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両手いっぱいの〇〇 第173話
どうしてこうなった……?
オレは幼馴染にちょっと弱音を吐いていただけなのに……
「……ゲホッ……喉はダメだろ……っ!!」
「ふんっ!」
オレは隣で咳き込んでいる亮の背中を一発バシッと叩いた。
オレが亮から逃れようと無我夢中で胸を叩いた時に、ちょっと手がずれて亮の喉に当たったらしい。
「ぅぐっ!……ちょ、メイちゃん酷いよ!そこは優しく撫でるとこだろ!?」
「あ、悪い、オレも撫でるつもりだったんだけど思わず手が……」
「ゲホッ……なにそれぇ~~……」
「あぁ、ほら、大丈夫か?喉に当たったのは謝るよ。ごめん……でも、お前が悪ふざけするのが悪いんだからな!?」
「ふざけてなんかねぇよ!だってメイちゃんは……」
「オレがなんだよ?」
「だって、メイちゃんは俺のお嫁さんだろ!?」
「……へ?」
ポカンとした顔……というのはきっと、今のオレみたいなのを言うんだろうな……
オレはマヌケ面のまま、とんでもないことを言い出した幼馴染の顔を見た。
冗談……だよな……?
何とか笑って流そうかと思ったが亮の顔が大真面目だったので、オレはまた笑いを引っ込めた。
「俺は子どもの頃からずっと、大きくなったらメイちゃんをお嫁さんにするって言ってただろ!?メイちゃんだって、待ってるって言ってたじゃねぇか!!」
「あ~~……えっと~……ええっ!?」
オレは思わず頭を抱えた。
たしかに、亮は子どもの頃からよく「大きくなったら俺がメイちゃんをお嫁さんにもらうから!」と言っていた。
オレも子どもだったし、年下の亮がちょっと背伸びして言っているのが可愛くて、毎回「ありがとな。楽しみに待ってるよ!」って……軽く答えていた。
だけど……
「ちょっと待てっ!あれはガキの頃の話しだろう!?」
子どもは、深い意味などわからなくても、覚えたての言葉を使ってみたくて「〇〇くんがすき」とか、「○○ちゃんとけっこんする~」とか、簡単に口にする。
オレだって、前の職場では子どもたちに「あやせんせいとけっこんする~」って言ってもらったことあるし!!
でも、その気持ちはコロコロ変わっていくもので、翌日には他の子に同じことを言っているなんてザラにある。大丈夫、オレ、ナイテナイ……
おっと、話が逸れた。
えっと、だから亮のあの言葉も子どもの他愛もない会話っていうか……
「俺はずっとメイちゃん一筋だったけど?」
「嘘つけ!お前モテるじゃねぇか!この間の飲み会でも、彼女と別れたばっかりって……」
「そりゃ一応彼女がいたことはあるけど、この間のはただの同僚とたまたま一緒に飯食ってたところを保津 に見られて、んで、彼女だと勘違いされたってだけだよ」
「……で、でも彼女がいたことはあるんだろ?」
「高校の時に一週間だけな。だっていくら告白してもメイちゃんは全然相手にしてくれないし……だからお試しで……」
一週間!?お試し?どういうこと?リョウは別にその子のこと好きじゃなかったってことか?
「告白されたから一応付き合ってみただけだよ。クラスメイトだったんだけど、女の子の中では一番仲が良かったかな。でも、一緒にいて楽しくないわけじゃないけど、それはさっちゃんとか、のんちゃんといる時と同じような感じの楽しさで、恋愛対象とは違うかなって……女の子と付き合ってみれば何か変わるかもって思ったけど、やっぱり一番好きだなって思うのはメイちゃんなんだよね……」
「はあ!?」
『あらやだ、この子もだいぶ拗 らせてるわねぇ~!』
「莉っ!?」
突然亮の背後に莉奈が現れたので、思わず叫びそうになって慌てて口を押えた。
***
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