソワソワしているのを見て、由羅が顔をしかめた。 「……すみません」 「何がだ?」 「え?いや、行儀が悪いって言いたそうな顔してたから」  オレはちゃんと椅子に座って、後頭部を掻きながら謝った。  確かに、莉玖がまだ食べているのにオレがバタバタしてたら莉玖も落ち着いて食べられない。  それに、莉玖に食事をさせるのもオレの仕事だし……  由羅が怒るのも無理はない。  ……って、反省は一応しますけどぉおお!!でもやっぱお前のせいじゃんか!?  もっと早く言ってくれよおおおお!! 「……ああ、すまない。そんなつもりはなかったんだが……そうじゃなくて、昨日急遽休み返上で付き合わせてしまったから、今日こそ綾乃に休暇をと思っただけなんだ」 「は?……いや、それならそうと先に言えよ!!」 「すまない。昨夜言ったつもりだった」 「聞いてねぇし!!」 「そうだな。言ってなかったな」 「ったく……何だよそういうことか……」  つまり、杏里さんのところに行くのは由羅と莉玖だけってことだろ?  だったら、洗濯物干すのは由羅たちが家を出た後ゆっくり干せばいいから、先にお出かけセットを作って…… 「ごちゅ……った!」 「お?スゴイな、完食だ!いっぱい食べたな、莉玖!ご挨拶も上手だぞ~!」 「あい!」  オレが由羅と無駄なやり取りをしている間に莉玖は自分でおにぎりを食べ進め、何も言わなくてもちゃんとごちそうさまをした。  莉玖の前ではなるべく由羅と口喧嘩っぽい言い合いはしないと決めたものの、これくらいの言い合いというか、やり取りならもう莉玖も慣れてしまったのかあまり気にしていないような気がする。っていうか、むしろ……  もう、パパたちまたやってるよ~……って呆れられてるのか? ***

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