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両手いっぱいの〇〇 第175話

 由羅と亮……どっちも男だし、変わりはない……と思ったけど…… 『何か違いがあった?』  莉奈が顔を覗き込んできた。 「違いっつーか……ぅわっ!近い!」  びっくりするからドアップは止めてくれっ!  性格はともかくとして、莉奈は結構美人で可愛らしい顔をしている。  幽霊だとわかっていても、女性のドアップに免疫のないオレは……ちょっと照れる……  莉奈から目を逸らしつつ、莉奈の質問について考えた。 「リョウは……」  亮はずっと可愛い弟みたいな存在だったから、まさかキスされるとは思ってもなくて、びっくりした……  ガキの頃とかは幼馴染たちと抱きついたり頬にキスしたりはよくあったし、さっきも別に亮にキスをされて気持ち悪いとは思わなかったけど、でも……舌を入れられそうになった時には……ちょっと……気持ち悪いと思った…… 『じゃあ、兄の時は?』 「由羅は……あいつはいつも突然してくるし……何考えてんのかわかんないし……でも、あいつのキスが嫌だと思ったことは……なかった……と思う」 『ふんふん、それってつまりぃ~~?』  つまり…… 「リョウはキスが下手!?」 『何でそうなるのよ!?』 「え?だって、由羅にキスされると気持ちいいけど、リョウのは気持ち悪かったってことは、下手だからじゃねぇの?」 『そりゃそうかもしれないけどぉ~~……でもいくら上手くても、好意を持ってなけりゃ気持ち悪いって思うんじゃないの?』 「好意?」 『兄が綾乃くんのことが好きなのは知ってるでしょ?で、綾乃くんも兄のことを好きだと思ってるからキスが気持ち良かったのよ』 「え、でもオレはリョウだって好きだぞ?」 『だ~か~ら~……好きの種類が違うのよ!あ~もう、全く!これだから童貞は!』 「今それ関係あるのか!?」  なんかオレめちゃくちゃディスられてねぇか!?  そりゃ童貞ですけどっ!! 『とにかく、上手いか下手かは関係ないのよ!じゃあ、リョウくんにもう一回キスして欲しいって思う?』 「え?それは……思わねぇけど……」 『でしょ?だからね……』  【莉奈様の恋愛講座】が始まりそうな雰囲気を、ドンドンという大きなノック音がぶった切った。 「メイちゃ~ん?大丈夫か?なぁ、お腹痛いのか?薬飲む?俺買って来ようか?」  トイレに逃げ込んでから莉奈と話し込んでしまっていたので、気が付くと20分近く経っていたらしい。 「あ、いや、だ、大丈夫!もう出るからっ!」 「そう?いや、別に急がなくてもいいけど……」 「大丈夫!もう出……あ、待って、だいじょばない!!」    そうだ、ここはとりあえず、腹が痛いと言うことにして…… 「どっちだよ!?」 「ごめん、だいじょばない……から……あの……今日は帰ってくれない?」 「……え?メイちゃん、俺浣腸買って来ようか!?」 「なんでそうなるんだよ!!」 「いや、詰まってんのかと……」 「そうじゃねぇけど、お腹痛いからっ!」 「痔かっ!?」 「腹だっつってんだろっ!!」 「あ、そうか。じゃあ痛み止めがいい?」 「だ、大丈夫!薬はマジで大丈夫だからっ!」  くそっ!リョウがいい子すぎるっ!!  ちょっとズレてるけど……!   『あらまぁ、この子すごい心配してくれるじゃないの。顔もいいし、優しいし、いい男なのよね~……これで拗らせてなきゃ文句ないんだけど……あれだ。残念なイケメンってやつ?』  莉奈さん、ちょっとお黙り下さい!! 「……メイちゃん、じゃあ、俺帰るけど……本当に大丈夫?何かあったらすぐに連絡してこいよ!?」 「うんうん、ありがと!大丈夫だ!また連絡するから!」 「なぁ、ホントに痛み止めなくても大丈夫?」 「大丈夫です!!……あっ、リョウ!」 「ん?」 「あの……ごめんな、せっかく来てくれたのに……」 「気にしなくていいよ。バイクだと近いしな。それより……さっきの話し、考えておいて?」 「えっ!?あ、ああ、うん……わかった……」  亮はオレを心配しつつも最後にしっかりと釘を刺して、帰って行った。 ***

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