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「猫まんま」 おまけ話

 注:本編とは全く関係ありません!!脈絡もありません!!  本当はブログにこっそりあげるつもりだったのですが、書いている途中で寝落ちしてタイミングがずれた上に、思ったよりも長くなったのでこっちでこっそり(?)あげておきます。  こっそりです!こっそり!!  本編は真夏ですが、こちらは真冬です。気にしちゃいけません!  おまけ話としてお楽しみいただければ幸いです。   蒼井葉月 ***  由羅が帰宅するなり、紙袋を渡して来た。 「ん?なんだこれ?」 「綾乃、今日はにゃんにゃんにゃんの日というらしい」 「え?あぁ、2月22日だから、猫の日だな」 「にゃんにゃんにゃんの日というらしい!!」  由羅が真顔でズイッと顔を近づけて来る。  止めろっつーの!お前、圧がすげぇんだよ!! 「な、なんだよ!?知ってるってば!!それがどうしたんだよ?」 「今日はそれをつける日らしいぞ?」 「は?」  イヤな予感がして袋の中を見ると、案の定、猫耳のカチューシャが入っていた。 「一応聞くけど、これ、誰がつけるんだ?」 「もちろん、綾乃だ」 「なんで、“もちろん”なんだよ!?」 「綾乃、この話、『きみは不機嫌セラピーキャット』というタイトルなのに、全然『セラピーキャット』要素が出て来てないという声がそろそろあがってもいい頃だとは思わないか?」 「おいこら!突然のは止めろ!!」 「綾乃がこれをつければ、全て解決するんだ」 「いや、何も解決しねぇと思うけど!?」 「少なくとも私が綾乃に癒されているというのが伝わる!」  誰に!? 「……オレは?」 「……ん?」 「不機嫌っつーなら、お前の方が不機嫌じゃねぇか」 「……え?」  意外な展開だったのか、由羅がちょっと困惑する。   「私が綾乃を癒しているということか!?」 「そうは言ってねぇけどなっ!?なんでちょっと嬉しそうなんだよっ!?」 「いや、今のだとそうなるぞ?」 「え~い!やかましい!!いいから、ほら、由羅がつけてみ?」 「いや、これは綾乃がつけるから需要があるのであってだな?私がつけても需要は……」 「だ~いじょうぶだって!お前がつけたら癒されるから!な?」 「私がつければ綾乃が癒されるのか?」 「うん、オレは猫耳由羅に爆笑するだろ?んで、笑ったオレを見てお前は癒される。一石二鳥!」 「綾乃……爆笑は癒しとは何か違う気が……」 「まぁまぁ、気にすんなって!ほら、つけてみろって~」  オレはニヤニヤしながら由羅の頭にカチューシャを……  カチューシャを……あれ……?  つま先立ちで両手を思いっきり伸ばすが、目指す由羅の頭には全然届かない…… 「由羅、ちょっと座りませんか?」 「なぜだ?」 「いいから!!」 「つけられるものならつけてみろ」  由羅がニヤリと笑った。 「くぅっ!身長差!!」 「ははは、やはりこれは綾乃がつけるべきだということだな。ほら、つけてみろ」 「あっ!!くっそ……!」  結局、由羅に猫耳カチューシャを奪われて、オレがつける羽目に……   *** 「――由羅……お前一体にゃにを買って来たにゃ!?」  猫耳をつけて数分。  オレはベッドのヘッドボードにもたれかかっている由羅の膝の上で抱っこされていた。  そのまま丸くなりたい衝動を抑えながら由羅を問い詰める。 「街を歩いていると、怪しげな占い師に声をかけられてな。猫の日には好きな相手にコレをプレゼントするものだと……」 「だから、変にゃ人や怪しげにゃ人は無視しにゃさいっていつも言ってるにゃ!!」  ったく、由羅は変な人から声をかけられすぎだっ!!  何でもかんでも買うんじゃねぇよ!!  しかもコレ一体…… 「にゃあああ!!もう!!にゃんにゃんだにゃ!?「にゃ、にゅ、にょ」ににゃるにゃ!!しかも語尾に「にゃ」がつくにゃ!」 「これをつければ猫になるとは言っていたが、こうなるのか」 「ふぎゃっ!?」  急に全身がゾワッとした。 「ゆら!?今にゃにしたにゃ!?」 「何って、尻尾を触っただけだが?」 「し……っぽ?」  由羅に言われて恐る恐る窓に映る自分の姿を見てみると…… 「にゃんじゃこりゃああああああ!!」  