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両手いっぱいの〇〇 第245話
「……おい、由羅。お~も~い~!!」
杏里を見送って玄関の扉が閉まった瞬間、オレの頭に、ズシッと由羅が腕を乗せて来た。
「ん~……?私の失敗談を姉にバラした罰だ」
「なんだよ。お前がわかりやすくソファーでふて寝してるのが悪いんだろ~?あれ見たら何かあったんだなってわかるって!っつーか、これ以上背が縮んだらどうしてくれるんだよ!どけろっつーの!」
オレが頭の上の腕を引っ張ると、由羅はその腕をおろして替わりに後ろから抱きついて来て、頭をグリグリと擦りつけて来た。
さっきより更に重くなったじゃねぇかっ!!
お前はどうあってもオレの身長を縮めたいんだな?こらっ!!
「あれは……ようやく莉玖が寝たから綾乃と少しゆっくりできると思ったのに姉さんが来たから不貞腐れていただけだ」
なんだそりゃ?
「……はあ?別にお前も杏里さんと一緒にお茶してゆっくりすればいいじゃねぇか。それに、莉玖が起きててもゆっくり出来るだろ?そりゃまぁ、莉玖の後ろについて歩かなきゃいけないから大変だけど、それは交替でみればいいし、外ならともかく部屋ん中なんだから会話は莉玖をみながらでも出来るだろ?」
「……そういう意味じゃない」
由羅が耳元でため息を吐いた。
「っ!……」
え~い!耳元は止めろっ!ムズムズすんだよっ!!
「じゃあ、どういう意味だよ!?」
「こういう意味……」
「ん?ぐぇっ……っ!?」
グイッと顎を持ち上げられ背伸び気味に上を向くと、由羅の顔が近付いて来た。
あ……キス……いや待てっ!この角度、首イカれるっ!!無理があるって……っ!
下に逃げようにも顎を下から掴まれているので下がることが出来ない。
「ちょ、ゆぁ!まっ……あ……」
「あ……」
由羅が口唇を重ねようとした瞬間、莉玖の泣き声が聞こえて来た。
莉玖、ナイス!!
莉玖の泣き声を聞いて由羅が渋々オレを解放したので、慌ててリビングへと戻った。
「莉玖~どうした?目が覚めちゃったか?怖い夢でも見たか~?」
オレは莉玖に添い寝をしてトントンしながら小声で莉玖に「サンキュ!助かった!」とお礼を言った。
別に由羅との……キスが嫌なわけじゃない。
ただ……由羅のキスはいつも唐突で、しかもなんか強引なのが多いんだよっ!!
もうちょっと普通にしてくれれば……
いや、でもな~……オレあの甘い雰囲気?とか言うのが苦手なんだよな……
由羅に真剣な顔で迫って来られるとどうしていいのかわからなくて思わず殴りそうになる。(大抵由羅に止められるけど)
世の中のカップルって、一体どうやってあの雰囲気に耐えてるんだ!?
なんであのドキドキに耐えられるんだよぉ~!?
オレがそういう雰囲気になるのを避けているのがわかっているから、由羅がたまに強引にしてくるのかもしれねぇな……
でもとりあえず、今日のはないわ~~……あれマジで首っつーか喉がキツイ!!
そしてオレの足がプルプルする!!そりゃもう生まれたての小鹿並みに!!
せめて、身長差考えろっ!!
「なぁ、莉玖、そう思わ……あれ、寝てる」
オレがごちゃごちゃ考えながらひたすらトントンしている間に莉玖はまた眠ってしまったらしい。
「綾乃、今日の晩飯はどうする?買い物行かなくて大丈夫か?」
「え?あ、ちょっと待って、冷蔵庫確認する!」
由羅の言葉にオレは慌てて起き上がると、冷蔵庫に向かった。
そういや昨日は誕生会用の買い物しかしてねぇんだよな。
由羅の夏休ももうすぐ終わるし、数日分買っておくかな……
***
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