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癒しのお憑かれ温泉旅行 第287話

 覚悟は決めたものの、いざ布団に行くとなんか……緊張するぅ~~~!  なにをどうすればいいのかわからなくて、オレは布団の上で正座をして由羅と向かい合った状態で石になっていた。   「……綾乃?大丈夫か?」  由羅は戸惑った顔でうなじを掻くと、俯いているオレを覗き込んできた。 「ひゃい!!だだだ大丈夫だ!!ほら、あああれだ!えっと……そう!座薬!!あんな感じだと思えばいいんだよな!?ら、楽勝~、楽勝~!!アハハハ……ハハ……」  余裕ぶってみたものの、顔と声が引きつる。  オレ、たしかガキの頃に座薬入れられた時めっちゃ痛くて泣いた気がする……  そんなオレの例えに由羅が困惑顔でチラッと自分の股間を見下ろした。 「……あ~……綾乃、すまない。たぶん座薬(それ)よりは大き……」 「うわぁああああ!!みなまで言うなっ!!」  オレは由羅に向かって手のひらを突き出し言葉を遮った。  わかってる!わかってんだよっ!!オレのでもさすがに座薬よりはデカいもん!  ……っつーか、何回か一緒に風呂入ったからオレ由羅のも見たことあるし!普通の状態でもオレよりでかいの知ってるし……!  でも、座薬(それ)くらいだって思っとかねぇと……怖いじゃんかああああああ!!  だって……あんなデカいの絶対無理っ!!   『心配しなくてもだいじょ~ぶよ~!ほらぁ、リラックスして~?緊張してるとなかなか(ほぐ)れないから痛いわよ~?』  そんなこと言われてもオレ初めてなんだってばっ!!   『そうね~、アタシも初めての時はドッキドキだったわよ~。でもね、大好きな人に抱かれると多幸感で満足度半端ないからぁ~、アンタは余計な事考えずに彼に身も心も(ゆだ)ねちゃいなさ~い!』  なぜかオレは自分の中に入っている色情霊(自称:キャサリンさん。きっとオカマさん)に励まされつつ初えっち指南を受けるというわけのわからない状況に陥っていた。   *** 「綾乃、緊張しすぎだ。それじゃいつまでたっても始められないんだが?」  先ほどから由羅が触れようとする度にビクついて手を振り払ってしまうので、いい加減由羅がイライラし始めていた。 「わわわかってるってばっ!!わかってるけど……」  これ、緊張しないのなんて無理だろ!?  だって……みんなえっちの時どうやってんの!?緊張しねぇの!?  そうだ、酒!酒とか呑めば……酔った勢いでどうにかなるかも!?  だが、露天風呂に行く前に月雲たちが吞んでいた酒は全て片付けられていた。   「な、なぁ、そういやこれって何が入ってんだ?」 「え?あぁ、それは……っ」  酒が入っていないかと思い、月雲(つくも)が去り際に由羅に渡していたあの謎の袋をひっくり返してみたのだが…… 「……え?……これって……」  中から出て来たのは……いわゆる大人のおもちゃやローションやゴム……  つまり、ヤるためのあれやこれやがゴロゴロと出て来たのだ。 『あらあら……あの人よくわかってるじゃな~い!?やだ、ちょっとこれいいわね~!ねぇ、これ使って見まショ!?アタシこれはまだ使ったことないのよね~!』  キャサリンは大人のおもちゃに大興奮だが、オレは初めてみる本物の大人のおもちゃにまた固まってしまった。 「――おい、綾乃!早く戻って来い!また乗っ取られてるぞ!?」  ……へ?  オレが固まって思考停止している隙をついて、大興奮のキャサリンが前に出て来て勝手に大人のおもちゃを触って遊んでいた。 『やだ~、これ楽しい~!この動きエグイわ~!ねぇ、これ突っ込んで!!』  キャサリンがディルドやローターの電源を入れては動きを確認してうっとりと眺める。  身体から弾かれていた時と違ってオレも中に入っているせいか……感触がなんとなく伝わって来るのがヤダ…… 「おい!おもちゃ(それ)を置いて綾乃と代われ!」 『アタシでいいじゃないのよ。この子ビビっちゃってるから交代したらいつまで経っても始まらないわよ?アタシもどうせ祓われるなら、最期くらいは思いっきりめちゃくちゃにされたいし~』 「それを決めるのは綾乃だ。いいから、代われ!」 『もぅ!仕方ないわねぇ……』  キャサリンに『交代よ~ん』と腕を引っ張られたと思った瞬間、身体の自由が戻った。  ちょ!?身体の持ち主よりも自由に中身を入れ替えすんのやめてくれよ!!  と文句を言いつつ、ふと違和感を感じて手を見る。 「……ん?……んぎゃあああああっ!!」  オレは自分の手の中で元気に動いているおもちゃに驚いて慌てて放り投げた。  ななななんだよ今の!?ありえねぇ動きしてたぞ!? 「……んん゛!」  由羅が笑いを噛み殺しつつ、床でうごめくそれらを拾ってスイッチを切っていく。   「あ……あの、投げてごめんっ!……壊れてねぇか!?」  一応それ月雲さんの私物……だよな?  ヤバい……壊れてたらオレ弁償しなきゃ……そういうのって高いのかなぁ…… 「いや、壊れてはいないが……綾乃はこういうのを見るのも初めてか?」  由羅が手に持ったディルドを軽く振った。  そんなエグイ物をペンライトみたいに振るんじゃねぇよ!! 「は、初めてに決まってんだろっ!!そういう由羅は……あんのかよ?」 「まぁな……」 「へ、へぇ~……」  そっか……使ったことあるのか……  だれかと……  由羅はモテるって言ってたし、付き合った人も一人や二人じゃないはずだ。  ということは、それだけ経験もあるわけで……  その中の誰かとそういうプレイをしたってことか…… 「綾乃」 「ひゃいっ!?」 「抱きしめるぞ」 「っ!?」  由羅はぼんやり考えていたオレに唐突にそう宣言すると、返事を待たずにオレの腕を掴んで強引に抱き寄せた。  ***

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