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両手いっぱいの〇〇 第149話
「――えっ!?メイちゃん告白されたの!?」
「ま、まぁな……」
***
――由羅弄りに飽きた紀子 と紗希 が恋バナとやらを始めて、男連中も巻き込まれた。
順に最近の恋愛事情を話していく。
何気にみんな彼女がいたり、別れたりとそれぞれの恋模様があって、惚気 たり慰めたりと盛り上がっていた。
そんな中、
「次はメイちゃん……あ、ごめん。メイちゃんはいないよね~」
「メイ兄はいないでしょ~。いつも好きな子が出来ても告白する前に撃沈してるもんね」
「失恋数だけは俺らの中でトップじゃね?」
オレの番になるなり、みんなが憐みの目で見てきた。
そりゃたしかに、撃沈しまくってたけど……それは学生時代の話しだ。
オレだってもう社会人なんだから、浮いた話のひとつやふたつ……あるかもしれないとか思ってくれてもいいんじゃねぇの!?ないけどっっ!!
幼馴染たちに全然期待されていないことが悔しくて、思わず……
「オレだってなぁ、告白されることくらいあんだよっ!!」
と叫んでいた。
言ってから、しまった!と思った。
嘘ではない。
告白はされた。
でも相手が問題だ……
まさか相手が男で、しかもさっきまでこいつらが弄りまくっていた、ひとつ屋根の下に暮らす雇い主だなんて言ったら……絶対またよくわからない話を作って悪ノリする……
「え~、メイちゃん、子どもはカウントに入らないんだよ~?」
「メイちゃんは子どもにはモテるもんな~」
「うっせぇな!子どもじゃねぇし!」
詳しく聞かれると困るのは自分なのに、あまりにもバカにされるのでついつい言い返してしまう。
「え!?子どもじゃねぇの!?」
「年下?何歳?可愛い?」
「え?えっと……と、年上……」
可愛……くはねぇな。
「えええええ!?」
「あ~、メイちゃんちっこいから、年上からすれば可愛く見えるのかな……?」
「メイちゃんは年上キラーだったのか~!」
「ねぇ、メイちゃん、それって夢の話しじゃないよね?」
「夢なんかじゃねぇよ!こら、リョウ!熱を測ろうとすんな!」
真剣な顔でオレの額に手をあてて来る亮 の手をペチンと叩く。
「いや、熱のせいで幻聴でも聴いたのかと……」
「オレはすこぶる元気です!!」
「彼女の写真とかないの?」
「見たい見たい!」
「え、写真!?な、ない!っつーか彼女じゃねぇし……」
一応、携帯には由羅と莉玖と三人で撮った写真が数枚入ってはいるが、見せるわけにはいかないし……そもそも、由羅とは……
「付き合ってはねぇから」
オレの言葉を聞いて、一瞬にして場が静まり返った。
「……え?どういうこと?だって告白されたんでしょ?」
「まさか断ったの!?」
「メイちゃんが告白されるなんて、最初で最後かもしれねぇのに!?」
「お前ら、オレのこと何だと思ってんだ……」
「付き合えないってことは、もしかして旦那がいるとか?」
「メイちゃん……不倫はダメだよ不倫は!」
「なんでそうなるんだよっ!?不倫じゃねぇし!相手も独身だっつーの!」
だいたい、オレが断ったっていうか、好きだけど付き合いたいわけじゃないって言ったのはあいつだし、でもあいつはその後も好きだとは言ってくるし……なんかオレが恋人になりたいなら恋人になってもいい、みたいなことは言って……あれ?よく考えてみたら、あいつの方から告白してきたのに何であいつの方が主導権握ってんの?おかしくね?あいつの方から恋人になって下さいって言ってくるべきじゃね!?
「メイちゃん、それって、遊ばれてんじゃないの?」
「ほら、“好き”にもいろいろあるじゃん?紗希たちだってメイ兄のこと好きだし」
紗希と紀子がオレの頭をよしよしと撫でて来た。
「俺もメイちゃん好きだぞ」
「あ、じゃあ俺も~」
「だから、もしかして、その人が言う“好き”も、こう……ちっちゃくて動きが面白いから好きとか、からかうと面白いから好きとか……」
「遊ばれて……んのかな……」
由羅にはしょっちゅうからかわれる。
こいつらが言うようにオレの反応を見て楽しんでるだけってこともあると思う。
あ、そうか。オレが家政夫とベビーシッターをしてくれるから便利で好きってことなのかな?
「……っ」
自分の考えになんだか虚しくなった。
別に、あいつが本当にオレのことを好きかどうかなんてどうでもいいけど!?
オレはぐちゃぐちゃ考えるのがイヤになって、目の前のグラスに手を伸ばした。
「あっ……メイちゃんそれ俺の……ウーロンハイぃ~~……なんだけど~~……」
「バカッ!メイ飲むなっ!」
「ふぇ?」
オレの右隣にいた希一 の言葉を聞いて、左隣の亮が止めようと手を伸ばした時には、もうオレは飲み干していた。
え?ウーロン茶じゃねぇの?ウーロンハイって……お酒?
……と思った次の瞬間、ぐるりと視界が回った。
「あ~~もう!メイちゃん弱いんだからあんまり一気に飲むなよ~!」
「これくりゃ~い、ら~いじょ~ぶらって……」
「大丈夫なやつはひっくり返ったりしねぇんだよ!」
「あははは」
文句をいいながらも、亮は後ろに倒れかけたオレの肩を支えて水を飲ませてくれた。
リョウってこんなに面倒見良かったっけな……
昔は何でもオレに頼って来てたのにな~……
「ったく、仕方ねぇなぁ、ちょっと寝てろ」
「ふぁ~い」
オレは亮の膝に頭を乗せて目を閉じた。
あ~ふわふわする……
***
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