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両手いっぱいの〇〇 第246話

「綾乃、ちょっといいか?」 「ん?うん、あれ?莉玖はもう寝たのか?」  風呂上りにお茶を飲んでいると、由羅がリビングに入って来た。  由羅はオレが風呂に入っている間に莉玖を寝かしつけていた。  てっきり莉玖がなかなか寝ないからオレに助けを求めに来たのかと思ったが、由羅ひとりのところを見ると、今日はあまりぐずらずに寝たようだ。 「あぁ、莉玖ならもう寝た。買い物に行って歩き回ったから疲れたのかもしれないな」 「そんなに歩き回ってねぇだろ。むしろ、お前の方が疲れたんじゃねぇの?」 「いや、私も疲れてはいないが……ちょっと腰が痛い」  由羅が自分の腰を軽く叩いた。  背が高いと、莉玖くらいの子どもと手を繋ぐのは一苦労だ。  身長差がありすぎて手をおろしただけじゃ莉玖が精一杯手を伸ばしても由羅の手に届かない。  結果、中腰にならないといけないので、結構腰に来るらしい。  こういう時は背が低くて良かったと思うんだよな~。  オレならそんなに屈まなくても手を繋げるから。 「湿布貼るか?」 「いや、そこまで酷くはないから大丈夫だろう」 「そか。それで、何か話があったんじゃねぇの?」 「あぁ、そうだ。綾乃に渡すものがあったんだ」 「オレに?」 「これを……」  由羅が黒い小さな巾着を渡して来た。 「これ何だ?」 「出してみろ」  巾着の中には、黒い数珠?……のブレスレットが入っていた。  ん?これをオレに? 「誕生日プレゼントなら、もう貰ったぞ?」  由羅は以前言っていた通り、昨日の莉玖のお誕生会で、数か月遅れのオレの誕生日も祝ってくれた。  杏里には話していないが、由羅が落ち込んでいたのはそのせいでもある。  一回だけなら自分が食べればいいが、二回失敗してしまったせいでオレにまで失敗分を食べさせる結果になってしまったことがショックだったらしい。  オレは別に気にしてねぇんだけどな……  祝ってくれようとするその気持ちだけで十分嬉しいんだけど。  あ、因みに誕生日プレゼントは、何かファンシーな動物のイラストがついたやけに可愛いエプロンと両手いっぱいの花束だった。  エプロンは……まぁ保育士をしていた時も子どもが喜ぶような可愛いエプロンをつけてたし、莉玖が動物好きだから莉玖のためにもいいかなと思う。  ただ、このファンシーなエプロンを由羅が買っているところを想像すると……なかなかインパクトがあるけどな?  花束は事前に予約してあったらしく、買い物から帰ってきてカレーの準備をしている時に届いた。  差出人が由羅って聞いて、一瞬薔薇かと思って焦ったんだけど、全然違う花だった。   由羅曰く、「薔薇を買おうと思ったが、薔薇の花束を渡したら綾乃は逆に引きそうな気がしたからな」と……よくおわかりで!!  だって、男が薔薇の花束とかもらってもどんな反応すればいいんだよ!?ってなるだろ!?  ……だけどさ……わかってんだよ?花束なんか全然似合わねぇってことは、オレが一番わかってる。  でも……なんか自分でもびっくりするくらい嬉しかった……んだよな~……  由羅がくれたのは、アルス……なんとかいう花らしい。一応4月の誕生花のひとつなんだとか。  その花束は、ちゃんと花瓶に生けてある。  リビングに飾ってあったのだが、杏里が来た時に、「姉さんに見られるといろいろ聞かれて面倒だから」と由羅が慌てて二階に持って行ったので、今は寝室に飾られているはずだ。  まぁとにかく、誕生日プレゼントならもう十分貰ったのだ。 「あぁ、いや、それは誕生日プレゼントというわけじゃない。まぁ、プレゼントではあるが……それは、私が昔使っていたものだ」  由羅がオレの手の中のブレスレットを指差した。 ***

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