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両手いっぱいの〇〇 第208話
翌朝、誰かの気配と話し声で目が覚めた。
なんだ?誰だ……?
目を開こうとした瞬間、顔をベチッと叩かれた。
「っ!?」
「あ~~の!あ~~の!」
「あ、こらこら、シィ~!メイちゃんはまだねんねしてるからな。叩いちゃダメだぞ?」
「ねんね?」
「うん、ねんねしてるだろ?え~と、リクだっけ?リクもさっきまでねんねしてただろ?」
「あ~の!」
「リクもメイちゃんが好きなのか?そうかそうか。なかなか見る目があるなぁ。でも、メイちゃんは渡さねぇよ?」
「ぅぶぅ!」
「あ痛っ!なんだよぉ~?怒ってんのか~?鼻叩くなよぉ~」
どうやら亮が莉玖の相手をしてくれているらしい。
微笑ましいやり取りにちょっと顔がにやけた。
ん?え~と……あれ?ここってオレの家……だよな?
なんでオレの家にリョウと莉玖がいるんだ……?
目を閉じたまま、寝起きのぼんやりとする頭をフル回転させる。
そうだ……たしか……昨夜由羅のとこから帰って来た時にリョウが……
って、由羅は!?
起き上がろうとした瞬間、玄関の扉が開く音がした。
「お待たせ、莉玖。はい、オムツ替えようか」
「ぱっぱ!」
ん?あぁ、莉玖のオムツ取りに行ってたのか……って、どこに!?
まさか、家?
「いつもお出かけセット持ち歩いてんのか?」
「一応莉玖を連れて出る時は……いつでも持って出られるように綾乃がちゃんと用意してくれているからな」
なるほど、お出かけセットを持ってきてたのか……
「さすがメイちゃん!……なぁ、ミルクもあんのか?」
亮の声と、ガサガサと何かを漁るような音がした。
「ああ、キューブ型のが入っているだろう?もうほとんどミルクは必要ないんだが、体調を崩して食べられない時とかはミルクで補うこともあるから一応持っているんだ」
「へぇ~?……リク~お前どれくらい飲む?200くらいいっとくか?いっぱい出したから喉渇いてるだろ~?」
「後で朝飯を食うからとりあえず100くらいでいいと思うぞ?」
「まんま!みぅく!」
「んじゃ100作ってやろう」
「作れるのか?」
「俺もメイちゃんと一緒に近所のやつらの面倒見てたからな。俺の方が年下っつっても1歳しか違わねぇし……」
「そうか」
「哺乳瓶は使わねぇの?」
「ああ、もうストローで飲めるから、綾乃はマグで作ってくれている」
「あ~そっか、もうすぐ2歳っつったっけ?ストローで飲めるんだな~、スゴイなリク~!」
「あ~い!」
え~と……あれ?たしか昨夜は二人で言い合いをしてなかったっけ?
昨夜の険悪な空気はどこへやら、やけに親しそうな会話にオレは横になったまま首を傾げた。
なんで急に仲良くなってんだ?
オレが寝てから一体何があったんだ……?
どうでもいいけど……
オレ、起きるタイミング完全に逃した……
***
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