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両手いっぱいの〇〇 第201話
「ぐっすりだな」
ベビーベッドの上で大の字に寝転び、オレにされるがままになっている莉玖に由羅が苦笑する。
「もうお風呂に入ってる時もほとんど夢の中だったしな。いっぱい遊んだから疲れたんだろ」
オレも苦笑しつつ、完全に寝落ちしている莉玖の身体を手早く拭いて服を着せると、タオルケットをお腹に被せた。
「おやすみ、莉玖」
莉玖のお腹をポンポンと撫でると、モニターをセットして二人でそっと部屋を出た。
莉玖は夕食の途中からもう寝落ち寸前だったので、とにかく二人がかりで急いでお風呂に入れて寝かしつけたのだ。
***
昼間遊びに行った公園で、オレが昨年担任していた健太郎 とその母親に会った。
懐かしくて話に夢中になっていると、オレが抱っこしていた健太郎の背中に弾丸のごとく莉玖が高速ハイハイで突撃してきた。
びっくりした健太郎が号泣するわ、莉玖が暴れて泣き叫ぶわで一時大騒ぎだったが、莉玖は健太郎の母親が引きはがしてくれて、その後ようやく莉玖に追いついて来た由羅に回収され、健太郎も何とか泣き止むことが出来た。
由羅の話しでは、その数分前、水遊びに夢中になっていたはずの莉玖が、オレが健太郎を抱っこしていることに気付いた途端、慌ててオレのところに来ようとしたらしい。
遊んでいた場所とは違う方向から来たのは……歩いてこようとして足がもつれて転んだ莉玖が、坂をコロコロ転がっていってしまったせいなのだとか。
そんな漫画みたいなことあるか!?と思うが、あるんだなこれが……
芝生の上だったし由羅がすぐに摑まえたのでケガはないが、由羅の手を振り切って体勢をハイハイに変えた莉玖は、今度は坂が緩い方から少し遠回りをしてオレのところにやって来たらしい。
慌てているわりに意外と冷静だな……そういうところ、何となく由羅っぽさを感じるぞ……?血の繋がりはないはずだけど、やっぱり親子だな~と言いたくなる。
莉玖たちとの関係を説明し、莉玖が突撃してきた時の状況を聞いた健太郎の母親は、
「なるほど、つまり……莉玖くんは健太郎に嫉妬したのね!綾乃先生を取られると思ったんだ!ごめんね、莉玖くん。驚かせちゃったね」
と、ニコニコして莉玖の頭を撫でた。
莉玖は健太郎に敵意むき出しだったが、オレが莉玖を抱っこすると少し落ち着いて、
「莉玖、健太郎お兄ちゃんにドーンしてごめんねは?」
と促すと、ペコリと頭を下げた。
「いいよ~、ゆるしてあげる。なかなおりしようか!」
「お?けんちゃん優しいな~!」
「だって、まだあかちゃんだからね。ぼくのほうがおにいちゃんだから!」
昨年は自分より年下の子とも対等におもちゃの取り合いをしていた健太郎がそんなことを言えるようになったことに感激して、思わず目が潤む。
母親を見ると同じことを考えていたらしく、鼻をすすりながら嬉しそうに頷いていた。
「そうだな!もうお兄ちゃんだもんな!莉玖、ほら、お兄ちゃんが仲直りしようって。おてて握手って!」
「あ~ちゅ!」
「あ~く~しゅ!」
仲直りの握手をした後、なぜか莉玖と健太郎は気が合ったらしく、健太郎が一緒に遊びたいと言いだした。
莉玖も健太郎に懐いたので、どうせここにいる目的は同じだからということで、一緒に遊ぶことになった。
健太郎は朱羽 と同い年だ。
莉玖は一路や朱羽以外のお兄ちゃんに遊んでもらう機会は滅多にないので、かなりテンションが上がっていた。
***
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