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両手いっぱいの〇〇 第150話
「メイちゃ~ん、もう帰るよ~!お~い!」
「ん~……」
「ダメだこれ、朝まで起きないわ」
「でも、今メイちゃんって住み込みなんだよな?誰か、メイちゃんが働いてる家の住所知ってるか?」
「知るわけねぇだろ。お~い、メイちゃん、起きろって!せめて住所教えて~!どこに帰るんだ?」
「んぇ~?むりぃ~……のんらら~、ゆらんとこ……かえれにゃ……い……」
何となくみんなの声は聞こえていたので、オレは自分ではちゃんと答えていたつもりだった。
酔っぱらった状態じゃ帰れねぇ……
オレ適当に酔い冷まして帰るから、お前ら先に帰っていいよ……
「何言ってんのか全然わかんねぇな」
「いいよ、俺の家に連れて帰る。メイちゃん、最初は住み込みだから酒飲めねぇって言ってたくらいだし、こんな状態で帰したらもしかしたらクビになっちゃうかもしれねぇだろ?」
「まぁここからならリョウちゃんの家が一番近いか?んじゃリョウちゃん頼むわ」
オレをどうするかが決まって、みんなで勘定を割り勘していた時に誰かの携帯が鳴った。
「あれ、何か携帯鳴ってない?これメイちゃんのじゃ……ちょ、由羅ってもしかして例の雇い主じゃないの!?」
「ちょっとのんちゃんかして!?ねぇ紗希 が出てもいい!?っていうか、出なきゃヤバいよね?」
「あ、待てさっちゃ……」
「もしも~し?……あ、そうです。メイ兄の携帯ですよ~?……あ~……えっと~、メイ兄は今出られないですね~。え?何してるって……酔っ払ってリョウちゃんの膝枕で寝てますけ……モゴッ」
「おいいいい!!」
馬鹿正直にオレの状態を話す紗希の口を保津 たちが塞ぐ。
紗希から携帯を奪った亮 が代わりに電話に出た。
「もしもし?あ~えっと、うちのメイがお世話になってます。メイは今日は具合悪いのでこのまま俺の家に泊まらせます。え?あ、俺は幼馴染です。たしかメイは明日も休みのはずですよね?明日中にそっちに戻れば問題ないでしょ?それじゃ!」
亮は一方的に言うと、さっさと通話を終了した。
オレの休日は由羅の仕事次第だから、保津 から飲み会の連絡が来た時、正直飲み会に参加するのは無理だろうなと思いつつ由羅に相談した。
由羅は、オレが友達と飲みに行くということに驚いていたものの、ダメだとは言わず、二日間休みを取れるように都合をつけてくれた。
あいつ、あんなに驚いてたってことは、ホントにオレには友達がいないと思ってたのかな……
***
「お疲れ~」
「のんちゃんは旦那が迎えに来るのか?」
「うん、もう来てるはず~……あ、いたいた。それじゃさっちゃんも連れて帰るわ」
「さっちゃんはまたのんちゃんの家に入り浸ってんのかよ」
「いいじゃんか~。おチビちゃんたちの面倒見てるんだもん!」
「もううちの長女みたいになってるわよ」
「リョウちゃんはメイちゃんよろしく~」
「はいよ――」
「綾乃!!」
店の外に出てわいわい言っていると、どこかから聞き覚えのある声がした。
幼馴染たちが一斉に声のした方を見る。
「え、誰!?知り合い?」
「知らねぇよ……あ、もしかして……」
「悪の組織の……じゃなくて、メイちゃんの雇い主の……」
「「由羅っ!!」」
幼馴染たちに声を揃えて呼ばれたので、由羅がちょっと顔をしかめた。
「んぇ?」
「あ、メイちゃん、あれって例の由羅とか言う人?」
「あ~……ゆらぁ?」
声がした方を見ようとしたが、なぜか由羅が分裂して見えてどこを見ればいいのかわからない。
こら由羅、なんで分身の術なんて使ってんだよ。目が回るだろっ!?
「まったく……綾乃、どれだけ飲んだんだ?」
「あんた誰だよ?何しに来たんだ?」
由羅が亮におんぶされていたオレに触れようとした瞬間、亮がサッと身体を半回転させて由羅の手を避けた。
ちょ、リョウ……急に動くなっ!吐いちゃうだろ!?
ぅ゛~~……ぎぼぢわ゛る゛い~
***
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