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両手いっぱいの〇〇 第221話
「た~だいま~っと」
「んなぁ~」
杏里の家で一路たちにもいっぱい遊んでもらった莉玖が、また半分寝惚け眼になりつつもオレの真似をして挨拶をした。
「莉玖~、お風呂入って寝ような。今日いっぱい汗かいたから」
「ぅ~~……」
「綾乃、風呂には私が入れる。綾乃は荷物を頼む」
「へ?あぁ、んじゃよろしく」
そうか、パパイヤがマシになったから由羅とも風呂に入れるようになったんだっけ。
オレは由羅に莉玖を渡すと、お出かけセットやお弁当の片づけを始めた。
「うん、よし!こんなもんだな」
一通り片付けが済んだところで由羅が呼ぶ声が聞こえたので、脱衣所へと様子を見に行く。
「綾乃~、バスタオル取ってくれ」
「はいよ~。……って、莉玖寝ちゃったのか」
「あぁ。一応髪も身体も洗えた」
「お疲れさん。んじゃあっちで服着せてくる」
風呂が気持ち良かったのか、もう眠気が限界だったのか、完全に爆睡している莉玖をバスタオルで包み込んで手早く身体を拭き、服を着せた。
「よ~しよし、いい子だ。そのままねんねしていいからな~?」
「ぅ゛~~~……いんた~ん゛……」
「ん?あぁ、イルカさんか?はいはい、イルカさんも一緒に寝ような~」
莉玖がむにゃむにゃと寝言を言いながら手をニギニギしていたので水族館で買ったイルカのぬいぐるみを渡すと、満足したようにふにゃっと笑ってぬいぐるみを抱きしめた。
「水族館、楽しかったか~?」
オレが莉玖の頬をつつきながら囁くと、隣でふよふよ浮いている莉奈も頬をつつく真似をした。
『楽しかったわよね~、莉玖~?ママもとっても楽しかった!いっぱいお魚さんがいてびっくりしたわね~!ほら、大きなお魚さんもいたでしょ?食べられちゃいそうだったわよね~』
莉奈がふふっと笑うと、寝ているはずの莉玖もふにゃっと笑う。
「そかそか良かったな!」
莉奈は、水族館で莉玖に負けないくらい大はしゃぎしていた。
動物園の時はそこまでテンション高くなかったはずだけどな~……
莉奈は水族館の方が好きなのかな?
『莉玖はすっかりイルカがお気に入りね~』
「水族館も動物園も遊園地も……これから何回でも行くだろうから、きっと大きくなったら今日のことなんて覚えてないんだろうけど、このぬいぐるみは大事に持っててくれたら嬉しいな……せめて2~3年は……」
「そうだな、こんなに気に入ってくれるなら買ったかいがある」
「ぐぇっ……って、ちょ、由羅!?」
莉奈に返事をしているつもりだったのに急に由羅の声がして背中にズシッとのしかかってこられたので、思わずよろめいた。
莉奈ぁ~~!由羅が入って来たなら教えてくれよぉ~!
「風呂上がったぞ」
「見ればわかる。んじゃオレ入って来る。あ、そうだ。風呂出たらそのまま帰るから」
「ダメだ。風呂から出たらここに来てくれ」
「え~?はいはい、わかりましたよ……」
別にちゃんと戸締り確認、火の元確認はするし、鍵だってちゃんと閉めて帰るっつーの!
何だよ一体……今日オレ何か怒られるようなことしたっけな~……
“呼び出し”を受けると、何となく“怒られる”と思ってしまう。
なんせ、子どもの頃からその二つはセットだったからな……
いやいや、今日は由羅と言い合いしてねぇし、怒られるようなこともしてない!!……はず!
うん、きっと何か別のことだな。
……別のことって何だ?それはそれで予想出来ないから怖ぇな~……
オレは浴槽の中で長いため息を吐くと、バシャバシャと顔を洗った――
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