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両手いっぱいの〇〇 第131話

――そうそう、それで、ここを~ペッタン!」 「ったん!」 「はい、あっという間に~?」 「い~?」 「ハートが出来ました~!」 「お~!」 「上手に折れたな~莉玖!」 「と!」 「うん、はーと!可愛いな!」  今日は2月14日。  オレは朝から莉玖と一緒に折り紙を折って遊んでいた。  細かい部分はオレが折ったり、手を添えて折っていくけれど、出来るところは莉玖に折らせる。  多少不格好でも、制作は楽しむことが一番なので、無闇に手直しをするようなことはしない。  節分の折り紙は難しくてまだ莉玖には無理だったのでほとんどオレが折ったけれど、ハートなら莉玖にも折れる部分が多い。  莉玖も折れたのが嬉しかったのか、ノリノリでいっぱい折ってくれた。 「ハートがいっぱいだな~!これどうする?窓にでも貼っていくか!せっかく莉玖が作ったしな!」 「な~!」  バレンタインだしな!  お昼寝の前に莉玖と一緒に窓にハートをいっぱい貼っていった。     *** 「さてと……晩ご飯の用意するぞ~!」 「おー!」 「今日の晩ご飯は、莉玖も大好きなカレーだぞ~!」 「まんまっ!!」  バレンタインのメニューをどうするかだいぶ悩んだが、いろいろとネットで調べてみてカレーにすることにした。  莉玖も好きだし、アレンジしやすいしな!  お皿に盛り付けていると、電話がなった。 「はい、由羅?帰って来た?」 「ああ、入っても大丈夫か?」 「あ~、ちょっと待って。3分後に入って来い!」 「わかった」  オレは通話を切ると、莉玖を抱いて二階に上がった。  莉玖が由羅の帰宅時に泣くのをどうにかしようと、オレはここ数日めちゃくちゃ考えた。  リビングにいるところに由羅が入って来るのが、鬼が来た時と同じシチュエーションだから怖いのかも。それなら、由羅が先にリビングに入ればいいんじゃないか?  大人からすれば些細に思えることでも、子どもにとってはかなり大きな違いだったりする。  昨日試してみたところ、これが意外と功を奏した。  だから今日も、オレが莉玖を連れて二階に行っている間に由羅にリビングに入ってもらい、オレたちが後からリビングに入ることにしたのだ。 「――あれ、由羅帰ってたのか。おかえり~。ほら、莉玖。パパ帰ってきてるぞ~」 「ぱっぱ?」  莉玖と一緒にリビングに入ると、コートを脱いだ由羅がソファーに腰かけてお茶を飲んでいた。  莉玖は昨日と同じように、一瞬不審そうに由羅を見たものの泣きはせず、一緒の食卓に座っても嫌がらなかった。  よしよし、いい感じだ!! 「急いでご飯用意するからな!」 「綾乃、そんなに焦らなくてもいいぞ~。ところで莉玖、今日は何をして過ごしたんだ?」  二日続けて莉玖が泣かなかったせいか、由羅が機嫌良く莉玖に話しかけた。 「あ、今日はハートをいっぱい作ったぞ」  カレーの盛り付けをしながら、莉玖の代わりに答える。 「ハート?」 「窓にいっぱい貼ってある」 「窓に?どれどれ」 「とー!」 「莉玖、どこにあるのか教えてくれ」 「とー!ぱっぱ!とー!」  由羅が莉玖を抱っこして窓に近付くと、莉玖はハートを貼った窓を一生懸命指差して由羅に知らせていた。 「ここか?ああ、すごいな。いっぱい作ったんだな!」  莉玖が嫌がらずに抱っこされてくれるのも、泣かずに言葉かけにこたえてくれるのも久々なので、かなり嬉しいのだろう。  莉玖に話しかける由羅の声が弾んでいた。 「とー!」 「そうだな、ハートがいっぱいだな。全部莉玖が折ったのか?」 「ほとんど莉玖が折ったよ。オレは細かい部分を折る時にちょっと手を貸しただけ」 「上手に折れているな」 「だろ?さてと、お待たせ~!二人とも席につけ~!」  テーブルにお皿を並べ終えたオレは、パンパンと手を叩いて二人を呼び戻した。 ***

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