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両手いっぱいの〇〇 第252話
「綾乃、戻って来られそうか?」
「え?あぁ、とりあえず泣き止んだから大丈夫かな……莉玖、パパのとこ戻るか?」
「あ~い!」
莉玖の機嫌が直ったので、由羅の方へと戻る。
だが、怪しい人に近付こうとすると莉玖が嫌がったので、少し距離を取った。
「ごめん、由羅。これ以上は無理っぽい」
「ありゃ、嫌われたか?」
「怪しいですからね。とりあえず、サングラスだけでも外してください。全身真っ黒だから余計に怖いんですよ」
「あぁ、そうか……仕方ねぇなぁ。まぁもうだいぶ暗いから大丈夫かな」
チラッと空を見上げてなにやらブツブツ言いながら怪しい人がサングラスを外した。
「……え、外人?」
怪しい人は意外にも日本人離れした顔立ちをしていた。
アジア系というよりは、北欧系……かな?
ヨーロッパの辺りは広いし混血が多いからよくわかんねぇけど……
「生粋の日本人ではないだろうねぇ。ただ、どこの生まれなのかは全くわかんねぇのよ。俺ぁ捨て子だからね」
怪しい人がケラケラと笑った。
「綾乃、この怪しい人は、月雲 さんだ。私の……師匠みたいな人だ」
「おい、ゆらりん、今一瞬考えたな?」
「気のせいですよ」
「ったく……それより、あの坊主も視えるんだな」
「そうらしいです。本人はあまり霊力が強くないと言ってますが……そのせいで、私と同じように変なのによく絡まれてるみたいで……ちょっと視てもらえます?」
「ぁん?お前と一緒にいても絡まれんのか?」
「いえ、実は……」
由羅が海でのことを話し始めた。
どうやらここへは、オレと怪しい人……月雲さん?を引き合わせるために来たらしい。
そういうことは先に話しておいてくれよな……
急にあんな登場されたらビックリするし……
「あ~の~」
「ん~?どした~?あ、お茶飲むか?さっき飲んでねぇもんな」
「おたっ!ぁぶ~!」
「うん、お~ちゃっ!の~む!お茶飲もうな~!え~と、どこか座れるところは……」
オレはあたりを見渡した。
座れるような場所……ねぇな。
石はいっぱいあるのだが、どれもこれもお地蔵様に見える。
腰かけたりしたら罰が当たりそうだ。
となると……
「由羅~、話してるとこ悪ぃけど、ちょっと来て」
「それで……ん?どうした?」
「莉玖にお茶飲ませるからちょっとだけ莉玖抱っこしててくれ」
「あぁ、わかった。莉玖おいで」
「パッパ~!」
まだ月雲と話している途中だったにも関わらず、由羅はすぐに来てくれた。
由羅に莉玖を預けて、その間にリュックからお茶と赤ちゃん用のおせんべいを取り出す。
「はい、莉玖~。お茶どうぞ」
「あ~んと!」
お茶を両手に持った莉玖が、ペコリと頭を下げる。
その勢いで、少しお茶が零れたが、由羅は莉玖を背中向きに抱っこしていたので、莉玖の手が少し濡れただけで済んだ。
「お~!?莉玖、上手に『ありがとう』が言えたな~!スゴイぞ~!」
「莉玖、エライぞ!お礼を言うのは大事だからな!」
「あ~い!」
莉玖を褒めながら、由羅がふと首を傾げた。
「なぁ綾乃、さっき……莉玖も鬼火を見たのか?」
「ん?あぁ、見えてたみたいだな」
「ということは、莉玖にも霊力があるのか?」
「あ~、まぁたまに莉奈のことが視えている時があるからな。多少はあるんじゃねぇの?」
「そうか……莉玖はママが視えるのか……」
由羅が感慨深げに莉玖の頭をそっと撫でた。
***
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