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両手いっぱいの〇〇 第220話
「あらあら、莉玖はイルカが気に入ったのね~!」
水族館に行った帰り道、お土産を渡すために杏里の家に寄った。
杏里はイルカのぬいぐるみを抱きしめて眠っている莉玖を見て、嬉しそうに微笑んだ。
「もう大興奮でしたよ~!イルカ以外にも興味津々で、昼食もそこそこに館内を回ったんですけど、ひとつひとつの水槽の前でじっと動かなくなるから結局全部は回り切れませんでした」
莉玖はイルカのショーの後、昼食を食べている間も「あっち!っこ ~!あ~の!あっち!」と、巨大水槽があった建物を指差してはそわそわしていた。
何とか宥めすかしてお弁当を食べさせ、イルカのショーを見るために急ぎ足で駆け抜けてしまった水槽まで戻ると、莉玖はまたひとつひとつの水槽にへばりつき、じっくりと観察し始めた。
巨大水槽の場合は床から天井まで一面ガラス張りのような状態なので小さい莉玖がひとりで立った状態でも余裕で見ることが出来たが、それ以外の小さい水槽の場合は、莉玖のような幼児は抱っこしてやらないと見えない高さになっていたので、何気に……大変だった……
自分にべったりと抱きついてくれるのと、上半身を乗り出し水槽に貼り付いている莉玖の腰から下をじっと支えるのとでは腕や腰への負担が全然違う。
さすがにオレだけではキツかったので由羅と交替しつつ抱っこしていったのだが、それでも水族館から出た後は二人してぐったりだった。
こんなに興味を持つなら、今度は莉玖サイズの身長でも立って見えるような水槽が多い水族館を探してやろうかな……お互いのために!
「そんなに興味を持つなんてスゴイじゃないの!莉玖は将来お魚博士になるのかしらね!」
「動物も好きなので動物博士にもなれるかもですね!」
「魚と動物では専門が全然違うんじゃないか?」
由羅が首を傾げつつオレと杏里を見た。
「うっせぇな!今そういう正論はいらねぇんだよ!いろんな可能性があっていいなって話をしてんの!」
まったくもう!夢のねぇやつだなっ!!
「そうよ?いろんなことに興味を持つのは素敵なことじゃないの!今度はうちの子たちとも一緒におでかけしましょうね。そうだ!莉玖は海には行ったことあるの?」
杏里は由羅の言葉を簡単に受け流すと、マイペースに話を変えた。
「海は~……正月にはちょっとだけ行ったけど、あとは……。由羅~、海って連れて行ったことあんの?」
「ん?海は正月に三人で行っただけだな」
「お正月ってことは、寒いからほとんど見るくらいしか出来てないわよね」
「まぁ、そうですね。あの頃は莉玖もまだ歩けなかったし……」
「じゃあ、今度みんなで海に行きましょうか!ほら、うちの別荘の近くのあそこなら――……」
別荘?
別荘って、あの別荘?
なんかよくドラマとか漫画とかに出て来る……?
すげぇな~、さすが金持ち……
オレがどうでもいいことに感心している間に、あれよあれよと話が進んで、数日後にはなぜかオレも一緒に杏里たちの別荘へと出かけることになった。
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