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空からのプレゼント 第312話

 莉玖を寝かしつけたあと、オレたちは食べかけで放置されていた食卓に戻った。  さてと、ササッと食べて風呂の用意して……あれ?オレ何か忘れてるような……あ゛! 「やべっ!洗濯物そのままだ!オレ洗濯物取り込んで風呂の用意して来るから、由羅はゆっくり食べてて!」 「待て!いいから座れ!……あ、いや、座ってくれないか?」  慌てて立ち上がったオレは由羅に腕を掴まれてまた椅子に座らされた。   「なんだよ?」 「風呂も洗濯物も後でいいから、綾乃も一緒に食べよう。莉奈についても話があるしな」 「え?あ~……いや、“莉奈について(それ)”は寝る時でいいよ」 「莉奈は今莉玖の傍にいるのだろう?」 「うん、そのはずだけど?」  莉奈の姿は視えなかったが、一応寝室を出る時に「莉玖についててやってくれ」と声をかけてきた。そうじゃなくても、莉奈は莉玖についていてくれると思うが…… 「後で莉奈にもちゃんと話はするが、先に綾乃の意見も聞きたい」 「……わかった。それじゃとりあえず食べながら話すか」  由羅の話が何なのかはわからないが、さっさと食べて風呂入って莉玖のところに行ってやらないと……いくら莉奈がついていると言っても、やっぱり莉玖のことが心配だしな。 *** 「それで、莉奈のことって?」  オレは座り直して春巻きを頬張りながら由羅をチラリと見た。   「あぁ……莉玖がぐずっていたのは、莉奈の姿が視えているのに急に触れなくなったからパニックになった……ということだったな?」 「ん?まぁ……たぶん、そんな感じ……だと思う」  莉玖に直接聞いたわけじゃないので真相はわからないが、オレが莉玖の立場だったとしてもめちゃくちゃ混乱してたはずだから、たぶん少なからず当たっていると思う…… 「なら、莉奈の姿が視えなければ、そこまでパニックにならなかったということじゃないか?」 「……え?」 「私は綾乃の話を聞いていてそう思った。だからとりあえず地下室を出た時に莉奈に頼んでみたんだ……」  ――夕食前、地下室から出た由羅は、莉玖を後ろから見守りつつハイハイで階段を上らせて先に行かせ、小声で莉奈を呼んだ。 「……莉奈、莉玖の目に映らないように姿を消すことは出来るか?莉玖が眠るまででいいから」 『え?あ……はい……どうかしら?たぶん、これで姿が視えないはずだけど……』  由羅に言われて莉奈が姿を消した。 「あぁ、それでいい。詳しくはあとで話すから。すまないな」  由羅は莉奈が姿を消したのを確認して莉玖のあとを追って階段を駆け上った……  ――って、ちょっと待てぇええええええい!! 「由羅って、莉奈の姿が視えてるのか!?実体化してなくても!?」 「視えている」 「だって、おまえ住職以外の霊は視えないって……」 「あぁ、そうだったが……たぶん、実体化させるために住職と師匠が莉奈に霊力を分けただろう?それで少なからず莉奈とも霊力の繋がりが出来たということだと思う」 「あ~……えっと、莉奈だけ?他の霊とかは視えねぇの?」 「仕事に行っている間は何も視えていなかったから、今のところ莉奈と住職だけだな」 「そか……」  結局、霊力の繋がりが濃い霊だけは視えるってこと?  子どもの頃みたいに、なんでもかんでも視えているというわけではないということか……  オレはちょっとホッとした。  だって、由羅はオレよりももっと霊力が強いらしいから、視えているとわかれば厄介な霊に目をつけられそうだしな……   「私のことは心配しなくても大丈夫だ。もしまた以前のように他の霊も視えるようになったとしても、子どもの頃よりは霊力のコントロールが出来るようになっているし、守護霊もあの頃より強力になっているらしいからな。余程じゃなければ近寄ってくることさえ出来ないはずだ」 「あ、そうか。そういやバリア機能すげぇもんな!んじゃ由羅は大丈夫だな!」  そうだった。由羅はオレより霊力が強いだけじゃなくて、ちゃんとコントロール出来るんだよな。視えるだけで何も出来ないオレが心配することじゃねぇよな…… 「よし!それじゃあ話を戻して……」 「……え、あの……綾乃、やっぱり少しくらい心配してくれても……」 「ん?」 「……なんでもない」  由羅がため息を吐いてしょんぼりと項垂れた。  ん?なんでそんなにしょげてるんだ?  本当は他の霊も視えた方が良かったってことか?よくわかんねぇやつだなぁ~……  オレは、ヤケクソ気味に飯をかき込み始めた由羅を見ながら首を傾げた。 ***

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