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両手いっぱいの〇〇 第207話

「えっと、とりあえず、話戻すぞ?リョウは何しに来たんだっけ?」 「だから――……」  亮が来た理由を聞いて、オレは首を傾げた。  気になることはあるが、まずは…… 「えっとな、リョウ。実はあの翌日に……」  由羅が疲労で倒れて胃潰瘍になったので、つい最近まで由羅の家に泊まりこんでいたことを話した。  それと……なんだかんだで由羅とは両想いだということも……   「はああああああああああ!?だって、そいつがメイちゃんを泣かせて家から追い出したんだろ!?」  亮が叫んだ。 「ちょっとリョウ!莉玖が起きる!声抑えろ!」  オレと由羅が慌てて両側から亮の口を押さえた。 「もごっ!……ご、ごめん……いや一体どういうことだよ!?」 「どういうことっつーか……オレもよくわかんねぇけど……」 「じゃあ、メイちゃんはそいつと付き合ってんの?」 「いや、別に?」 「……は?」 「付き合ってるわけじゃない。けど、嫌いじゃない。前はその、オレが中途半端な相談しちゃったせいでリョウに変な誤解させちゃったみたいだけど……別にオレは由羅が嫌いなわけでも、仕事を辞めたいわけでもなくて……」 「え~と……待って、メイちゃん?それって、両想いとは言わねぇんじゃねぇの?いや、別に付き合ってなくてもお互いに好きなら両想い?」  亮がぶつぶつ言いながら首を傾げる。 「ん?」 「メイちゃん俺らのことも好きだろ?」 「うん、好きだぞ?」 「俺もメイちゃんが好き。それと一緒だよな?つまり俺とも両想いってことじゃね?」  たしかに、リョウのことも好きだけど…… 「でも、キスは由羅とじゃないとイヤだぞ?」 「え、俺とのキスは!?」 「リョウとは……頬ならいいけど、口はちょっと……」 「ええっ!?」 「ごめん……」 「じゃあ、もっかいしてみる?この間は突然だったから、ちゃんとすれば俺のもイヤじゃないかもしれないだろ?」  亮がオレの頬を両手で挟んで顔を近づけて来た。 「ちょちょちょ、リョウ!?何やって……」 「おい、いい加減にしろ」  黙って見ていた由羅が亮とオレの間に手を差し込んで引きはがした。 「なんだよ!?付き合ってないならお前には関係ないだろ!?邪魔すんなっ!」 「関係はある!私も綾乃が好きだ!」 「俺だって好きだっつーの!」 「綾乃が好きなのは私だぞ?」 「メイちゃんは俺のことも好きだって言ったもん!」 「それは友達としてだろう?」 「それがなんだよ!?あんたも同じようなもんだから付き合ってねぇんだろ!?」 「私は……って、綾乃!?」 「ちょっとメイちゃん!?」 「……んぁ?」  二人が勝手に言い合いを始めたので、ヒマになったオレは莉玖の横で添い寝をしていた。 「何で寝てるんだよ!」 「いや、だって……最近この時間になるともう寝てるからさぁ……眠たくて……」  こっそり寝ていたのにバレてしまったので仕方なく起き上がる。 「あぁ、確かにもうこんな時間か……」  由羅が腕時計を見て納得した。 「いやいや、この状況で寝るか!?今メイちゃんのことで俺らは……」 「うん、だからさぁ……オレは二人とも好きだよ。ただ、リョウのことは幼馴染として以上には見えないし、キスも無理。そういう対象には見えない」  亮には申し訳ないが、眠すぎて思考が鈍くなってきたのでちょっと投げやりに答える。 「じゃあこいつは!?」 「由羅のことは好きだし、キスも由羅とならできる」 「ぅ~~~……じゃあ何で付き合ってねぇんだよっ!!」 「恋愛観が合わないから」 「……は?」    オレが由羅の恋愛観を話すと、亮が更にブチ切れた。 「っざけんなっ!!そんなやつに俺の大事なメイちゃんは絶対やらねぇ!!」 「お~いリョウ、お前はオレの父ちゃんかよ……オレの方が年上だぞ~?」 「関係ねぇよ!」 「そんなに怒るなって。大丈夫だよ。オレも由羅の恋愛観にはついていけねぇから付き合ってねぇんだもん」 「だったら、俺にしとけばいいじゃんか!俺はずっとメイちゃん一筋だったし、ちゃんと付き合って大事にするし……」 「うん、そうだな……」  たしかに、これだけ好きって言ってくれてるんだし、付き合おうって言ってくれてるし、リョウと一緒になった方が…… 「ちょっと待て!私も大事にするぞ?言っただろう?この先もずっと綾乃以外の人を好きにはならないと」 「ん?」 「そんなの信じられるかっ!」 「きみが信じなくても綾乃が信じてくれればいい」 「メイちゃんも信じてねぇから付き合ってねぇんだろう!?」 「そうだが……だからそれは――」  二人がまた言い合いを始めた。  オレは睡魔と戦いつつ、それをぼんやりと眺めていた。  うん……なんつーか……なんで二人ともオレみたいなのを取り合ってんの?  冷静になってみろよ……オレ男だし、目つき悪くて不良と間違われるようなやつだし……?  どう考えても勝ち組の二人が取りあうようなやつじゃねぇと思うんですよぉ……?  二人の目にはオレがどう見えてんだ……?  はっ!もしかしてオレってば実は超絶美少女なのか!?  男で不良みたいに見えてるのは自分だけで、それは子どもの頃に魔女に魔法を……んなわけあるかあああいっ!!  あ~……もうダメだ……ねむ……ぃ……  オレは結局、そのまま莉玖と一緒に夢の世界に旅立っていた。   ***

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