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両手いっぱいの〇〇 第262話
「綾乃、大丈夫か?」
オレが頭を抱えていると、由羅がやってきて軽く頭を撫でた。
「あ?うん。ちょっと話の展開についていけなくて……あ、莉玖は?」
「ぐっすり眠っている。座布団で土手を作って寝かせているから多少転げてもケガをすることはないだろう」
「座布団で土手?」
由羅の言っている意味がよくわからなくて様子を見に行くと、座布団の上に寝ている莉玖の周囲を残りの座布団を半分に折って柵のように並べて簡易ガードを作っていた。
うん、まぁ……頑張ったっていうのは伝わって来る。
「おお、よく考えたなコレ。すげぇじゃねぇか!」
たぶん、これくらいのガードなら寝返りで乗り越えていくだろうけど……でも何もないよりは全然いい。
莉玖を起こさないように小声で褒めてパチパチと手を叩く真似をすると、由羅がちょっと得意そうな顔をした。
ハハハ……チョロ由羅だな……
「……ん?どうした?」
「え?何が?」
「いや……綾乃が嬉しそうな顔をしているから、何かあったのかと……」
「あぁ……なんつーか……」
月雲たちと話していたらわからないことだらけで頭が痛くなってきてたから……いつもの由羅の顔を見るとなんか……ホッとする。
それが表情に出ていたらしい。
「だから、師匠たちはまともに相手をするなと言っただろう?」
「っつーか、住職が霊だって教えといてくれよ!ビックリしたわっ!」
「いや、綾乃は視えるって言ってたから……あぁ、住職は視えなかったのか?それならたぶん、綾乃のせいじゃない。住職が綾乃を驚かせるためにわざと姿を隠していたんだろう」
「え、そうなのか?」
「住職も師匠も人を困らせて遊ぶのが好きなんだ」
「あ~……そうみたいだな」
なんだか……ようやくオレも由羅がなんであんなに月雲に対して塩対応なのかが分かってきた気がする。
悪い人たちじゃないんだけど……たぶん……?
その時…
「お~い、おチビが寝たんだったら二人とも早くこっち来いよ」
月雲が一応声を抑えてオレと由羅を呼んだ。
「いえ、莉玖の傍から離れられませんので」
「あ、それならりなちゃんがみてくれてるから大丈夫だぞ」
「ちっ!」
「あ、今舌打ちしたな!?師匠に対して舌打ちするとは何事よ!?」
『ゆらりんは相変わらず可愛くないのぅ……』
住職もゆらりんって呼んでるのか……
「やれやれ……綾乃、どうする?」
「え?何が?」
「師匠たちの所に戻りたくなければ、莉玖の傍で休憩していてもいいぞ?」
一応、気を使ってくれているらしい。
「由羅もいるし、大丈夫だ。莉玖の方は莉奈がついてくれてるから心配ないしな!」
「それじゃ行くか」
オレはチラッと莉玖を見て、隣に浮いている莉奈に「莉玖のこと、よろしくな!」と小声で言うと、由羅のあとについて月雲らの元へと戻った。
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