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両手いっぱいの〇〇 第137話
わけがわからないままリビングに連れて来られた由羅が、オレの腕を軽く揺すって少しだけ強い口調で宥めて来た。
「おい、綾乃!ちょっと落ち着けっ!何があったんだ?ちゃんと説明を……」
「歩いた!」
「え?何だって?」
「だから、莉玖だよ!!今さっき!!」
「……ほぅ?」
いまいちわかっていない顔で、由羅が軽く首を傾げる。
「あ~もうっ!……だから、今までの伝い歩きじゃなくて、莉玖がひとりで立って足を踏み出したんだよ!!」
くそぉ~!温度差!!
この凄さが伝わらないのがもどかしくて、大袈裟な身振り手振りを交えつつ由羅に伝える。
「あぁ……え?……莉玖がひとりで!?……スゴイじゃないか!!」
ようやく状況を察した由羅が、ちょっと前のめりになった。
「だろ!?まだ一歩だけど。二歩目いきかけたところでお前が電話かけてきたから……」
「それは……すまなかったな」
由羅がなんとも言えない顔でうなじを掻いた。
「あ~……いや、ごめん。それに関してはお前のせいじゃなくてマナーモードにしてなかったオレのせい……まぁ、それは置いといて……なぁ莉玖!パパにも見せてやってくれないか?」
「パッパ?」
「莉玖、パパも見たいな。ひとりで歩けるようになったのか?」
オレがしゃがんで莉玖を床に立たせると、由羅もオレの横でしゃがみ込んだ。
「ほら、莉玖。いっちに!ってしてみせて?」
「だっ!だっ!」
「え、抱っこ?いっちに!はしないのか?」
「あ~の!だっ!」
「ダメか~……」
まぁ、まだ一歩だったしな……
もうそんな気分じゃなくなっちゃったか……
オレが苦笑いをして立ち上がりながら莉玖に両手を伸ばすと、オレの手を目指して莉玖が一歩踏み出した。
「お?」
これはもしや……
チラッと由羅に目配せをしたオレは、手を伸ばしたまま、そっと一歩後ろに下がってみた。
「よ~し、莉玖~!ご飯食べようか!おいで!」
「ん~まっ……まんまっ!!」
「うんうん、ご飯食べるぞ~!」
「あ~の!だっ!だっ!」
「よし、抱っこしようか!」
抱っこすると言いながらなかなか抱っこしようとしないオレに若干焦 れて、必死に手を伸ばしていた莉玖が反対の足も前に出した。
「おお!?」
そのままオレの手に倒れ込んで来たので、三歩目は見られなかったが、一応右足左足と二歩前に進むことができた。
「や~~ったね!莉玖!!二歩進んだじゃねぇか!!由羅!見たか!?」
「ああ、見た。凄いな、莉玖~!」
由羅が莉玖を抱き上げて高い高いをした。
最初はポカンとしていた莉玖だったが、オレと由羅があまりにもスゴイスゴイと褒めるので、わからないなりに莉玖も一緒になってキャッキャと喜んでいた。
『やった~!莉玖すご~い!』
莉奈も隣でピョンピョン跳ねながら喜んでいた。
ははは、幽霊って……跳ねられるんだな……
***
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