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〇〇は外? 第125話
「え!?響一が鬼役を!?」
由羅と節分の話しをした時のことを話すと、杏里はかなり驚いていた。
「そうなんですよ……あの、オレは自分が鬼役をするつもりだったんですよ!?せっかく、オレが鬼退治を利用した莉玖の『脱パパイヤ期計画』を立てたっていうのに……」
「綾乃ちゃんに投げるのは嫌だって言ったの?」
「……はい……まぁ、自分が鬼役をしてみたかっただけっぽいけど」
「ふ~ん?」
杏里がニヤニヤしながらオレを見てきた。
この顔は、莉奈もよくする顔だ。
「なんですか?」
「なぁ~んでも~?」
何でもないって顔じゃないけど!?
「んん゛、えっと、それで、杏里さんのところは節分ってどんな感じなんですか?」
「そうねぇ……うちは鬼役はいつも私の運転手をしてくれている大竹さんにお願いしてるの。夫は子ども達が起きている時間に帰って来られるとは限らないからね。早く帰って来られた時は、子ども達と一緒に豆を撒いてるわよ」
「あ~、なるほど……」
そうか……運転手さんね~……
杏里さんの家はお手伝いさんもいっぱいいるしな~。
でも由羅家はお手伝いさんとかいないんだよな~……
あ、オレがお手伝いさんみたいなもんか。
いや、だからオレが鬼役すんのが一番いいと思うんだけどなぁ~……
「恵方巻も作るわよ。でも、子どもたちは恵方巻は食べるの大変だから、好きな具材を入れた細い巻き寿司を作ってあげるの」
「あ~、いいですね」
「あ、だけど莉玖くらいの歳には、ちらし寿司にしてたわね」
「寿司用の海苔は子どもにはちょっと嚙み切れない場合がありますしね。保育園でも、節分の給食は乳幼児が食べやすいように鬼の顔の形にした押し寿司みたいなのを作ってくれてましたよ」
「押し寿司いいわね、今年はうちもそれにしてみようかしら!」
「あ、写真ありますよ――」
節分は厄祓いとか魔除けみたいな意味もあるから、地方によってやり方がいろいろとあるみたいだが、杏里の話しを聞く限りでは、オレの知っている節分とあまり違いはなさそうだ。
由羅家はそもそもあんまり節分を重視していなかったみたいだし、こうしなきゃダメ!みたいなこだわりというか、風習?慣習?はなさそうだし……
じゃあ、とりあえず由羅家はオレのやり方でいいかな……?
「ねぇ、綾乃ちゃん。響一が鬼の役をしてるところ、ちゃんと撮っておいてね!?」
「ええ!?ん~……撮れたら撮りますけど、でも莉玖を抱っこして豆撒きしながら撮るのは難しいかも……」
「あ~それもそうね。……あ、そうだ!ビデオと三脚を貸してあげるから、固定して撮影すればいいんじゃない!?」
「え!?」
っていうか、杏里さん、そこまでして見たいの!?
「だって、あの響一が鬼の役をしてるところなんて、想像つかないんですもの!」
「そりゃまあ、オレも想像つかないけど……そうだ、鬼の恰好どうしようかな」
「鬼の恰好?それなら、大竹さんはネットで鬼の衣装を買ったって言ってたわよ?」
「うん、オレもネットで買ったことあるよ」
オレも保育園で鬼役をしたので、鬼の衣装は持っていた。
でも、アパートを追い出された時に慌てて荷物をまとめたので、そういう邪魔になりそうなのは置いてきてしまった……
「今ってどんなのがあるんだろ……」
オレが携帯で調べていると、杏里も画面を覗き込んできた。
「どれどれ?……あら、コレとか面白いわね。あ、こっちも!やだわ、どれにしても響一が着てるところを想像したら笑えるじゃないの!」
「あはは……」
オレは適当に由羅用の衣装を一つ選んで買おうとしていたのだが、杏里がやけにノリノリで、「私が見たいから買うのよ!」と言って、鬼の衣装を3つも買ってくれた。
そんなにいらないだろう思ったが、「毎年同じ衣装だと子どもたちがすぐに気づいてしまうから、毎年衣装を変えた方がいいのよ」と言われて、それもそうだと納得した。
衣装の色も赤、青、緑と全部違う色だし、杏里なりにちゃんと考えて買ってくれたらしい。
が、杏里に買ってもらったせいで、益々本番の様子を撮って見せなければいけなくなった。
録画ボタンを押し忘れてたとか、由羅の姿がちゃんと映ってなかったとか……
そんな失敗をしたら杏里にずっと恨み言を言われそうだ。
わぁい……責任重大っ!!
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