316 / 358

空からのプレゼント 第315話

 さてと、ひとまず由羅に手紙のことは伝えたし…… 「そろそろ寝室(あっち)に戻るか。莉奈たちが待って……」  パンッと一つ手を叩き、先に立って部屋から出ようとしたオレはふと足を止めた。  そういえば……昨日ベッドメイクしてあるし、オレはここで寝ればいいんじゃねぇの?  なんで当たり前に由羅のベッドで寝ようとしてるんだ!?  由羅の入院騒動以降、なんだかんだで由羅のベッドで一緒に寝るのが当たり前になっていたことに気付いて、オレは今更ながら頭を抱えた。  いやマジで今更なんだけど……そもそも由羅もオレも元気になったんだし弁当作りもだいぶ慣れてきたからもう泊まり込む必要もないわけで…… 「綾乃?どうした?」  扉の前で唸っていると由羅が怪訝そうに覗き込んできたので、慌てて身体ごと横に避けて由羅に道を譲った。 「あ~、えっと、ど、どうぞ!あの、お、おやすみなさ~い!」 「待て!……綾乃は一緒に行かないのか?」  さりげなく由羅を廊下に押し出して扉を閉めようとすると、由羅がサッと振り返り眉間に皺を寄せながら扉をこじ開けて来た。  あ……れ?怒ってらっしゃる?さりげなくやったのに!?   「え……っと、あの……いや、ほら、昨日せっかくベッドメイクしたのに結局ここのベッド使ってないだろ?そのままにしておくわけにもいかねぇし、どうせシーツを洗濯するなら一度くらい使ってから洗濯しようかな~って……」  普通に「こっちで寝る」と言えばいいだけなのに、オレはなんでこんなに必死に言い訳をしてるんでしょうか……   「シーツか……」  不機嫌オーラ全開の由羅は苦虫を嚙み潰したような顔で呟くと、ズイッと中に入って来て後ろ手に扉を閉め、オレの手を引いてベッドに腰かけた。  んん?なんでまた入って来たんだ!? 「え、ちょ……由羅?寝室(あっち)に戻らねぇのか?」 「綾乃はここで眠るのだろう?」 「……そのつもりだけど……えっと……ダメですか?」  まぁ、ダメだと言われたら家に帰って寝るけど…… 「ダメだ。……と言いたいが……綾乃の言い分はもっともだから、好きにすればいい」  オレの言い分って……シーツのことか?  っていうか、さっきからやけに「今夜は」って強調してくるのは何なんだ……  今夜は仕方ねぇからここで寝ていいけど明日はここで寝るなってこと?  じゃあ、明日はどうしろと!?  あ~もう、面倒くさいから帰ろうかな……今何時だ?  由羅の言動に困惑してチラッとベッドサイドにある置時計を見た瞬間、掴まれていた手を軽く引っ張られてよろけた。 「……ぅわっ!?」  不自然な姿勢で倒れそうになったオレは、思わず目の前の由羅に手を伸ばし抱きついていた。 「ご、ごめん!あの、ちょ、ちょっとボーっとしてて……」  何やってんだオレ!?別にそのままベッドに倒れ込めばケガしないだろ!?  なんで由羅の方に…… 「って、由羅?」 「ん?」  慌てて離れようとしたオレは由羅にがっちりホールドされていて身動きが取れなくなっていた。 「おい由羅!何ふざけてんだよ!は~な~せってば!」 「イヤだ」 「なんでだよ!?」 「今夜は一緒に寝ないのだろう?だったら寝る前に少しくらい……いいじゃないか」  何がっ!?  少しくらいってどういうこと!?  まさか……また……  一瞬昨夜のことが頭を過ぎって顔が熱くなった。 「よ、よくねぇよ!離せって……」 「……綾乃、何もしないから……少しだけこのまま……」  がっちりホールドから抜け出そうともがくオレの肩に由羅が顔を埋めてきてポツリと呟いた。 「はあ!?なに言って……」  あれ?待てよ?  これは……もしや由羅……へこんでる?  どうやら由羅はふざけているわけではなさそうなので、オレはもがくのを止めた。  ふざけてるんじゃなくて……へこんでるから甘えてんのか?  う~ん、由羅がへこんでいるとすれば、理由はたぶん…… 「なぁ……もしかして莉奈と莉玖のことで落ち込んでる?」 「……」  返事をする代わりに、オレを抱きしめる由羅の腕に力が入った。  あ~そういうことか……ったく、仕方ねぇなぁ……  オレは軽くため息を吐くと力を抜いて由羅の胸元にもたれかかり、由羅の背中に腕を回してトントンと軽く撫でた。   ***

ともだちにシェアしよう!