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両手いっぱいの〇〇 第235話
死にそうになった時にそれまでの走馬灯が見えるっていうのは聞いたことあるけどさ……追いつめられた時に咄嗟に出る言葉っていうのは……どういう基準で選ばれてるんだろう。
なんでその言葉をチョイスしたのか……自分でもよくわかんないよな~……
うん、だからオレがなんでこんなこと言ったのかもわかりません!!
***
「由羅のばかあああああああああああっ!!!」
たぶん、助けてって言おうとしたんだと思う……
でも、大量の霊に囲まれて、もうダメだって思った瞬間、咄嗟に出たのはこの言葉だった。
いや、普段からそう思ってるとかじゃねぇよ?
由羅には色々と感謝してるし、たまにムカつくけどいい奴だし……
だけど……莉奈には仕方ねぇだろって言ったけどさ……
オレも思ってたよ……何でここにいねぇんだよ!って……
そもそも、由羅が一緒に来ていれば、こんなことには……って……
そりゃ全部オレが悪いんだけどさ?
うん、由羅は一つも悪くねぇよ?
それはわかってるんだよっ!!
だから、これは、オレの、ただの八つ当たりだよっ!!ばぁあああかっっ!!
――「誰がバカだっ!!」
「……はぇ?」
思いっきり怒鳴り返された気がした次の瞬間、ものすごい突風が吹いた。
「わっぷ!な、なんだぁ!?」
あ……もしかして莉奈たちが戻って来たのか?
母猫が周りを見えるようにしてくれた時にも、一瞬強い風が吹いた。
てっきり、この風もそれかと思ったのだが……
いやいやいや、それにしては風強すぎだろっ!?
こんなに強くなかったよな!?しかも長くないか!?
竜巻のように渦巻く風に、オレまで吹き飛ばされそうになる。
大量の霊から子猫を庇うようにしゃがんでいたおかげで何とか倒れずにすんでいるが……ちょっと油断するとそのまま岩から転がり落ちそうだ。
「一体何がどうなって……」
周りの様子を見ようとしても、目を開けることも出来ない。
まぁ、目を開けた所で真っ暗で何もみえな……あれ?真っ暗……じゃない?
目を開けることはできないものの、瞼の裏はなぜかさっきよりも明るく見えた。
日中、明るい中で目を閉じても完全な暗闇にはならないような……あんな感じだ。
「熱っ!?え、今度は何だよっ!?」
明るさに戸惑っていると、ジャージのポケットの辺りが急に熱くなった。
慌てて手で触れてみると、そこだけやけに熱を持っているように感じた。
え、燃えてる!?いや、そんな感じじゃないな……
だいたい火の出るようなものなんて持ってねぇし……
そのポケットに入っているのは、別荘に着いた時に鞄に入れておこうと思って出すのを忘れていたキーケースくらいだ。
ますますわけがわからない……
子猫の声も、唸るような風の音でかき消されているのか全然聞こえなくなった。
あ~くそっ……!!
霊には襲われるし、風には襲われるし、眩しいし、熱いし……何なんだよもうっ!!
風の音に邪魔をされて、考えがまとまらない。
良くも悪くも、余計なことを考える余裕もない。
オレは悪態を吐きながらも、子猫たちを守りつつ、風に飛ばされないように必死に岩にしがみついた――
***
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