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空からのプレゼント 第305話
「なぁ、ところで……由羅怒ってなかった?」
食器を洗いつつ莉奈に探りを入れる。
『怒る?どうして?』
「だって、オレ寝坊したし……みんな起きてるのにオレだけぐーすか寝てたわけだろ?」
よりによって他人様の家で……しかも雇い主の家で……雇い主のベッドで……!
普段なら莉玖の声で目が覚めるのに、今朝はめざましの音も莉玖の声も全然気づかなかった。
っていうか、一緒に寝てたんだから起こしてくれてもいいじゃんか……オレだけ放置かよ!そりゃ自分で起きなかったオレが悪いんですけど!?
『あぁ、それなら大丈夫よ。だって……「綾乃は温泉でもいろいろあってゆっくり休めていないし、疲れているだろうからもう少し寝かせておいてやれ。どうせ昼前には起きるだろうしな」って兄さんが言ったんですもの。怒ってたらそんなこと言わないでしょ』
「由羅が寝かせておいてやれって?」
『そうよ?兄さんがそう言ったから私も起こさなかったのよ』
てっきり、怒っているか呆れているかだと思ったので、ちょっと意外だった。
もしかして、由羅も一応昨夜のこと気にしてんのか?
昨夜のことは、由羅のユラさんと一緒に扱かれたあたりからほとんど記憶にない。
何回イかされたのかも、由羅がちゃんとイけたのかも、終わった後どうやって寝室に移動したのかも……
でもまぁ、怒ってないってことは、由羅も満足したってことかな……?
『それにほら、今朝は私がいるし!さすがに兄さんも私が実体化してなきゃ、仕事に行く前には綾乃くんを起こしたと思うわよ?』
「あぁ……まぁ、そりゃそうだよな」
たしかに、莉玖をみる人がいなければさすがに起こしてくれていたはずだ。
つまり今日は特別ってことだな。
***
月雲の話では、莉奈の実体化のタイムリミットは今日の昼頃だ。
詳しい時間まではわからないが、ひとまず午前中は莉奈が莉玖をみてくれているので、オレは掃除をすることにした。
ちょうどいい天気だったのでここぞとばかりにシーツやカーテンも洗ってやった。
それから……一通りの掃除と洗濯を済ませたオレはこっそり地下室に下りた。
ほら、あの……昨夜汚しちゃったから……ちゃんとキレイにしておかねぇとな!?
と思ったのだが、なぜかすでにソファーも床もきれいに掃除されていた。
「……由羅が掃除してくれたのかな……?」
目が覚めた時、オレは由羅のベッドでちゃんと服を着て普通に寝ていた。
オレは全然覚えがないので、たぶん、由羅が昨夜終わってからオレの身体を拭いて服を着せてベッドまで運んでくれたのだろうと思う。
その上、ここの掃除まで……?あいつちゃんと寝たのかな……
『――あら、地下室に行ってたの?』
「え?あ、あぁ、うん、まぁちょっと掃除を……あ、そろそろ昼だな!お弁当食べる準備するか!」
リビングに戻るなり莉奈に言い当てられたので、ちょっと焦ってぎこちない返事をしてしまった。
あれ?でもなんで莉奈はリビングにいたのにオレが地下室に行ったってわかったんだ?
『そりゃまぁ……昨夜の状態を見れば何かあったってことくらいわかるわよ』
莉玖の相手をしていた莉奈がゆっくりと振り向き、オレに向かって意味深な顔で笑った。
昨夜の状態!?
『なかなか二人が戻ってこないと思ったら、アレですもの……』
「アレって何!?」
『お姫様抱っこよ』
「は?」
『まぁ、兄が綾乃くんをお姫様抱っこするのは初めてじゃないけどね。でも昨夜はめちゃくちゃ嬉しそうに優しく抱っこしてたから、二人で何かイイコトしてたんだろうな~って……』
「ん゛ゲホッ……ゲホッ!」
莉奈の言葉に思わず咽た。
……たしかに、温泉でもお姫様抱っこされたから初めてではないけど……
嬉しそうに抱っこって……あの由羅が!?
オレ全然覚えてねぇ……
『で、結局昨日はどうだったの!?温泉では邪魔者 がいたから、それの口直し的な!?お清め的な!?』
オレは興奮気味に畳みかけてくる莉奈に圧倒されていた。
え~と……莉奈さんは一体何をおっしゃっているのでしょうか……?
口直し?お清め?ナンダソレ……?
よくわからないが、莉奈がこんなに喜ぶってことは……ロクなもんじゃねぇな!
「――……さ~てっと……何か簡単なスープでも作るかな~……」
『え、ちょっと綾乃く~ん!?ちょっとくらい聞かせてくれてもいいじゃないのよ~!』
「あ~あ~聞こえな~い!」
やけに興味津々な莉奈をスルーしてオレは昼飯の支度をしにキッチンに入った。
***
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