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両手いっぱいの〇〇 第163話
由羅の話しだと、オレは幼馴染との飲み会ではどうやらウーロン茶と間違えてウーロンハイを一気飲みしたせいでひっくり返ったらしい。
お酒は一気飲みしちゃいけません!!
特に弱いオレみたいなのは……
というわけで、ワインはちびちびと舐めていたのだけれども、グラスに半分程注がれていたワインが3分の2ほどになったあたりから、何となくふわふわし始めた。
ほんのり酔っ払った状態で由羅と他愛もない話をする。
こういう時間は心地良い。
「う~ん、オレもワインの開け方覚えようかな」
「なぜだ?」
「え?」
「ワインが飲みたければ私が開けてやるぞ?」
「いや、飲むっていうか、いつかワイン煮とかしてみようかなって……」
先ほど苦し紛れの言い訳で出た言葉だったが、改めて考えてみるとたしかに今までそういうお洒落な料理は作ってみようともしてなかったな~と気づいた。
莉玖にはもっとシンプルな味付けの方がいいので、まだ作るつもりはないけれど。
でも……もしかしたらこの先、こういう家政夫兼ベビーシッターの仕事って他にも見つかるかもだし、その時にはもっと料理のレパートリーがあった方がいいよな……
「――だから、作る時には私が開けてやると言っている」
「そうだけど、作りたい時にお前がいるわけじゃないだろ?」
そもそも、この家にいる間に作るとは限らねぇし……
「私がいる時に作ればいいだろう?」
「……そうだな、お前がいる時に練習してみるのもいいか。開け方教えてく……」
「イヤだ!」
食い気味の由羅にちょっと驚く。
そんな全力で拒否するかっ!?
「な、なんでだよ!?」
「私が開ける。綾乃はコルクをボロボロにしそうだ」
「それはやってみなきゃわかんねぇだろ~?」
こいつの中でオレってそんな不器用なの?まぁオレもボロボロにしそうな気はするけど……
「……綾乃が開けられるようになれば、私は必要なくなるだろう?」
「え?まぁ、わざわざお前に開けてもらう必要は……なくなるよな?」
「だから、ダメだ」
「え~~……」
ちょっと何言ってるのかわからないんですが……
あ~、なんか眠くなってきた……
由羅が何を言いたいのかわからなくてテーブルに突っ伏したオレは、そのまま目を閉じた。
「……」
「綾乃?もしかしてもう酔ったのか?」
オレの頭を由羅が撫でる。
こいつの手気持ち良いんだよな……
でも……
「よってねぇぉ!」
ガバッと起き上がって由羅の手を叩いた。
撫でんなっ!寝ちゃうだろ!?
「グラスに半分も入れてないんだが……」
「よってねぇっつってんらろ!」
「呂律が怪しいぞ?」
「ん゛~~……みじゅ……」
「はいはい。……ほら」
オレは由羅が入れてくれた水を飲んで、立ち上がった。
「よしっ!ねる!おやしゅみ~」
「おい、綾乃!?危ない!」
「だいじょ~ぶ!まらよってない!」
「どこがだ……まっすぐ歩けてないぞ」
「あるいてるっつーの!」
「おい、どこに行くんだ?寝室はそっちじゃないぞ?」
「はみがき!」
「ああ……酔っててもそういうところは律儀だな」
由羅がため息を吐きつつ、後ろからついて来る。
「なんでついてくるんだよっ!?」
「ちょうど私も歯磨きをしようと思っただけだ」
「ふ~ん?」
「おい、フラフラしながら歯を磨くな!危ない!」
「ふらふらしてねぇし!」
いちいちうるせぇな~……
おまえはオレの母ちゃんかっ!
***
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