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おまけ話2【きみ猫×嘘恋(クロスオーバー)】(前篇)

※このお話は『嘘恋×きみ猫』のクロスオーバー作品です。  双方の本編とは関係ありません。  雪夜は精神年齢大学生、莉玖は本編と同じく2歳過ぎくらいです。  『恋愛初心者~嘘から始まる恋物語~』を未読の方でも大丈夫な内容にしてあるつもりですが、あちらを知らないと「ん?」と思う部分があるかもしれませんので、よければあちらにも目を通してみてくださいね。  気楽にサラッとお楽しみ下さい! *** 《~かぼちゃとお菓子と初恋と~》  10月後半のある日。  オレは某高級ホテルでかぼちゃオバケになっていた。  由羅と莉玖と三人で、とあるハロウィンパーティーに参加するためだ。  由羅の仕事関係のパーティーなので、有名な会社の社長とか弁護士とか政治家とか……オレには一生縁がなさそうな人たちがいっぱい参加している。  そのため、会場のあるフロアとその周辺には招待客と一部の関係者以外立ち入り禁止になっているらしい。  そんな物々しいパーティーにオレは莉玖のベビーシッターとして連れて来られていた。  正直こういう場所で開かれるようなパーティーなんて参加したことないし、マナーもよくわからないので場違い感が半端ない……着いた瞬間からもう早く帰りたくて泣きそうデス……   「あ~の!かちゃ!り~くんいっちょ!」  手を繋いでいる莉玖が会場のあちらこちらに飾りつけられているかぼちゃオバケを指差し、嬉しそうにピョンピョン跳ねた。  ハロウィンパーティーのため参加者は全員何らかの仮装をすることが条件になっているとのことで、莉玖もオレとお揃いのかぼちゃオバケの仮装をしている。  かぼちゃオバケの衣装はオレの手作りだ。 「そうだな、かぼちゃのオバケがいっぱいだ!莉玖と一緒だな!」 「あ~のも!いっちょよね~!」 「うんうん、綾乃も一緒だぞ~!」 「ね~!」  莉玖が跳ねる度に、かぼちゃの衣装もぽよんぽよんと揺れる。  かぼちゃらしさを出すために生地や縫い方を工夫し、かなり試行錯誤して作った。  膨らみを持たせるのが難しかったが莉玖も気に入ってくれて喜んで着てくれているし、我ながら自信作だ。   「綾乃、あっちのテーブルの料理が子ども向けらしいぞ」  オレの隣にいたがミニかぼちゃオバケを抱き上げてオレの肩を軽く叩いた。  由羅の衣装はどんなものがいいのかわからなかったので、杏里さんに任せた。  ただ、小道具やメイクをすると莉玖に泣かれてしまったので、牙も血糊もないただの健康的なヴァンパイアになった。  ちなみに、衣装合わせの時にひとりだけ違う衣装だと知った由羅はしばらく地味に拗ねていた。どうやら由羅もオレたちとお揃いが良かったらしい。……うん、仲間外れにしたつもりはないけど、なんかごめん!  会場を見回すと、オレたちのような子ども連れもちらほら。その中でも莉玖と同年代くらいの子の仮装はかぼちゃオバケが多い。  まぁ、みんな考えることは同じってやつだな!かぼちゃオバケは着脱しやすいし、なんといっても小さい子が着ると文句なしに可愛い! 「パッパ!かもちゃ!」 「あぁ、莉玖と同じようなかぼちゃオバケがいっぱいいるな。でも莉玖が一番可愛いぞ」  由羅が真顔で莉玖に答えて少しだけ口元を綻ばせた。うん、立派な親バカだな。   「さてと……綾乃、私は挨拶回りに行って来るから、適当に食べていてくれ」  立食パーティーだが、壁際にはテーブルと椅子も用意されている。  子ども用の椅子も用意されていて、莉玖をそこに下ろすと由羅は飲み物片手に挨拶回りに向かった。   ***  子ども向けの料理は、かぼちゃを使った料理や子どもが好きなハンバーグ、オムライスなどをハロウィン仕様に可愛くデコっていた。  大人向けの料理はもう少しリアルでちょっと見た目がグロい、ホラー要素たっぷりのハロウィン仕様になっているのだとか。  うん、ちょっと気になるけど、莉玖にはまだ見せられないな!!   「莉玖、見て!ほら、このコロッケはたぶんかぼちゃ味だ!こっちはオバケのハンバーグだぞ!美味しそうだな~!」 「お~!」 「オバケハンバーグ可愛いな!」  ハロウィン仕様の料理を前にテンションが上がっている莉玖の写真を撮りつつ、さりげなく料理も画角に入れる。  ここまでお洒落に作るのは無理でも、盛り付けやデコり方は今後の料理の参考に出来そうだ。 「莉玖、このままだと大きいし熱いからちっちゃくするぞ。莉玖はコレを食べて待っててくださ~い」 「あ~い!」  可愛くデコられているので崩すのは忍びなかったが、さすがにそのままでは大きすぎるので莉玖が食べやすいように小さく切り分ける。その間、莉玖はスティック状に切られた野菜をポリポリ食べながら大人しく座って待っていた。 「はい莉玖お待たせ!あ~ん!……って、おい!」 「うん、うまいな」  莉玖の口元に運ぶはずだったかぼちゃコロッケが、突然背後に現れた由羅の口の中に消えていった。 「あ~!それ莉玖の分だぞ!」 「パッパ!り~くんのかもちゃよ~!」  莉玖がほっぺをぷっくり膨らませて、持っていたで由羅の手をペチペチ叩いた。 「パパもお腹空いてたんだ。一口くらいいいじゃないか」 「こらパパ、先に言う言葉があるだろう?」 「ゴメンナサイ」 「まったく!腹減ってんなら自分の分とってこいよ」 「いや、またすぐに行くからいい」  やけに戻って来るのが早いと思ったら、由羅はまだ挨拶回りの途中らしい。 「全員に挨拶して回るのか?」 「さすがに全員は無理だな。それより、そろそろイベントが始まる頃だぞ」 「イベント?」  ぶぅぶぅ文句を言っている莉玖の口にハンバーグを放り込みながら由羅を見上げた瞬間、室内がゆっくりと薄暗くなっていき、司会者らしき人がイベントについて説明を始めた。   「え~と、つまり仮装したスタッフがお菓子を配ってくれるってことか?」  室内が暗くなったせいで莉玖がちょっとぐずりかけたので、急いで膝に抱っこしつつ由羅に確認する。  よく聞き取れなかったが、お菓子の入ったカゴを持ったスタッフに「Trick or Treat!」と言えばお菓子を貰えるらしい。 「ん?あぁ……まぁ、そういうことだな。子どもはお菓子を優先的にもらえるみたいだから、莉玖ももらえるはずだ」  由羅が少し歯切れの悪い返事をした。 「由羅?どうかしたのか?」 「いや……がそんなただのイベントをするはずがないからな、たぶん何か裏があるとは思うが……」 「え、それってどういう……」  その時、閉じられていたホールの扉が開いて誰かが入って来た。 ***

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