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〇〇は外? 第122話
由羅の正月休みが明けると、普段通りの生活が戻って来た。
「よ~し、そろそろお散歩行くか~!今日は風が冷たいから暖かくしていこうな!」
冬になると、外に出られない日が増える。
雨や雪の日はもちろん、風が強い日や、気温が低すぎる日も……
まぁ、夏は夏で暑すぎると出られないから、どちらにしても毎日お天気情報とにらめっこだ。
お散歩と買い物を兼ねているので、出られない日が続くと献立に響く。
でも、天気の悪い日が続くと、杏里が気を利かせて食料品を買って来てくれたり、車で買い物に連れて行ってくれたりするので、かなり助かっている。
「いい天気だな~。莉玖、ほら、あの雲面白い形してるぞ~?」
「も~?」
「雲だ。あ~、虫にも同じ響きで蜘蛛ってのがいるけど、ちょ~っとイントネーションが違うんだよ。んで、漢字も違う。でもわかりにくいよな~。日本語って難しいな!!」
「な~!」
オレがやれやれという感じで肩を竦めて見せると、莉玖が真似をして小さい肩を竦めた。
最近よくオレの動きを真似しているので、わざと大袈裟にジェスチャーをしてやるようにしている。
真似が出来るということは大事だ。
相手の動きをよく見ているという証拠だし、真似をすることでいろんな動きを身につけていく。
まぁ、たまに変な動きをしてみせているところを由羅に見られて呆れられるけど……
「着いたぞ~。今日は何かいいのあるかな~」
お馴染みの店に入ると、思わず立ち止まった。
「お~……そういえば、そろそろか」
目の前には、大きな鬼の絵が描かれたパネルと、大量の大豆が山積みだった。
「節分だな~……莉玖も鬼さんのお面でも作るか!」
「おお~!」
「おにはそと~!ってしような!」
「と~!?」
「そそ、まぁまたやり方教えてやるよ。次の休みにでも節分の絵本借りてくるからな!」
冬はイベント尽くしで保育園でも制作が大変なんだよな~。
楽しいからいいけどな。
節分は2月に入ってすぐなので、正月明けにはもう節分の準備を始める。
鬼のお面や大豆を入れる箱を作ったり、歌を教えたり、節分の絵本を読み聞かせしたり……
あ、そうだ。折り紙買って帰ろう!
「あ~の!まんまっ!!」
「ん?あ~……そうだな、これもあったな」
節分に思いを馳せながら食材を選んでいると、莉玖がオレを呼んだ。
莉玖の指差す方向を見ると、ハートが溢れていた。
そう、2月のイベントと言えば……節分とバレンタインだ。
莉玖にはまだチョコを食べさせていない。
まぁ、チョコはもう少し大きくなってからでもいいかなと思ったり。
この世に美味しいものはたくさんあって、特に莉玖のように裕福な家庭で育っていれば、これから先いくらでも食べられる。
だから、あまり幼いうちから食べさせる必要はないのだ。
「そうだな~、バレンタイン……何か考えておくか」
日本はやたらとバレンタインにはチョコというイメージが強いが、別に海外じゃチョコに限られていないし、女性から男性に送るものだと決まっているわけでもない。
子どもの頃はバレンタインにはお得用の小さい一口チョコを買って来て、近所のやつらと分けて食べていた。
色気より食い気ってやつだ。
もちろん、近所には女の子もいたけれど、なぜか毎年用意するのはオレばかりだったな……
「あ……そういや由羅って……」
どれくらい貰ってくるんだろ……?
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