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両手いっぱいの〇〇 第243話

「あ、そうだっ!!」  風呂上がりに由羅のベッドでゴロゴロしていたオレはハッと起き上がった。  あ、なんで由羅の寝室かっていうのは、アレだ……えっと……単に由羅がオレの面倒をみると杏里さんに約束したからで……風邪じゃないから一緒に寝ても問題ないだろうって由羅が言い出して……あれ?なんで一緒に寝てんだ?別にオレ客室で寝ればよくね?  ……まぁいいか。とりあえずそれは置いといて!! 「なんだ?」 「莉玖の誕生日!!……ってどうなったんだ!?なぁ、もしかして……オレのせいで出来てないとか!?」  なんだかずっと爆睡していたせいで、まだ感覚としてはそんなに時間が経っていない気がするけど、実際はもう数日経っているわけで……本当ならあの日の翌日、莉玖の誕生会をする予定だった。  だけど、みんな夜中までオレを探し回ってくれていたらしいし……莉玖も熱があったし…… 「あぁ、いや、それは大丈夫だ。莉玖も翌日には熱が下がって元気になっていたから、姉が誕生日祝いはちゃんとやってくれた」 「そか……良かった……」    オレはホッと息を吐いた。  オレもちゃんと莉玖の誕生日を祝ってやりたかったけど……でも、とにかく莉玖の誕生会は出来たらしいので良かった。  杏里さんたちにまたお礼しておかないと…… 「結果オーライだから気にするな」 「……へ?」  隣に座った由羅が携帯をいじりながらオレの頭を撫でて来た。  結果オーライ? 「綾乃を病院に運んだあと、その足で仕事に向かおうとしたんだが、姉に禁止されてな……」  由羅はオレを探すために一度海に潜って洞窟に入ったわけだし、そのまま潮がひくまで不安定な岩の上でオレと子猫を抱えていてくれたらしいので、杏里さんに「絶対に疲れているはずだし、眠れていないでしょう?それに、どうせ綾乃ちゃんのことが気になって仕事どころじゃないでしょう!?」と叱られたのだとか。  由羅は結局身内が入院したからと言うことで職場に一足先に夏休に入る連絡を入れた。  とは言え、なんだかんだでリモートで仕事はしているらしいが…… 「急遽休みになったものだから、私も莉玖の誕生会に参加することが出来たんだ」 「え?」  ほら、と由羅が携帯を見せてきた。  そこには、一路たちにお祝いをしてもらって、大きなケーキを前にご機嫌な莉玖がいた。   「そっか……由羅も一緒にお祝い出来たなら良かった。莉玖も嬉しそうだな!」  奇跡的に撮れたという、由羅の膝の上で笑っている莉玖の写真に思わずほっこりした。   「あぁ、で、家でのお祝いだが……」 「ん?」 「家でもお祝いするだろう?」 「え?いや、でも……」  家でもするつもりだったけど、それは由羅が誕生会に参加できないと嘆いていたからで…… 「私は参加出来たが、綾乃が出来ていないだろう?」 「いや、そりゃそうだけど……でも由羅が参加出来たんなら、わざわざ家でする必要はねぇだろ。オレは誕生日プレゼントだけ渡せば……」 「誕生日祝いは何回してもいいらしいぞ?」 「んん?」 「保育園に行っていれば、保育園でも誕生会はあるのだろう?」 「あぁ、そりゃまぁ」 「保育園で祝ってもらって終わりじゃないだろう?家でも祝うから二回は最低でも祝う。それに、場合によれば祖父母の家でもう一回祝うと言う家もあるらしいし……」  うん、そりゃそうだけど、なんでそんなに必死なんだよ…… 「つまり……綾乃も一緒に祝ってやってほしいんだ……莉玖も誕生会の時にお前を探していたしな……大好きな綾乃に一緒にいて欲しかったのだと思うんだ。だから、綾乃さえイヤじゃなければ……」  やだなにそれ!綾乃泣いちゃ~~~うっ!!  って、ちょっとオカマになっちゃうじゃないのよ!!  莉玖がオレを探してたって?  そっかぁ~……  思わず顔がにやけた。 「イヤじゃねぇよ。オレも本当は一緒にお祝いしたかったし。よし!そんじゃ気合い入れて誕生会しますかね!飾りつけもあるし!」 「あぁ、私も手伝えることは手伝う」 「そんじゃ由羅は高いところ担当な。オレが届かねぇところの飾りつけよろしく!」 「わかった」  ベッドに横になって由羅と話しながらタブレットに書き出していく。  と言っても、オレたち三人だけでするから、杏里さんがしてくれたほどの豪華な献立は出来ないし、飾りつけもそこまで派手には出来ないけど……  ともかく、諦めていた莉玖の誕生会をすることになって、オレは張り切って誕生会の献立や飾りつけの構想を練った。  練りながら……寝落ちしていた。 ***

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