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両手いっぱいの〇〇 第147話

「まったく、あいつ一体何考えてんだよっ!」  帰宅して洗濯機に残ったままの洗濯物を見て崩れ落ちたオレを見て、由羅がコインランドリーに連れてきてくれたのはいいのだが、待っている間、由羅は莉玖を連れてどこかへ行ってしまった。   『綾乃くんも一緒について行けばいいじゃないの。これ乾燥までしてくれるやつでしょ?終わる頃に戻れば大丈夫よ?』 「そりゃそうだけど、洗濯物を干し忘れてたのはオレのミスだし、それにコインランドリーって、たまにイタズラするやつとかもいるって聞くから、ちゃんとついてないと何か不安で……って、何でお前がここにいるんだよ!莉玖について行けよ!」 『今は兄と一緒にいるってわかってるんだから大丈夫よ。それにまだそんなに遠くには行ってないみたいだし』  緩い守護霊だなぁおい。  莉奈は以前、一定の範囲内なら莉玖から離れていても、莉玖の様子がわかるようなことを言ってたけど…… 「別に由羅たちがどこに行ったのかはどうでもいい。一緒について行きたかったわけじゃねぇし。オレが怒ってんのは、今回のことだよ!っつーか、莉奈は由羅の計画知ってたんだろ?何で止めなかったんだよ!?」 『私に兄を止めるなんて出来るわけないじゃないの。兄は私の存在に気付いてないんだから』  急にまともな反論してくんなっつーの! 「ん゛~~~……そうだけど、オレに言えばいいだろ!?お前、全然オレにあいつを止めてくれとか言わなかったじゃないか!」 『まぁ、莉玖を使うっていうのは私も正直どうかと思ったけど、兄ってほら、ちょっとズレてるじゃない?綾乃くんと莉玖のおかげでだいぶ人間らしくなったけど、なんだかんだで祖父の影響を受けてるから、使える物は使う主義っていうか……』 「だからって……」 『それに、今回のは兄もかなり参ってるみたいだったから、あれでもだいぶ悩んで出した苦肉の策だったみたいだし……』  苦肉の策がアレって……それはそれでヤバいだろ…… 「……で、莉奈の本音は?」 『まぁ、兄もついてるし、綾乃くんも一緒に連れて行けば、きっと何があっても莉玖を守ってくれるだろうから大丈夫でしょ!ってね?』  莉奈が得意気に胸を張った。  だからオレを連れ出したのか……  そうだ……ズレてるのは莉奈もだった!  って、考えてみたら、洗濯物を干し忘れてたのって、莉奈に無理やり連れ出されたせいじゃねぇか……! 「あのさぁ、莉玖の守護霊はお前だろう?オレも出来る限り莉玖を守るけど、お前が守りきれないようなことなら、事前に防ごうぜ……頼むから……」 『そうね、今度こういうことがあれば、莉玖に会わせる前に私がこの目で相手の女をチェックすることにするわ!』  莉奈さ~ん、そういう問題じゃないで~す! 「あはは……」  ……もういいや。  親である莉奈と由羅がそれでいいって言うならオレは何も言えねぇよな……  今回のはちゃんと話を聞いてなかったオレも悪いし、そもそも、由羅がすぐ傍でちゃんと見ていたんだから、オレが飛び出す必要なんてなかったんだ。  オレがあの場にいる意味なんて別になかった……  あ~~もう、オレ何やってんだ、マヌケだなぁ……  オレが長いため息を吐いて俯いた時、携帯が鳴った。  由羅かと思ったのだが、画面に出た名前は懐かしい名前だった。 『あら、兄さんから?』 「いや、幼馴染だ。もしもし?久しぶりだな!――」 ***

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