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両手いっぱいの〇〇 第242話

――ってな感じで……」 「綾乃、レタスは千切ればいいのか?」 「そそ、食べやすい大きさに適当に千切ればいいよ。どうせ食うのはオレらだしな」 「わかった。……ウインナーは?」 「ウインナーも食べやすい大きさに……」 「千切るのか?」 「ぅえっ!?……千切れるなら千切ってもいいけど、絶対ぐちゃぐちゃになるぞ?」 「切る?」 「そうだな。オレは包丁(これ)を使うのをオススメしたいけど……あ~、でもオレらだけだからもうそのまま入れちゃっていいよ」 「切らなくていいのか?」 「莉玖がいれば全部小さくするけど、オレらだけなら問題ないだろ」 「なるほど――」  一人で昼飯を作るという由羅と、もう元気だから飯くらい作れるというオレで言い合いになりかけたが、何とか“二人で作る”ということに落ち着いて、なんちゃってトマトチーズリゾットと野菜スープを作った。  由羅に教えながら作るので、包丁の持ち方から、切り方から……ちょっと切るだけでもいちいち説明しなきゃいけないのは大変だ。  っていうか、お前よくそれで一人で作ろうと思ったな……!?  オレが知っている由羅のレパートリーは、お粥と白米を炊くことと、後はカップラーメンにお湯を注ぐくらいだ。  包丁の持ち方がめちゃくちゃ危なっかしいし、変に几帳面だから大きさを揃えようとして時間かかるし……  店を開くわけじゃねぇんだから、ある程度は適当でいいんだよっ!!  絶対にオレが一人で作った方が早いのだが、まぁ、子どもに教えていると思えば腹も立たない。  そう……腹は立たないけどハラハラするっ! 「――よし、出来た!いい感じ!」 「うまそうだな」 「だな!それじゃあ食べるか!」 ***  昼飯のあと、地下室へと移動してオレの視える力について話した。  別にリビングでも良かったのだが、内容が内容だけに、一応……それに莉奈のことも話すしな。 「なるほど、綾乃は自分からは視えないのか……」 「うん。向こうが視せようとしない限りは……まぁ、逆に言えば、オレが視える(やつら)はそれだけ自己主張が強いっつーか、何か訴えたいことがある(やつら)だから、いろいろちょっかいを出してくるんだけど……」 「そうだな。そういうのは厄介だな」 「由羅はどんな風に視えてたんだ?」 「私は……」  由羅は、向こうが主張して来なくても視えていたらしい。 「たまに、霊というよりは化け物の類のような……妖怪?のようなものも視えていたな……でもまぁ、視えていないフリをしていたが」 「オレもなるべくスルーしてたけど、あいつらさぁ、結構無遠慮に入り込んで来ねぇ?急に顔の前に出て来たり……」  せっかくスルーしていても、いきなり目の前に来られるとさすがに反応してしまう。  子どもの頃はびっくりして「ヒッ!?」とか「ぅわっ!」とか声が出ちまって、急に変な声を出す妙なガキ扱いされることもあったなぁ~…… 「いや、私は自分から話しかけなければ、あまり近寄ってくることはなかったな」 「……マジか~……いいな~……っつーか、それってやっぱりお前の守護霊の力かなぁ。昔から守護霊強かったのか?」    ん?そういや守護霊って生まれた時から変わらないのかな……?  だとすれば、莉玖にも先に憑いてた守護霊がいたはずで、じゃあ、莉奈は……?  守護霊交替とかあんのか? 「どうだろうな?私には守護霊は視えないからな」 「あ、そっか」 「莉奈は自分が亡くなった時のことはほとんど覚えていないんだな?」 「うん、莉奈はそう言ってる……」 「そうか……」  以前、莉奈の事故について由羅は莉奈の元彼の許嫁が関わっているんじゃないかと疑っていた。  莉奈がその時の状況を覚えているなら、真実を知ることが出来るのだが……残念ながら莉奈は未だにその時のことは思い出せないらしい。 「まぁ、思い出せないなら仕方ないな。今のところ変なやつらが莉玖の周りを嗅ぎまわる様子も見られないし……死んだものと信じてくれているに越したことはない」 「うん……」 「それにしても……綾乃が莉奈を視ることが出来て良かった」 「へ?」 「莉奈が元気……いや、もう霊だから元気というのも変だが、まぁ、悪霊にはなっていないようだし、莉玖を見守ってくれているとわかったからな」 「あぁ……」  うん、莉奈は毎日元気に莉玖の(自称)守護霊やってるよ。  そのあとは、お互いの霊体験や不思議体験について話しあった。  オレも由羅も、今までこんな話は誰にもしたことねぇから……  意外と盛り上がって、気が付くと夕方になっていた。   ***

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