124 / 358
〇〇は外? 第124話
「よし、莉玖、ここに鬼さんのお目目ペッタンしようか!」
「まんまっ!」
「いや、食べ物じゃなくて、目だぞ~。はい、このシールをペッタンって……そうそう上手だな~!」
オレは画用紙で作った鬼の輪郭に、莉玖と一緒に顔のパーツを貼っていた。
「これを、ここにつけて……よし、これでお面完成~!」
「お~!」
「ほ~ら、綾乃がつけてるのと同じだぞ~。こうやって頭につけるんだ」
オレが見本に作っていたお面を頭に被って莉玖に見せると、莉玖も真似をして自分の頭に乗せた。
「そうそう、かっこいいぞ!せっかくだから一枚撮っておくか!」
「あ、撮ってあげるわ。私も撮りたいし。二人並んで頂戴!」
「すみません、お願いします。ほら、莉玖、杏里さんの方見て?――」
***
「もう節分なのねぇ……」
紅茶を飲んで一息つきながら、杏里が呟いた。
杏里は、友人からたくさん白菜が送られてきたとかで、おすそ分けに持って来てくれていたのだ。
まぁ、それは口実で、たぶんヒマだったから遊びに来てくれたのだろう。
ちょうどオレは莉玖とお面を作っていたので、杏里はその様子を横で楽しそうに眺めていた。
その上、オレが制作の材料を片づけている間にお昼ご飯も作ってくれた。
「今から作っておかねぇと、節分って2月になったらすぐだからさ……」
「そうよね、後二週間くらいよね」
オレは莉玖の頭を撫でながら小声で杏里と話していた。
「はしゃぎ疲れたのね」
杏里が莉玖を見てふっと微笑んだ。
莉玖は鬼のお面にテンションが上がってはしゃいでいたので、お昼ご飯を食べるとすぐに寝てしまったのだ。
「うちの子も保育園で節分の制作をして持って帰って来るけど、やっぱり実際に作っているところを見るのは楽しいわね」
「そうかな?」
「出来上がったのを、ママみて~!って見せてくれるのも嬉しいけど、作っている最中のね、こう……わぁ、スゴイ!やった~、できた~!って感動する気持ちを共有するっていうか、一緒に感じられるのがいいのよね」
「あ~、わかる!」
「でしょ?」
「それ、ある意味保育士の特権かも!」
「そうなのよ。親子参観の時とかには一緒に作ったりするけど、家ではなかなか先生たちみたいに制作をさせてあげられないから……」
「まぁ、乳幼児の制作なんて、ほとんど保育士の作品だからなぁ」
「でも必ず子どもにも何か参加させてあげてるでしょう?それが凄いのよ――」
杏里は保育士だけじゃなくて、自分の子どもたちが通っているスイミング、英会話スクール、書道、体操教室等々のコーチや先生のことも良く褒めている。
相手の良い所や凄い所を見つけて素直に褒めるのは、しかもそれを相手に直接伝えるのは、簡単そうで結構難しいものだ。
それを事もなげにやってしまう杏里の方こそ、スゴイと思う。
オレも職業柄、子どもたちの良い所、凄い所を見つけて褒めるのは得意だが、相手が大人だとなかなか同じようにはいかない。
まぁ、オレは……大人の場合は向こうがオレを色眼鏡で見て来ることが多いからさ……
それはそうと……
「ところで、杏里さん。ちょっと聞きたいんだけど、節分って……」
***
ともだちにシェアしよう!