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空からのプレゼント 第311話

「眠った……か?」 「だな……」  ふはっ!……~~~っ!!  オレは由羅と顔を見合わせて同時に吹き出し、肩を震わせた。  莉玖を起こさないように笑い声を必死で抑える。   「シィ~~~!」  唇に人さし指を当てて、身振り手振りで「外に出るぞ」と合図をし、ベビーモニターをつけて静かに部屋を出た―― ***    少し前……  夕食の途中からうとうとし始めた莉玖は、食欲と睡眠欲の間を彷徨っていた…… 「莉玖~、眠いのか?もうねんねしようか!」 「……ん~ん……まんまっ!」  眉間に皺を寄せて不機嫌オーラ全開の莉玖が、「まだ食べる!」と言うように食卓の料理を指差した。  フォークはしっかり握りしめているが、もう自分で食べるつもりはないらしい。 「じゃあ、あと一口食べたらねんねしような!」 「……あ~~……ん!……」  莉玖はもう眠すぎるのか目が据わっていたが、オレが白飯に手を伸ばすと「あ~ん」と口を開けた。  少しだけ白飯を入れてやると、莉玖は満足したように口を閉じて白飯をチューチュー白目をむいてこっくりこっくりと船を漕ぎ始めた。 「お~い!莉玖く~ん!寝るならお口の中のごっくんするか、ペッて出してくださ~い!」 「んぅ~~……」  口の中に入れたままだと喉に詰まって危ないので、とりあえずちゃんと飲み込むか出すかしてほしい。  莉玖~、それミルクじゃないから!  ご飯のエキスだけ吸い取るのやめてくれ~! 「あ~もう!莉玖~、ちょ~~~っっとごめんな~?」 「……ぅむぅ~!」  莉玖はオレが無理やり口をこじ開けようとするとパッと目を開けてオレの手をペチッと叩きモグモグ口を動かした。だが、しばらくするとまたチューチューうとうと……を繰り返した。  ダメだこりゃ……もうなんていうか…… 「ブハッ!……くくっ!……っ」 「莉……っふ、ふふ……っんん゛、莉玖、ちゃんとごっくんしなさい!」  食べながら寝る莉玖の様子が可愛いやら面白いやらで、オレと由羅は笑いを堪えるのが大変だった。  こういう莉玖を見るのはこれが初めてというわけではないが、何回見ても可愛いし笑ってしまう。  由羅はオレよりも見る機会が少ないから余計に楽しかったようで、ずっと莉玖にカメラを向けていた。  二人そろって必死に笑いを噛み殺しつつ、莉玖にお茶を飲ませる。 「莉玖~、お茶飲もう!ちょっとでいいから、ごっくんしようか」  口唇にコップの縁をつけてやると、莉玖は無意識にお茶を含んでごっくんと飲み込んだ。  何口か飲ませてとりあえず口の中が空っぽになったのを確認してからコップを離した。  これでひとまずは安心……って、 「ぅおっと!?」  オレがコップを置いていると、莉玖がカックンと急に前に倒れ込んで顔ごとお皿に突っ込もうとしたので慌てて手で受け止めた。 「あっぶねっ!莉玖~!?……あぁもうダメだな」  ここら辺が限界と判断して莉玖の手からフォークを抜き取る。 「……ふぇ?……あ~!めっ!り~ちゅんの~!」 「うんうん、莉玖のフォークだな。また起きたらご飯食べような?」 「ぅ゛~~~ねみゅにゃ~ぉ~!」 「え~?眠くないのか?そかそか~」  まだ眠くない!とぐずる莉玖を抱き上げて、背中をトントンと撫でながらあやすと、莉玖はむにゃむにゃ文句を言い、唸りながらもすぐに寝落ちした。 「よし、由羅!イマダッ!」 「わかった」  由羅はオレが抱っこして寝かしつけている間に莉玖の手や口についた汚れをお手拭きできれいに拭き取り、着替えを用意するなどしてくれて、何だかんだでオレたちは連係プレーで急いで寝る準備をさせて、ベッドに寝かしつけたのだった。 ***

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