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両手いっぱいの〇〇 第145話

「よ~し、莉玖、キレイになったぞ~!スッキリしたな!……って、ぐっすりですよね~……ちょっとごめんな~?」  オレは莉玖のオムツを替えると、そっと背中を確認した。  バシバシ叩かれていたので手形がついていないかと心配したのだが、少し赤くなってはいたものの、青痣が出来る程ではなさそうだ。  厚手の冬服を着ていたおかげで、少し軽減されたのかもしれない。   「いっぱい着せておいて良かった……」  オレは服を着せて莉玖を抱っこすると、小声で子守歌を歌った。  莉玖が怖い夢を見ませんように。  それにしても……由羅遅いな……何の話してんだろ……?  由羅は「わかってる」って言ってたけど……  オレ、勝手にあの女が嘘をついてることがわかってるって意味だと思ってちょっと安心してたけど、そうじゃなかったのか?  今頃あの女がまた嘘を並び立ててるのかな……  あの女……オレを保育園から追い出したモンペとそっくりだ。  自分のことを棚に上げて、全部オレのせいにして、あることないこと言いふらして……    どうせ由羅もあの女に言いくるめられてんだろうな~……    オレがあの女を生垣に突っ込ませたのだけは本当だ。  それにはちゃんと理由があるし、莉玖が泣いていたのも理由がある。  だけど、オレなんかが言っても信じてもらえないんだよな……  子どもの頃から、どんなに悪質ないじめにあっても、どんなに先に手を出して来たのは向こうだと言っても、周りはオレの話しなんか聞いてくれなくて、「お前は我慢が出来ないやつだから」「親が夜職だから」「ケンカっぱやいから」……と全部オレのせいにされた。  だから、別にもうこんなの慣れてるけど……  由羅には信じてもらいたかったな……   ***    それからしばらくして、由羅が来た。   「すまない、少し遅くなったな。オムツは?」 「もう替えた」 「そうか、ありがとう」  由羅は何事もなかったかのように、普段通りの顔で話す。  あの女はどうなったんだろう…… 「……あの女は?」 「服のクリーニング代とタクシー代もつけてタクシーに放り込んで来た」 「そか……あの、由羅?」 「何だ?」    莉玖の顔を覗き込んでいた由羅が目線だけオレに向けた。  由羅はあの女から何を聞いたんだろう……  もうどうでもいいけど…… 「……あの、勝手に覗き見してたことは謝る。すみませんでした!でも、お前があの女から何を聞いたのかは知らねぇけど、あの女を突き飛ばしたことに関してはオレ謝らねぇから!どうせ理由は言っても信じてもらえねぇだろうから言わねぇけど、ただ、最後に莉玖のベビーシッターとして言わせてもらうなら、オレはあの女は莉玖の母親には向いてないと思う。どうするかはお前次第だけど……それじゃオレ先帰って荷物まとめるから!今までお世話になりました!」  オレは由羅に莉玖を渡し、早口で言いたいことをまくし立てて頭を下げた。   「綾乃、ちょっと待て!」  部屋から出て行こうとすると、由羅に腕を掴まれた。 「なんだよ?オレは絶対謝らねぇぞ!?だって、オレ間違ったことしてねぇもん!!」  そりゃ生垣に突っ込ませたのは暴力だと言われるかもしれねぇけど、オレはちょっとポンって押しただけだし、後はあの女が勝手に突っ込んでいったんだし…… 「それはわかってると言っただろう!?」 「……え?」 「せっかく計画通りにいったのに、さっきから何を言っているんだ?なぜ荷物をまとめる?最後ってどういうことだ?」  ん?計画? 「え、待って、由羅。計画って何だ?」 「ん?だから、今日の計画だが?」 「今日の計画……って?」 「莉玖に会わせるのは、彼女に私をの計画だ、って話しただろう?」 「諦めさせる……?え?」  じゃあ、由羅はあの女と付き合う気は最初からなかったってこと?  しかも、そのために莉玖に会わせるって……  いやいやいや、全然わからねぇっ!!  一体どういうことなんだよ!?  オレは話の展開についていけず、頭を抱えてしゃがみ込んだ―― ***

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