猫耳のカチューシャがなぜか本物みたいに頭に馴染んで、猫のヒゲのようなものや尻尾まで生えていた。  気が付くと手足ももふもふの猫の手みたいになって、肉球もついている。  なんだこれは!?  オレ……オレ……妖怪ネコ人間みたいになってるじゃんか!?  そんな妖怪がいるのか知らねぇけどっ!! 「いや、綾乃、そこは普通化け猫と言うんじゃ……」 「おだまりにゃっ!!」  それより…… 「どうしてくれるんにゃ!!これじゃ、りくをだっこできにゃい!!」  莉玖を抱っこできないどころか、家事も出来ない!  っつーか、外に出られないじゃねぇかっ!! 「ふにゃあああああっっ!!」 「落ち着け綾乃。明日になれば元に戻るらしいから泣くな」 「ほんとにゃ!?」 「あぁ、たぶんな」 「たぶんってにゃんにゃああああああっっ!!」  由羅の頬を平手打ちしたが、肉球でぷにっとなっただけで全然威力がなかった。 「肉球が気持ちいいな」 「あ、こら!肉球ぷにぷにすんにゃ!!」  ハッ!そうだ!猫と言えば、武器があるじゃねぇか! 「ひっかいてやるにゃ!てい!……あれ?あれ?」  猫の武器である爪で由羅の顔をひっかいてやろうとしたのだが、全然引っかき傷がつかない。 「うん、もふもふで気持ちいいだけだな。因みに、綾乃のようないたずら猫がに傷をつけないように爪は生えない安全設計らしい」  ご主人様……だとぉおおお!? 「にゃんだそりゃああああああああああ!!」 「猫はここを撫でると喜ぶらしいが、綾乃はどうだ?」  由羅が顎の下を撫でて来た。  オレは本物の猫じゃねぇんだから、そんなところ撫でられたって別に何とも…… 「にゃんともにゃいにゃ~~」 「そうか、気持ちいいのか」 「にゃんともにゃいって言ってるにゃ!!」 「そのわりにゴロゴロ言ってるぞ?」 「にゃっ!?」  気が付くと由羅の手に擦り寄ってゴロゴロ鳴いていた。  くっそぉ~!由羅の手が気持ちいいなんて……知ってたけどっ!!  顎の下はともかく、頭を撫でられるのはもともと嫌いじゃねぇから…… 「もうねるにゃ!!あしたになったらもどってるにゃ!!」  ごちゃごちゃ考えても仕方ねぇ!  明日になれば戻るっつーんだから、それを信じてさっさと寝る! 「もう寝るのか?せっかく猫になってるのに?」    由羅が若干残念そうな顔をした。  誰のせいでこうなってると思ってんだっ!!  この手のせいで洗濯も洗い物も出来てねぇし!!  風呂掃除だって……  明日すること山積みなんだよぉぉおお!! 「ね・る・にゃ!!」  オレはベッドの上で丸くなった。 「ゆら!なでろにゃ!」 「撫でるのはいいのか?」 「オレが寝るまで撫でるんだにゃ!!」 「はいはい」  由羅が苦笑しつつオレの頭を撫でてきた。  うむ。気持ちいいにゃ……ずっと撫でてろにゃ…… 「思っていたのと違う……が、まぁこれはこれでいいか……」  由羅がポツリと呟いた気がしたが、オレはそのままゴロゴロ鳴きながら由羅に頭を摺り寄せて爆睡した。 ***  翌朝、目が覚めると人間に戻っていた。  しかも、洗濯も洗い物も風呂掃除も全部終わっていた。   「そうか!あれは夢だったんだな!あはは」  変な夢だったと思いつつ顔を洗っていると、由羅が起きて来て 「なんだ今日は猫耳つけてないのか。残念だな……」 「……え?ちょっと待て!昨日のって……夢じゃねぇの?」 「何を言っているんだ?ほら、ちゃんと写真も残っている」 「へ!?」  そこには、猫のように由羅に擦り寄る姿のオレが……  夢じゃなかったぁあああああああああ!!!  って……あれ?耳だけ?  なぜか写真の中のオレは猫耳だけで、尻尾もヒゲもないし、手足も人間のままだった。  これは一体どういうことなんだ……?  まぁ、とにかく…… 「由羅ああああああああああっ!!何撮ってんだこらぁあああああああ!!!」  その日から一週間、バツとして由羅の晩飯は猫まんまにしてやった。  ふんっ!!ちょっとは反省すればいいにゃん!!……あれ?――      おしまい。

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