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休日の過ごし方 第118話

「……で、なんでここ?」 「ダメなのか?」 「ダメじゃねぇけど……」  由羅が急に二人で出かけると言い出したので驚いたが、どうやら杏里さんの差し金らしい。  オレが一人だと遠出できないだろうから、せっかくの休日にどこか連れて行って(ねぎら)ってやれと……いう事だったらしいんだけど……  オレたちは今、先ほどの店から歩いて数分のところにある、何の変哲もないゲームセンターに来ている。  そりゃオレは別に行きたいところなんてないって言ったけどさぁ、だからってなんでここ? 「……一度来てみたかったんだ」  由羅が物珍しそうに見渡しながら呟いた。 「え、もしかしてきたことねぇの!?」 「ない」 「子どもの頃とか……」 「学校の行き帰りに寄り道をすることは禁止されていたし、そもそも塾や習い事が忙しくてこういうところで遊ぶ暇がなかった」 「あ~……大人になってからは?」 「学生ばかりのところに入るのはちょっとな……」    まぁたしかに、学生が多いからちょっと勇気いるかもな。 「でも、なんで急に来ようと思ったんだ?」 「クリスマスに一路(いちろ)たちと遊んでいる時にな、ゲームセンターのユーフォ―なんちゃらとかいうやつで欲しいのがあったけど、難しくて手に入れることが出来なかったと聞いて……莉玖もそのうちにそんなことを言い出すのかなと……」 「は~ん?なるほどね……由羅こっち」  オレは由羅をクレーンゲームのコーナーに連れて行った。 「これは何だ?」 「自分でこのクレーンを操作して、中の景品を獲るんだよ」 「これが一路が言っていたやつか?」 「一路が欲しがってたっていう景品がどれかは知らねぇぞ?ただ、一路が言ってたっていうユーフォ―なんちゃらはこれのことだと思うぞ」 「どうやってやるんだ?」 「ちょっと待ってろ、お金崩して来る!」  オレはとりあえず1000円分を崩すことにした。  昔は100円で2ゲームとかできるのもあったんだけどな~……   「はい、お待たせ!コレを入れて、このボタンで……」 「ほぅ……あっ!?おい、今のちゃんと掴んでたじゃないか!なんで獲れないんだ!?あのアーム壊れてるぞ!」  景品をしっかりと掴んだと見せかけて、上昇する途中でアームはガタンと景品から外れてしまった。  由羅はアームが壊れていると思ったようだが…… 「いやいや、あれはわざと緩くしてんだよ。そんなにしっかり掴めるようにしてたら景品獲られまくりじゃねぇか」 「だが……あれじゃ全然獲れないぞ!?」 「まぁ見てろって。今のでちょっと斜めになっただろ?だから次にあの部分を狙って押してやれば……こうやって……ほらな?」  ちょうどいい位置にあったので、うまくアームで中に落とし込むことができた。  オレが得意気に由羅に景品のぬいぐるみを見せると…… 「……綾乃?今のはたまたま当たって落ちたんじゃないのか?」 「失礼なやつだな!ちゃんと狙ってやったんだっつーの!」  オレはゲットしたての謎のゆるキャラぬいぐるみを由羅の顔に押し付けた。 「ぶっ!……すまん、そうなのか」 「ほら、次お前の番!やってみろよ」 「わかった。じゃあ、あれを狙う!」 「え、由羅あれは……まぁいいや。とりあえずやってみな?こういうのは自分でやってみないとわからねぇしな!頑張れ~!」  オレは隣でぬいぐるみを振りながら、由羅のに声援を送った。 ***

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