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〇〇は外? 第124話

「よし、莉玖、ここに鬼さんのお目目ペッタンしようか!」 「まんまっ!」 「いや、食べ物じゃなくて、目だぞ~。はい、このシールをペッタンって……そうそう上手だな~!」  オレは画用紙で作った鬼の輪郭に、莉玖と一緒に顔のパーツを貼っていた。   「これを、ここにつけて……よし、これでお面完成~!」 「お~!」 「ほ~ら、綾乃がつけてるのと同じだぞ~。こうやって頭につけるんだ」  オレが見本に作っていたお面を頭に被って莉玖に見せると、莉玖も真似をして自分の頭に乗せた。   「そうそう、かっこいいぞ!せっかくだから一枚撮っておくか!」 「あ、撮ってあげるわ。私も撮りたいし。二人並んで頂戴!」 「すみません、お願いします。ほら、莉玖、杏里さんの方見て?――」   *** 「もう節分なのねぇ……」  紅茶を飲んで一息つきながら、杏里が呟いた。  杏里は、友人からたくさん白菜が送られてきたとかで、おすそ分けに持って来てくれていたのだ。  まぁ、それは口実で、たぶんヒマだったから遊びに来てくれたのだろう。  ちょうどオレは莉玖とお面を作っていたので、杏里はその様子を横で楽しそうに眺めていた。  その上、オレが制作の材料を片づけている間にお昼ご飯も作ってくれた。 「今から作っておかねぇと、節分って2月になったらすぐだからさ……」 「そうよね、後二週間くらいよね」  オレは莉玖の頭を撫でながら小声で杏里と話していた。 「はしゃぎ疲れたのね」  杏里が莉玖を見てふっと微笑んだ。  莉玖は鬼のお面にテンションが上がってはしゃいでいたので、お昼ご飯を食べるとすぐに寝てしまったのだ。 「うちの子も保育園で節分の制作をして持って帰って来るけど、やっぱり実際に作っているところを見るのは楽しいわね」 「そうかな?」 「出来上がったのを、ママみて~!って見せてくれるのも嬉しいけど、作っている最中のね、こう……わぁ、スゴイ!やった~、できた~!って感動する気持ちを共有するっていうか、一緒に感じられるのがいいのよね」 「あ~、わかる!」 「でしょ?」 「それ、ある意味保育士の特権かも!」 「そうなのよ。親子参観の時とかには一緒に作ったりするけど、家ではなかなか先生たちみたいに制作をさせてあげられないから……」 「まぁ、乳幼児の制作なんて、ほとんど保育士の作品だからなぁ」 「でも必ず子どもにも何か参加させてあげてるでしょう?それが凄いのよ――」  杏里は保育士だけじゃなくて、自分の子どもたちが通っているスイミング、英会話スクール、書道、体操教室等々のコーチや先生のことも良く褒めている。  相手の良い所や凄い所を見つけて素直に褒めるのは、しかもそれを相手に直接伝えるのは、簡単そうで結構難しいものだ。  それを事もなげにやってしまう杏里の方こそ、スゴイと思う。  オレも職業柄、子どもたちの良い所、凄い所を見つけて褒めるのは得意だが、相手が大人だとなかなか同じようにはいかない。  まぁ、オレは……大人の場合は向こうがオレを色眼鏡で見て来ることが多いからさ……  それはそうと…… 「ところで、杏里さん。ちょっと聞きたいんだけど、節分って……」   ***

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