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両手いっぱいの〇〇 第135話
『夢じゃないわよ?』
「夢なんだよっっ!!」
翌日、莉奈が朝からうるさかったので、話をするために地下室に下りた。
莉玖とボールで遊びながら、昨夜のことについて莉奈に確認していたのだが……
『そもそも、綾乃くん、はっきり覚えてるじゃない』
「違う!だからこれは夢の話!!」
『ねぇ、それが夢の話だとすると、兄とキスする夢を見たってことになるんだけどそれはいいの?』
「ファッ!?……だだだだめっ!!!よくねぇよ!!」
『うん、まぁ夢じゃないから安心して?』
「だよな!?……よかった~……って、いや、だからっ……!!」
全然良くねぇえええええ!!安心できねぇえええええええ!!
『仕方ないわねぇ、本当は何があったのか話してあげましょうか?まぁほとんどそのまんまだけど』
「そのまんまって……?」
『だから、昨夜は……まだ頭をぶつけてフラフラだった綾乃くんが急にグズり出したから、兄がキスして黙らせたって感じよね~。ちなみに結構長い時間キスしてたわよ?』
長い時間っ!?
どどどどういうこと!?
『綾乃くんもノリノリだったけど?兄の首に腕回しちゃったりして……』
んん?オレが由羅の首に?
「え……それはオレが由羅の首を絞めてたってことか?」
オレが真顔で首を傾げると、莉奈が手刀で頭を叩いてきた。
もちろん、触れられないので莉奈の手はオレの頭をすり抜けたが……
『なんでいきなり物騒な話にしようとしてるのよ!そうじゃなくて、こう、ぎゅ~って抱きついてたってこ……』
莉奈がオレに抱きつく真似をしてきた。
「わあああああああっ!!わーわーわー!!!もういいです!!もういいっ!!オレは何も聞いてないぃいいいい!!」
急にオレが大きな声を出して両耳を塞いだので、伝い歩きでボールを追いかけていた莉玖がビックリしてドスンと尻もちをついた。
「おっと、莉玖~!驚かせてごめん!!大丈夫か~?」
慌てて莉玖に駆け寄ると、莉玖はにこっと笑ってまた伝い歩きを始めた。
うん、たくましい!!
『上手に尻もちついたから大丈夫よ。それにしても……昨夜は「どうせならその先までいっちゃえ!」ってかなり頑張って念じたんだけど、残念ながらまたキス止まりだったわね……私の力もまだまだだわ……』
莉奈が難しい顔をしながら胸の前で腕を組んで、ため息を吐いた。
「は?先って……?」
っつーか、莉奈!お前は一体何を目指してるんだ……!?
変な力を身につけようとすんじゃねぇよ!!
『あ、気にしないで。さてと、そろそろお昼ご飯の時間じゃないの?』
「えっ!もうこんな時間!?ごめんな莉玖、お昼ご飯急いで作るから!」
結局午前中はずっと莉奈との無駄話で終わってしまった……
***
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