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両手いっぱいの〇〇 第236話

――……っ!  ん……? 「……乃……綾乃!!しっかりしろっ!!」  ぁんだよ……うっせぇなぁ~……   「目を開けろ!」  あ、今ムリです……だって、何だかやけに身体が重くて……  そんなに揺さぶるなって!ごめんってば……子猫守るって約束したけど……さすがにこの量の(やつら)相手は無理だったわ……  あれ?無理……ってことはオレもうダメってこと?  ダメってことは……え~と……もしかしてオレもう…… 「由……羅……」  バカって言ってごめん……  こんなことになるなら……――   *** 「――……まったく!危ないから子どもたちを近付かせないようにしてるのに、お前が近付いてどうするんだ!?」 「……ごめんなさぃ……」 「しかも、よりによって夜中の満潮時に!!」 「……はぃ……まことに申し訳なく……――」  もうダメだ……と思って目を閉じた後、次にオレが目を開けると、そこは病院のベッドの上だった。  オレはあれから丸3日間、爆睡していたらしい。  どこが悪いとかじゃなく、本当にただ眠っていただけだ。  そのせいで、目が覚めるなり雇い主の特大の雷が落ちました。  みんなに迷惑をかけまくった挙句に、オレは洞窟でぐ~すか寝ていたのだから、そりゃ由羅が怒るのも当然だ。  オレは反論することもできず、かれこれ1時間、こうして平謝りをしているわけです。  由羅が雷の合間に話してくれたのを繋ぎ合わせると、どうやら由羅は電話を切った時のオレの様子がおかしかったので、すぐに杏里さんたちに連絡を入れてくれたらしい。  でも、オレが先に別荘から出て一度閉まった扉をすぐ後に追いかけて来た杏里が開けた時には、もうオレの姿はどこにもなかったのだとか。  砂浜の方も探してくれたらしいが、オレの足跡も見つけることが出来なかったらしい。    由羅は杏里たちに連絡をした後、すぐに家を出て別荘にやってきてくれたらしい。  由羅が着いた時には、杏里たちが集まっていてもう警察に届けようかという話も出ていたようだが、みんなが捜索したという場所を聞いた由羅が、洞窟がまだ捜索されていないことに気付いた。  それもそのはずで、杏里たちの話しではオレが別荘を出た時点で、もう洞窟は満潮前でほとんど海に沈んでいたと言うのだ。  だから、そんな場所に行くはずがないと……  それにはさすがのオレも驚いた。 「あの洞窟は、入口が少し下がっているから満潮になると入口が海に沈むんだ。だから、満潮時に洞窟に入るには、一度潜らなければいけない。そんなところに夜中に行くなんて思わないだろう?」  ごもっともです。  っつーか、オレだって潜ってまで入ろうとしたりしねぇよ!?  オレが行った時は……まだ道が見えていたし、普通に歩いて行けた……はずなんだ……  あれって、母猫の霊力(ちから)なのかなぁ……   「あっ!なあ、由羅!子猫っ!子猫は!?オレ、子猫を抱えてなかったか!?」 「子猫?」  オレはガバッと起き上がって由羅の服を引っ張った。  由羅が顔をしかめて大きなため息を吐いた。  え、何だよその反応……  もしかして、あの子猫たちも……本当はもう……でも、あいつらは温かかったし、柔らかかったし……引っ掻かれた痕だって…… 「子猫なら、ちゃんと動物病院に連れて行ってみてもらった。1匹少し弱っていたが、4匹とも元気だ。飼い主が見つかるまでは姉の家でみてくれることになったぞ」 「無事なのかっ!?」 「だから、そう言って……」 「そっか……無事なのか……良かったぁあああ~~~!!!」  子猫たちがみんな無事だと聞いてホッと胸を撫でおろしたオレは、顔を両手で覆ってベッドに倒れこんだ。  良かった、あいつらはちゃんと生きてたんだな……オレ……守れたんだ…… 「岩の上で綾乃が後生大事に抱えてたからな。あの子猫たちを助けたかったんだろう?」 「……ぅん……」  由羅は、わざわざ潜って洞窟の中に入って来てくれたらしい。  オレが子猫を抱えているのを見てある程度状況を察したらしいが、眠っているオレと子猫を連れて潜ることは出来ないので、潮が引くのを一緒に待ってくれて、助け出してくれたのだとか。 「それにしても、子猫たちを助けるなら明るいうちに助けに行けばよかっただろう?莉玖たちが別荘に戻って来てからでも時間はたっぷりあったはずだぞ?」 「オレだって、あんな時間に洞窟になんて行きたくなかったっつーの!」 「あんな時間に行かなきゃいけなかった理由はなんだ?というか、昼間洞窟に行ってないのになぜあそこに子猫がいるとわかったんだ?」 「え?……あ~……えっと……勘っつーか……なんか、呼ばれたっつーか……」 「……綾乃、ちゃんと話してみろ」 「……笑わねぇか?」 「笑わない」 「……あいつらの母猫が……」  母猫に連れていかれたから……なんて言っても信じてもらえるわけねぇだろうな……  そう思いつつも、由羅が真剣な顔で聞いてくれるので、一応オレが覚えている限りの話しをした。 「……綾乃……」  話しを聞き終わった由羅が、また大きなため息を吐いた。  あ、やっぱり……ふざけてると思ってる?そうだよな、普通は信じられないだろうし……でも…… 「ふざけてねぇからな!?オレは本当に……」 「わかっている。それはたぶん、母猫にうまいこと騙されて連れていかれたな。満潮だった洞窟に普通に入れたということは、異空間のようなものでも作ったか……それとも綾乃の記憶を弄ったのか……何にせよその母猫の妖力がだいぶ強かったんだろうな」 「……ほえ?」  え~と……こいつ何で冷静に分析してんの? 「あの……由羅?」 「なんだ?」 「由羅って……霊感あんの?」 「……今ない。ただ、子どもの頃はよくいろんなものが視えた時期があった……」 「へ……?えぇえええええええっっ!?――」  それ、初耳デスッ!!! ***

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