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両手いっぱいの〇〇 第230話

 オレが外に出ると、さっき一路と見間違えた小さい影が手を引っ張って来た。   「ちょ、待て!引っ張るなって、危ないだろっ!?」  小さいクセにやたらと力が強い。  しかも足が速い。  まぁ、歩くとか走るとか言うより、滑るように移動しているせいかもしれないが……  それにしても、何でこういう(やつら)って触れるんだろうな~……  莉奈なんて、莉玖の髪の毛一本持ち上げることさえ出来ないのに……  ちょっとその力、莉奈に分けてやってくんねぇかなぁ……そしたら莉玖に触れられるのにな~……    上の空で歩いていても、勝手に連れて行ってくれるのでラクだ。  月灯りがあるとはいえ、足元は暗い。  でもなぜか一度も転ぶことなく洞窟があるという岩場へとたどり着いた。 「さすがに暗いな……」  洞窟の中には月灯りが届かない。  じっと目を凝らしてみるものの、洞窟の輪郭さえわからない。  ただ、漆黒の闇がそこから溢れ出しているような圧迫感というか、威圧感のようなものだけヒシヒシと感じた。  帰りたい……  とりあえず、洞窟の入口から闇に向かって声をかけた。 「お~い!莉奈!?いるのか!?」  お願いだから、いないって言ってくれぇ~! 『綾乃くん!?良かった、早く来て!!』  いたぁ~~!!  っつーか、早く来て!じゃねぇよ!? 「早く来てって真っ暗で何も見えな……わっぷ!?」  一瞬強い風が吹いて目を閉じたオレが次に目を開けると、周囲がぼんやりと青白く光っていた。  う~わ……なんだこれ……  っていうか、洞窟デカいな……どこまで続いてんだ?  一応見えるようにはなったものの、そこから足を踏み入れる気にはならなかった。  うん、オレまだ一応正気だな。  ここまでふらふら連れて来られている時点でちょっとヤバいけど、まだギリギリ自分の意思は残っているらしい。 「おい、莉奈!早く出て来いよ!帰るぞ!!」 『帰れないの……』 「は?何で……」 『この子たちを置いていけない!お願いだから早く来て!!』  ? 「とりあえず一回ここまで出て来てくれねぇか?オレ出来れば中に入りたくな……」 『いいから、早く来なさい!!』 「はいっ!」  莉奈の迫力に負けた。  仕方なく、ソロリソロリと中に入る。  そんなオレの様子に焦れたように小さい影がまたオレの手を引っ張った。 「わっ、ちょっと待てって!わかったから!行くってば!!さすがにここは慎重にいかねぇと滑る……ん?」  入口からだと波と風の音が洞窟内に反響していたせいで気づかなかったが、少し奥へと進むと微かに小さい声が聞こえて来た。 「なんだ?」 『あ、こっちこっち!早く来てっ!』  よく見ると、洞窟の窪みに莉奈が蹲って手を振っていた。  なんだ?動けないのか? 「莉奈?どうしたんだよ!だいじょう……なんだそれ?」  オレは莉奈の足元を見て、思わず眉を顰めた。 ***

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