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両手いっぱいの〇〇 第177話

 翌日……。  今日は何が何でも二人とも寝かしつけてから帰ってやる!  ……と意気込んでいたオレは、莉玖と二人で寝ていた。  なぜなら……   *** 「――え、あの……杏里さん、もう一度……」 「だから、響一が仕事中に倒れたのよ!今そっちに向かってるから、一緒に病院に行きましょう!」 「あ……はい……」  ちょっと慌てた声の杏里から電話があったのは、晩飯を食べ終わって、莉玖を風呂に入れようとしていた時だった。  混乱して一瞬固まったが、オレも莉玖も素っ裸だったので慌てて服を着た。  病院……えっと……何を持って行けばいいんだ!?   「あ~の~!たぁっぷ、たぁっぷ~!」  お風呂に入れると思って喜んでいた莉玖が、また服を着せられたので手をブンブン振り、ちょっと口唇を尖らせて、ぶ~!と不満の声を漏らした。 「あ、莉玖、ごめんな。お風呂は後でちゃんと入ろうな!ちょっとこれからお出かけしなきゃいけなくなったんだよ」  えっと……病院……あ、莉玖のおでかけセット持って行かねぇと……あと……由羅の保険証……は、由羅が自分で持ってるか。  由羅がどこの病院に運ばれたのか、入院するのか、すぐに帰って来られるのか、そもそも何で倒れたのか、何もわからない……  どうしよう……倒れたってなんで……!? 『綾乃くん、落ち着いて!』 「んなこと言われても……なぁ、由羅の様子とかわかんねぇか?」 『莉玖のことは離れていてもわかるけど、兄さんのことは……せめて病院がわかれば様子を見に行けるかもしれないけど……』 「そっかぁ……そうだよな……」  パニクって莉玖を抱っこしたままウロウロしていると、杏里がやって来た。 「綾乃ちゃん、用意出来てる~?」 「あの、杏里さん、何か持っていくものとかってあります?オレ、何を用意すればいいのかわからなくて……」 「え?あぁ、そうね……響一が入院するかはまだわからないから、とにかく行ってみて、もし必要なら取りに戻りましょうか。だから、今は莉玖のおでかけセットを持っていれば大丈夫よ」 「はい!」  病院へと向かう車内で、杏里が知っていることを教えてくれた。  と言っても、杏里も由羅の部下から「会議中に倒れて救急搬送された」としか聞いていないので、どういう状態なのかはわからないのだとか。  因みに、由羅の緊急連絡先が杏里になっていたので杏里の方に連絡が入ったらしい。  それを聞いた時、一瞬……ほんの一瞬だけ、オレが莉玖と家にいるのになんで……オレに連絡してこないんだよ?……と思ってしまった。  いや、杏里は実の姉だし、オレはただの家政夫だから……当然と言えば当然なんだけど……  それに、今は杏里が一緒にいてくれるのが心強い。  オレだけだと……どうすればいいのかわからないし…… ***

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